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思いつくままに ー短編集ー  作者: siro
短編

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30/30

唯我独尊のお嬢様と天上天下な王子

ただただ、我が侭なお嬢様が描きたかっただけです。しかも中途半端におわります。続きません。とくに意味はなし!

「私の物は私の物、お前の物も私のものよ」


そう言ったのは5歳になる伯爵家の令嬢、ヴィヴィアン。淡い緑色をした髪の毛は綺麗に波打ち、真紅の瞳は宝石の様に輝いている。

見た目は美しい人形だが、その性格は苛烈。


今日も自分につく従者の少年を足蹴にして手にしたのは、彼が大事にしていた銃のおもちゃだ。


「それは僕のです。ヴィヴィアン様〜」

えぐえぐと泣きながら少年が言えば、ヴィヴィアンは小首をかしげた。


「だから私の物でしょ?」

そう言うと、銃のおもちゃを持って駆け出してしまった。


「わ〜ん!ママ!!」

少年は泣きながら侍女として勤める母親の元に駆けて行く。


「ディーン、お前はまたお嬢様に泣かされたの?」

飽きれた様にディーンの母親は泣きついてきた息子の頭を撫でた。


「ヴィヴィーは相変わらず、ディーンを泣かせるのが好きなのね。困ったわ〜」

そう言ったのはヴィヴィアンの母親である伯爵夫人。


幼い頃はヴィヴィアンの我が侭は幼い子供特有のものとして扱われていた。


だがそれも少女になれば変わって来る。


「貴方、使えないわね。」

小首をかしげながら、跪く少年に言ったのは、可愛らしく成長したヴィヴィアン。


「あの男爵令嬢を口説く事も出来ないの?それでも、女子生徒人気5番以内に入ってる男なの?そんなんだから5番なのよね。本当使えない。」

ぱちんと手に持っていた扇子を開いてはとじを繰り返した後、大きくため息をついてヴィヴィアンは座っていた椅子から立ち上がった。

「何か言いたげね」

睨みつける視線に気づいたヴィヴィアンが言うと、少年は小さな声でいいえっと答えるだけだった。ヴィヴィアンの後ろに控える従者に一睨みされたため何も言えなくなっただけだった。


「そっ。」

つまらなそうに返すとヴィヴィアンはさっさと歩きはじめた。


「・・・ヴィヴィアン様」

後ろから付いて来るディーンが声をかければちらりと振り返るだけで何も答えない。


「このようなお戯れはお止めになったほうが」


「何が?私と付き合いたいって身勝手にも言ってきた男に、噂の男爵令嬢を口説けたら良いわよっていっただけじゃない。貴方、口説けると思ったの?あんな男が」


「・・・いえ。」


「はぁ〜お前も使えないわね。」


「・・・」

ディーンはその言葉に眉間に皺を寄せただけで返す事は無かった。

彼女は相変わらずの我が侭っぷりだ。行く手を阻まれれば、邪魔っと言って退かすし、人が持っている物で良い物があれば自分で手にして、自分が持つにふさわしいと見せびらかす。

それもこれも、第一王子の婚約者だからこそ、誰も言えない。



「相変わらずのようだね。ヴィー」

廊下の真ん中を立ち塞ぐ様に美しい少年達が立ちふさがっていた。


「・・・王太子殿下も相変わらずのようね」

そう冷たく言い放ちながら行く手を阻んだ張本人、一番先頭にいた王太子殿下にも不遜な態度を崩さずヴィヴィアンは歩きはじめた。


「ヴィーは今度はナニして遊んでるのかな?」

クスクス笑いながら、王太子殿下はヴィヴィアンの腕をとって勝手にエスコートを仕始めた。もちろんヴィヴィアンは振り払おうとしたが、所詮令嬢。男の手の力には叶わずびくともしない。


