【野次馬の正しいマナー】08
短編の量じゃなくなってしまった。後2話くらいで終わりにしたいです。。目標
悲恋になってきたかん・・・
とうとうきたよ!合同舞踏会!!
ロイヤルイーストとウエスト両方の生徒が一同王宮の大広間でダンスする日です!この日婚約発表するカップルも多いですけどね!!
そして、友達もミーナちゃん以外も数人婚約発表グループにいました。な、なんだってー!早い!
私は本日はちゃんとおめかしモードですよ!クラスの皆から誰?って言われる程ガッツリメイクです!化ける白粉と書いて化粧と読むってじっちゃんが言ってた(嘘)
まー皆の反応が楽しかったので良かとです。知り合いにある程度挨拶をすれば、あとは婿探しの友達に紛れて男性の品評会ですよ。
「見てみて!あの人胸板があつい!」
「相変わらず筋肉の反応が早いわね。」
「見た目は騎士っぽいのに、文官の家系らしいわよ。」
「あの人はひょろっとしてるけど、着やせするタイプかしら?」
「ねぇねぇ、あの人はどう?」
「チャラそう。」
「あそこは、今年作物以外に特産品ができて、金持ちよ。」
「特産品って?」
「石けんよ。美容に良いっていう」
扇子で口元を隠しながら皆好き放題言っちゃいます。まぁ、男性陣も同じような状況だからどっちもどっちなんだけどね!
「きゃー!見てみて!王子様がたがいらっしゃったわ!!」
友達の一人がルーナの肩を扇子で叩きながら言った。
「痛い!」
「それより見て!」
顔をガッツリもたれてみせられた方向には、確かに我が国の王子様がたがいた。だが、その一人にルーナは目を見開いた。
「うそ」
そこには3人の王子達がいた。
第一王子は、薄茶色の髪の毛で青い目、線は細く肌が白い。
第二王子は、がたいよく、ハニーブラウンの髪の毛に青い目、肌は日に焼けて健康的だ。
第三王子は茶色の髪の毛に、濃い青い目。
黒めがねさんに背格好の似た第三王子。
まさか、何かの偶然と思いながらもルーナは周りを見回した。他に黒めがねさんと同じ背格好の人が居るかもしれないし、他人のそら似だと思いたかった。
ぱっと見た感じ見つからなかった。
何故今気づいたんだろうと思いながら、黒めがねさんと同じく第三王子は右肩が若干上がってる事に気づいてますます、疑惑が膨らんだ。
気配を消して舞踏会の人の波を渡り歩き、ルーナは様々な人のうわさ話や恋愛話を聞いて回る。恋の駆け引きも行われる舞踏会。
今回3人の王子が現れた事で、よりいっそうどの貴族がどちらの派閥か目に見えて分かりやすい。
驚いた事に、第一王子と第二王子の仲は悪くないように見える。お互いの貴族が行き来しているのが伺えた。
それに、視線で合図し合っている。
それに比べて、第三王子の派閥にはあまり有力候補の貴族は居ないようだ。だから、焦った表情をしたのだろうかと、こないだの顔を思い出した。
そして、同時に自分に対して言った言葉の理由を考えかけて止めた。それは苦いものだろう。
ほんの少しくらい気分になり、ルーナは庭園に出る事にした。気分転換も必要だ。
月灯りと、庭園に置かれた街灯だけが淡く照らしている。夜の冷たい風は舞踏会の熱気をさまさせるのにちょうどいい。
生け垣の影になるベンチで休めば、虫の音が聞こえてきた。暫くぼうっとしていれば、人の話し声と靴の音が近づいてきた。
思わず身を沈めて様子を見れば、男女が逢引しているようだ。もしかして、ラブシーンが見れちゃうかも?!っと生け垣から少し顔をのぞいて後悔した。
*
噴水の前で抱き合っていたのは、第三王子と我が校で見かけた事のある侯爵令嬢だ、たしか彼女は中立派の貴族だ。
それなのに、第三王子とこんな場所にいる。侯爵が密かに第三王子派についたのだろうかと思ったが、舞踏会で見聞きした内容を考えると、どちらかというと第二王子派に行きそうだった気がする。
とすると、二人は秘めた関係。
聞き取れない、甘い囁きのあと。顔を上げた二人に月明かりが照らす。その表情は自分に向ける笑顔ではなく、義兄が姉に向ける蕩ける様な笑みを彼女に向けている。
その笑顔が自分には向けられた事が無い事実に胸が苦しい。
「あぁ、私・・・」
彼の事が好きだったんだ。
目頭が熱くなって視界がボヤける。
ただの世間話から出会って、お互いうわさ話を共有して、時々優しい笑みを向けてくれた、姉が自分に向けてくれるあの笑みと一緒。馬鹿だ。あんなに警戒していたのに、いつ心を許したんだろう。でも、そっか、あの笑みを異性から受けて嬉しかったのかもしれない。
