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第0話:始まりの始まりとプロローグ

※最初に※

 この小説はお気楽な転生ファンタジーです。唐突にシリアスぶることがありますが、ち密な設定、張り巡らされた伏線、極限の頭脳戦などは含まれておりませんのでご注意ください。

~始まりの始まり~


 その日、予言がもたらされ、運命が回り始めた。



~プロローグ~

 気が付いたら、寝転んで星を見ていた。まさに「降るような」星空を。

『あれ、なんでこんなところに。俺は、さっきまで』


 さっきまで…、何をしていたんだったか。マズい。まったく思い出せない。

 ちょっと待て、よく考えろ。思い出すんだ。

 俺は岩城衛(いわしろまもる)。日本人で25歳の男。おうし座のA型。

 職業は、職業……。思い出せない。まさか、ニートか?


 落ち着くんだ。俺がニートのはずない。思い出せないだけだ。たぶん、きっと。


 それよりもこの状況だ。屋外で仰向けに寝転んで、さらには記憶がない。

 そこから導き出される推論。

『頭でも打ったのか。』


 そう言った自分の声は普段とは似ても似つかないようなヒドイものだった。

 というかそもそも声が全然出ていない気がする。どうやら喉もおかしいようだ。


 頭から血でも出ていないか。右手で頭を触ろうとする。

 同時にあたりに響く地響き。

 まるで大型動物が動くときのような重厚感があたりに満ちる。


『ん、なんだこれ』

 いや、すまない。本当はわかっているんだ。

 俺の目の前にあるのは俺の右手だ。間違いない。


 ただ、俺の気持ちも分かってほしい。

 俺の記憶が確かならソレは座布団並みに大きくはなかったし、そもそも岩で出来てはいなかった。


『どうやら、頭か目に障害が出ているみたいだな。右手がこんな風に見えるなんて。』

 とりあえず、考えを口にすることで冷静さを保つ努力をしてみる。

 1人っきりで知らない山の中だ。いくら俺でも不安になる。


 右手?これは頭を打ったせいで一時的にそう見えているだけだ。異常はない。

『ひょっとしたら、声がおかしいと感じるのも実は耳の方がおかしいのかもしれないな。』


 こんな時は動かない方がいいのだろうが、正直じっとしていたら朝まで耐えられそうにない。

 主に精神的な意味で。


 慎重に行けば大丈夫だろう。街の明かりでも見つかれば安心できる。

 そう考えて、俺は移動を開始した。


 立ち上がると、先ほど以上の重低音があたりに響いた。

 姿の見えない鳥がギャーギャーと不吉な鳴き声をまき散らす。

『い、いや~。夜の山ってのは思った以上に音が響くな~。』


 決して、俺の体がでかいせいで地響きが起きたわけじゃない。

 あたりが静かすぎるのだ。

 周りの木とかが小さく見えるのも俺が大きいからじゃない。

 きっと高山だから、高い木が生えられないんだ。


 高い山だから、町の明かりとか見えなくてもしょうがない。

 降りていけばすぐに見つけられるさ。


 そうさ。俺は何もおかしくない。

 今はちょっと調子が悪いけど、町まで降りて腹いっぱいご飯を食べて、ぐっすり眠れば、あっという間に元通りさ。

 

 そんな風に何かから必死に目をそらしつつ、俺は夜の山を歩き続けた。


………。


『あぁあああああぁあぁあぁあぁああああああぁぁあぁあああああ!!』


 翌朝、深い森の中で俺は限界に達していた。


『なぁんじゃあ、こりゃああああ!?』


 もう、目をそらすことはできなかった。

 これでも頑張ったのだが、さすがに明るくなった時点で圧倒的な視覚情報をごまかすことが出来なくなった。


 鏡がないから顔を見ることはできないが、少なくとも首から下は完全に人間でない。

 全身灰色、無骨な岩で覆われている。

 いや、覆われているというのは正確でない。言い直そう。


 全身、岩だ。


 身長はちょうどいい比較対象物がないためハッキリしないが、3メートルはあるだろう。

 フォルムはあくまでゴツイ。悪魔的にゴツイ。ゴリラ的にゴツイ。ゴリラ以上にゴツイ。

 ゴリラも裸足で逃げ出すゴリラだ。


 間違えた。


 ゴリラも裸足で逃げ出すゴツさだ。


『さっきから、ゴリラ、ゴリラとわけのわからんことを叫んでおるのは誰じゃ。朝っぱらから騒がしい。』

 突然話しかけられて俺は飛び上がった。

 振り向くとそこには1人の爺さん。


 たぶん爺さんだ。

 だって、髪の毛も長いひげも真っ白だし。

 肌がすこしばかり緑がかって見えるが、全身岩石の俺と比べれば誤差の範囲だろう。


 手には杖の代わりか、まだ葉っぱのついた木の枝を持っている。

 フード付きのマント(ローブというのかもしれない。)を着ていた。

 明るさの違う色々な緑を組み合わせた迷彩っぽい柄だ。


『あ、スイマセン。人がいると思わなかったので。』

 俺は素直に謝った。

 自分の非を素直に認めることが大事だと、親に教わったような気もする。

 爺さんはというと、そんな俺に少々驚いたようだった。


『なんじゃ、岩石精(ゴーレム)がこんなところにおるだけでも珍しいというのに、やけに物わかりのいい奴じゃな。』

 騒いだことは許してくれたようだったが、俺はソレどころじゃなかった。

 理由は爺さんがなんのけなしに口走った単語の1つ。


『ゴーレム!?爺さん、ゴーレムって言ったか?俺、ゴーレムなの!?』

 俺の言葉に爺さんがあからさまに怪訝な表情を浮かべた。


『お前さん、大丈夫か。その岩の体、どこからどう見てもゴーレムじゃろ。むしろ他の何だというんじゃ。』


 やっぱり、俺の体が岩で出来てるのは気のせいじゃないらしい。

 つーか、なんで俺は急にそんな面白生命体に変身しちゃってるんだよ。

 しかも、この爺さん当たり前にゴーレムとか言ってるし。普通にゴーレムいるのかよ。

 ひょっとして、ココは俺の知ってる地球じゃないのか。


 いろいろ考えて訳わかんなくなっている俺の様子に何かを察したのか。

 爺さんは木の根元に座り込んで腕を組んだ。

『なんだか、訳アリのようじゃの。ワシでよければ相談に乗るぞ。話してみい。』

 とりあえず悪い奴じゃなさそうだ。


 俺は少し迷ったが結局相談することにした。

 だって、他に人いなかったし。

※ゴーレムという言葉は本来的には人工的な泥人形の意ですが、この小説ではあくまで天然の魔物として扱わせていただきます。


毎週月曜朝7時に投稿する予定です。

後は本編にあんまり関係のない設定の話や番外編を随時に投稿します。

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