怪し妖
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「昼休みですよ!お昼です!ユキちゃん!」
そう言ってテンション高く来たのは、先輩の美綾先輩だ。
外国人とのハーフで薄茶色に灰色に金をまぶした様な瞳が神秘的で美人な先輩は、お昼休み早々、ユキを教室から連れ出した。
「先輩どこに」
引きつった笑みを浮かべながらユキは、手首を掴む冷たい手の感触に目が行く。この先輩は少々やっかいなのだ。
「うふふふ、大丈夫よ。みんな連れてきてるから!」
そう言ってたどり着いた先にも、同じ先輩が他のメンバーを引っ張ってきていた。
この美綾先輩が双子や三つ子なワケではない。妖術を使って分身を作っているのだ。
顔を合わせたらポンっという音ともに他の分身は消えた。
連れてこられた大地と久司、成瀬と浦河が引きつった顔で美綾先輩を見ている。それを気にせず、笑顔で先輩は音楽準備室にユキを連れ込み、手招きをした。
「ささ、遠慮せずに中に入って」
男達は顔を見合わせながらも、大きなため息をついて後に続く。音楽準備室は防音室にもなっている。先生が楽器の稽古も出来るようにもなっているため、温度も一定。
分厚い扉を閉めれば、ぷしゅっという音と共に外の音は聞こえない。
部屋の中には、既に頭の薄い妖の副校長先生と妖術の人間の先生が座って待っていた。
ユキは、後から入ってきたメンバーを見た。明らかにヤバそうな感じがぷんぷんだ。
「緊張しないで、すわってすわって。」
そう言って美綾は、その場を仕切り始めた。みんなが座ると笑顔で言った。
「皆にはお礼を先に言うわ、ありがとう〜!!」
「「「え」」」
「いやー内の学校に傀儡が紛れ込んでるのは知ってたんだけど。匂いがないし、精巧すぎて見つけられなかったのよねー。使ってる体も生きてる人間だしね。ただ中身だけが違うんだけど。本人が言ってくれればわかるんだけどねー。催眠術が掛けられてる人って見分けるの難しいじゃない?妖術でかけてあれば分かるんだけど、催眠術だと厳しいのよねー」
そう言って、にやりと笑みを深めた美綾にユキ達はひやりとした。
大人二人は、大人しく美綾の言葉に頷くだけだ。
美綾先輩は見ての通り、人間ではない。外人とのハーフというのは、あくまでも普通の生徒ようの設定だ。
なんでも妖の中でも妖狐の種族だという事は、狸の先生から教わった。妖狐の先生に聞いても、笑いながら去っていってしまって詳しい事は誰も教えてくれない。
何より、生徒として通っている若い妖狐の人達は、あの方の怒りに触れては行けません。女性は年齢を聞かれたら怒るでしょ?っと返されうやむやだ。
とりあえず凄い人らしいという事は分かっている。
何より、図書室にある卒業アルバムを見ると4年以上あけたくらいで、生徒として美綾先輩はこの学園に存在しているのだ。名前も顔も一緒。この学園が出来た年、大正時代から居る事は分かっている。
たぶん、副校長先生よりは偉いと思う人物だ。
「えっと、長年この学園に潜んでいたって事ですか?」
勇気を振り絞って大地が言えば。妖術の先生が口を開いた。
「実はここ、10年程前から潜んでいるのは把握しています。ただ、いかんせん。大きな問題になった時に存在を確認出来る程度で、後追いで調査すると最初は痴情のもつれや、いじめ等でして。人間の問題の範囲内という内容。しかも妖術はほとんど微量という厄介なものなんです。しかも体は生身の人間、持ち主も生きているようなんですよね」
「「え?!」」
ユキ達が驚けば、大人二人は深刻に頷きながら、副校長先生が続きを言った。