せっかく踏みとどまっていたのに、気づきたくなかった。
酷い男だ。変わりたくないと言いながら、変えたのは彼自身だ。
おさげ姿の自分がこの学校に通ってる事なんて知っていたはずなのに、あんな事言うなんて酷い。彼さえ何も言わなければ、きっとこの思いにも気づかずずっと変わらずに続いたのに。違うか、彼は変えたかったんだ。
本当に酷い。
やっぱりちゃんと身元調査しとけばよかった。
そうすればこんなに傷つかなかったのに、馬鹿だな。必死に自己分析して心を静めようとするも涙は溢れて頬を伝ってしまった。
そしてゆっくりとターンをして歩き出した。
本当、何で今気づくのか、会場で彼が黒メガネさんだって気づいた時点で自分の気持ちに気づくべきだった。今まで気づかなかったのに今回は気づいてしまった事に・・・私とあってる時とあんなに違うのに。
渡り廊下に戻ればまだ誰もいなかった。
前を向きながら、涙がこぼれ過ぎない様にポケットを探っても、手にはお目当てのものが見つからない。最悪だポケットの中にハンカチがない、落としたようだ。仕方ない、手袋の指先で涙を拭うと化粧も落ちてしまった。
「ボロボロだ」
白い手袋は涙で落ちた化粧で汚れてしまった。顔は酷い事になってるだろうそう思っているとふわりと暖かい物に抱きしめられた。
「可哀想に、可憐な妖精をこんなに傷つけたのは誰だい?」
耳元で子宮に響く低温で囁かれてルーナはびくりと肩を揺らした。この声を知っている。
驚いて振り返れば、そこに居たのは第二王子だった。
ますます目を見開いてしまった、何も言葉が思いつかず固まった。
「おやおや、君は・・・奇麗な夜の妖精に化けたね」
「あ・・・は、離して下さい。」
向こうも私の正体に気づいたと思った。必死にはなれようとすればするほど強く抱きしめられてしまった。
「踏み込みすぎては居ないかな?」
そう耳元で囁かれて、思わず膝が抜けた。よりいっそう抱きしめられ体が密着する。もう恥ずかしすぎて顔が暑い。
「踏み込みすぎたくないので、離して下さい。」
そう必死に頼んでも、楽しそうな笑い声しか聞こえない。
「兄上何をしてるんですか?」
突如響いた冷たい声音にルーナは思わず第二王子にしがみついた。
「おやおや、そんな怖い声を出すのは止めたまえ、せっかく捕まえた夜の妖精が怖がって逃げてしまうだろう。」
そう言って、ルーナを抱きしめたまま振り返った。そこには第三王子と、その後ろに先ほどの令嬢が居た。
「逢引か。弟のくせに隅に置けないね。」
「何を勘違いされてるんです。庭園を案内しただけですよ、兄上こそ、無理矢理女性を手込めにするなど最低ですね。」
「失礼だな。俺は誠心誠意、女性には偽り無い愛を囁いているさ。勘違いさせる、お前と違ってな。」
「そっくりそのまま返しますよ。」
二人の間に火花が散っている。あまりの冷戦っぷりにルーナは顔を上げられなかった。
「そろそろ解放して差し上げたらどうです?」
言い争いを少しした後に第三王子が言った、ちらりと見ればもうあの侯爵令嬢は居なくなっていた。
「・・・この妖精は、お前の知り合いなのか?」
「いえ、ですが。そちらの令嬢はまだ社交デビュー前ですよ。目印の花飾りをつけていない。火遊びで手を出してよいわけがありませんよ」
暗に、私もデビュー前に不埒なまねをするなと言われてるように聞こえ、心の中が冷たくなってくる。
「お前は堅物だな。自分には夜をともに過ごせる女がいる癖に」
そう言うと、抱きしめたまま歩き出してしまった。
「離してください。殿下」
舞踏会場とは逆の方向に歩いているのに気づき、必死に足を止めようとするも足がもつれてそのまま抱き上げられてしまった。
「嫌だね。離したら他の獣に散らされてしまう」
「ご冗談を。」
今は化粧も禿げてみにくい顔をしてるというのに何をいってるのか。ルーナは目を伏せた。
「あんな男は止めておけ。」
「?!」
「美しく咲いた君に気づきもしなかった。愛を囁いたくせにね」
「・・・どうして」
どうして第二王子は、知ってるの?
どうして、あのときの男性が第二王子なの?
どうして、化粧した私に気づいたの?
どうして、そんな優しい瞳でみるの?
どうして、助けてくれたの?
どうして、貴方は私を抱きしめるの?
どうして・・・
私の心に入り込まないで。