「フローラ男爵令嬢が最近色んな男に声をかけられて困っているそうなんだ。」

唐突に話しはじめた王太子殿下にヴィヴィアンはまったく興味無さげに、そっぽを向いて歩いている。


「ふふふ、そんなにつれないと、また夜に君の部屋にいくよ?」

その言葉は、後ろに居た従者であるディーンにも聞こえたし、王子に付いてる従者や取り巻きにも。

「どうぞ。」

不遜な態度のままヴィヴィアンは相変わらず歩き続ける。


「君は全然表情を変えないね。まだ怒ってるの?」


「怒られるような事をされたのかしら?」


「ん〜・・・とりあえず両手に抱えられない程、君にはしているね」

ニッコリと答えた王太子殿下の発言に、ヴィヴィアンの顔の表情がやっと動いた。眉間に刻まれた皺はとても深い。


「婚約する前に君の裸を見てしまったし。唇も、それと」

その言葉はヴィヴィアンの扇子によって止められた。顔面に向かって突く様にされた扇子は王子の手に寄ってしっかりと握られている。

「あ〜イライラしている君の魔力はとっても魅力的だよね」

ニッコリと頬見ながら、握っていた扇子を逆方向にひっぱると、体勢を崩したヴィヴィアンをその腕の中にしまい込んで、口づけた。


「んぅ〜〜!!!!」

暴れ狂うヴィヴィアンに誰も助けの手を差し伸べない。


彼はこの国で二番目に魔力が強い王の子だから致し方ない。魔力はその人の体質で違っていた。人の感情でコントロールされるものや呪文に寄って出し入れされるもの様々だ。


ヴィヴィアンは我が侭を言わずに大人しく良い子にしていると、ストレスが溜まって暴発する体質だった。根本的な性格も我が侭だ、駄目だといって魔力暴走されるよりは、っと生徒達も誰も止めれない。暴発すれば、力の弱いものでは身を守るのが困難だったからだ。


そこに現れたのが、他の魔力を吸い取れる王子。

定期的にヴィヴィアンの魔力を吸い取っていた。ヴィヴィアンは我が侭が通らない王子が大っ嫌いだ。言えば魔力を吸い取られるし、何故か我が侭を言う自分を気に入っているような節があるのだ。


それに、いつのまにか貴族として大切な純潔も無くしてしまっていた。もちろんその原因はヴィヴィアンを捕らえている王子だ。


「はい。いっぱい溜まってたね」

唇が離れ、酸欠でフラフラになっているヴィヴィアンを気にした風も無く抱き上げて歩き出す王子。


その後ろについて行くのは従者や取り巻き達だ。


王子が楽しそうに歩く様子にほっとしながら、二人のやり取りを見守る。

男爵令嬢が王子の周りをうろちょろしている様子にイライラするヴィヴィアンはまだ、その意味をしらない。


「ヴィー、一人だけ逃げ出すなんて許さないからね」

「?」

耳元で囁かれた言葉に不思議そうに見上げたヴィヴィアンに意味深に笑いながら王子は歩く。


「王子!!」

「やぁ、フローラ男爵令嬢。これからお昼かい?」


「えぇ、王子もご一緒にと思って」

その言葉に素早く反応したのはヴィヴィアンだ。何か言う前に王子口を塞がれてしまったが。


「そうか、それは残念。これからヴィヴィアン伯爵令嬢とこの通り一緒に食事なんだ」

困った様に首を傾げながら言った王子に、フローラは頬を赤らめながらも頷いた。


「そうなんですね。では、午後のお茶の時間は良いですか?」


「あぁ、もちろん」

そう言って手を振りながらされば、ヴィヴィアンが苛つきながら足を振り落とすも、それは王子の足にはあたらなかった。

「危ないよヴィー。令嬢として良くない」

そう言いながらも楽しげな王子にヴィヴィアンはうなり声を上げる。もちろんまだ口は抑えられたままだ。


「フローラ男爵令嬢は僕の事が好きみたいだ」

意味深に告げる王子に、ヴィヴィアンは嫌そうな顔をした。


「健気なフローラが嫌い?感情に左右されない魔力が嫌い?それとも僕に大切に扱われているのが嫌い?」

塞いでいた手をどければ、ヴィヴィアンは王子を睨みつけて答えた。


「違うわ。貴方より良い男が居るってことを教えてあげてるだけよ。」

言われた言葉にキョトンとしながら不思議そうに首を傾げた。


「僕より良い男がこの世に存在するかな?」


「するわ。」


「じゃーそいつは誰だい?」

笑顔なのに固い声音に、ヴィヴィアンは冷めた目線をよこしながらはっきりと言った。


「教える訳が無いじゃない。あなた、馬鹿なの?」

ジタバタと暴れて、王子の拘束から逃げたヴィヴィアンは自分の従者を呼びつけて、扇子で頭を叩きながら先を歩き出す。


「主が困っているのに助けないってどういう了見かしら?!お前は誰の従者なの!」

「ヴィヴィアン様です。ですがお相手はこの国の王子ですから」


「お前は私の従者よ!」

「はい」


「本当使えない!」

「えぇ、使えない従者です。」


二人のやり取りを聞きながら、王子はゆっくりと歩み始めた。

「んー逃げられた」


「楽しそうですね。」

王子の取り巻きの一人が声をかければ王子は笑った。

「あぁ、楽しいね。毛を逆立てた子猫はとっても可愛い。小さい歯で噛み付くんだ。ふふふ。」

王子の様子に回りに居た物達は肩を竦めた。



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