「うまく魂だけ入れ替えてるようなんですよ。一回だけ、死臭の匂う体のときはすぐに判断できましたが。持病の病気で死亡という形で逃げられてしまってからは、余計見分けが難しい状態。何が目的なのかも未だに不明なんですよ。入学式の時に粗方チェックはしているにも関わらず漏れるということは、入学式後に入れ替わって入るとは思うのですがね。身体検査の時にチェックを厳しくしようにも、それだけ大掛かりになると、ちょっと大人の方の問題にもなってしまいましてね。」
胃が痛そうに副校長先生がお腹を抑えながら言った。
「だからね、大人達だけでチェックし用にも穴がありすぎて駄目だし、色々な利権が絡んでた所だったのよ。そんな時に貴方達が見つけてくれた!」
美綾が手を叩きながら、囃し立てた。
「あの、そんなに前から現れていたってことは何か仕込まれてたりは?」
久司が小さく手を挙げて聞けば、美綾は困った様に言った。
「それが今の所発見出来ていないのよねー。ただの食事の狩り場として見られているのか。ただの嫌がらせなのか〜、さっさと解決したいんだけど。大人の事情でなかなか手出しできなくってむず痒かったのよね〜」
そう言って、美綾はにっこりと副校長先生を見れば、相手は震え上がっていた。
まじで、美綾先輩は何者なんだろうか。とユキ達が思っていると、妖術の先生が咳払いをした。
「美綾さんの気持ちは分かりますが。とりあえず、これからは生徒であるユキさん達にも手伝ってもらい、背後関係を調べましょう」
「そうね。という事でよろしくね。ただし、ユキちゃんは私と一緒よ。個人プレイは許さないからね★」
にっこり微笑みながら、美綾はユキが持っていた魔の書物を持っていた。
「あっ!!」
思わず椅子から立ち上がり、取り返そうとするも、ひょいっと美綾一歩引いてその手から逃げた。
「こんな危ないもの、ユキちゃん持ってたら駄目じゃない。こういうのはちゃんと先生に報告しないといけないのよ?」
「それは、私がぁ〜」
「どんなに便利でも魔の書物ってつくくらいなんだから、危険な物なのよ?まー今回はこれのおかげで見つけられたけどね。」
「美綾先輩〜」
「便利な物にはそれだけ、リスクもあるの。これは没収です!」
にっこりと微笑みながら美綾は手の中にあった魔の書物を、懐から封印札を取り出し術を紡いだ。封印札から伸びる鎖に寄って魔の書物は巻かれてしまった。
「あぁあああ」
そんなユキを横で大地が声を出さずにバーカと動かした。めざとく気づいたユキはすかさず、大地の足を踏みつけた。
「っ!!!!っいってーな!」
「うっさい!」
「ふふふ、青春ね!元気のいい女の子は良いわ!」
美綾は楽しそうに微笑みながら、二人の様子を微笑ましくみていた。
こうして、2人1組になって桃華を追跡する事になった。もちろん、餌は・・・
「なんで俺が!!」
大地だ。
わめきながらも、とりあえず接近しなければ分からないという事で、いつもしつこく絡まれている大地が学校帰りにあえて、桃華に捕まり一緒に下校する事とあいなった。
「なーむー」
ユキは両手を合わせて合唱すれば、他の3人も同じ様にした。因に二人程ずっと黙っているのは、飛び火しないためなのと、美綾が怖いからだ。
その目は如実に指示に従っとけと、大地に語りかけている。
「くそっ!!」
大地はしぶしぶ、桃華に捕まる事にした。それでも嫌な物は嫌だ。なんたって教師陣が今まで取り押さえる事ができなかった術師と対面するかもしれないなんて怖すぎる。
そういう感は陰陽師にとって大切だ。自分の実力以上の物と対峙しないためでもある、逆に食われて悪霊の力があがってしまっては元も子もない。
「大丈夫よ〜いざとなったら助けるから。何より私が近づくと逃げられちゃうのよね〜」
そう言って、美綾は大地の携帯に自分のアドレスを登録させ、なおかつ狐のストラップまで渡した。
「これは、もしもの時引き千切ってね。そうすると緊急発進で管狐が飛び出すから!」
そんな防犯対策もとられ、大地は午後の授業へと追い返されてしまった。




