第Ⅲ話!剣道!現代剣術で異世界無双!?
放課後。
部室へ入ると、ホワイトボードにデカデカと。
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剣道場で待つ!
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「……。」
嫌な予感しかしない。
「おっ、朝倉。」
ちょうど部室に来た神崎副部長と鉢合わせる。
「今日は移動か。」
「移動?」
「剣道場。」
「嫌な予感しかしないんですけど。」
「大丈夫。死にはしない。」
「その言い方が一番怖いんですよ。」
◇
剣道場。
板張りの床に、竹刀がずらりと並んでいる。
奥では剣道部が練習をしていた。
「すみません、お借りします。」
高瀬先生が顧問へ挨拶を済ませる。
どうやら今日は道場の一角を借りているらしい。
桐生先輩は、すでに竹刀を一本手に取っていた。
「いい重さだ。」
「慣れてるんですか?」
「中学まで少し。」
「少し、ですか。」
その構えはどう見ても"少し"ではなかった。
白峰部長がホワイトボード代わりのスケッチブックを広げる。
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現代剣術で異世界無双!?
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袴をまとい、準備万端の白峰部長が勢いよく手を挙げる。
「異世界といえば!」
「……魔法」
「ドラゴンだな。」
「剣。」
「そう!現代剣術!」
俺も頷く。
「日本には積み重ねられた剣術がありますし。」
「異世界に行けば強そうですよね。」
高瀬先生は竹刀を一本持ち上げた。
「では質問。」
「剣道は、人を倒すための技術か?」
「え?」
部室と同じように。
いや、それ以上に静まり返る。
桐生先輩が答える。
「一本取る競技。」
先生は頷く。
「その通り。」
竹刀を軽く振る。
「これは竹。」
「だが、異世界で使うのは鋼だろう。」
「重さ、重心、刃。全部違う。」
「これは木剣だが。」
先生は竹刀と木剣を、一本ずつ俺へ差し出す。
俺は木剣を持たせてもらう。
「うわっ、重い。」
竹刀とは全然感覚が違う。
白峰部長がスケッチブックをめくる。
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剣道で身につくもの
・間合い
・体さばき
・姿勢
・反応速度
・精神力
身につかないもの
・刃で斬る感覚
・鎧への対応
・盾との戦闘
・命のやり取り
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俺はぽつりと呟く。
「じゃあ。」
「剣道だけじゃ無双できない?」
先生は笑った。
「剣道だけでは足りない。」
「だが、剣道をやっていない人より、ずっと有利だ。」
桐生先輩が竹刀を正眼に構える。
「数百年かけて積み重ねられた技術だ。」
「全ては使えなくても。」
「全てが無駄にはならない。」
その言葉には、不思議な説得力があった。
「朝倉。」
「はい?」
「来い。」
「えぇっ!?」
◇
「始め!」
高瀬先生の声と同時に、俺は竹刀を握り締めた。
「せぇいっ!」
勢いだけで飛び込む。
――パシン!
「いてっ!」
気付けば俺の竹刀は天井を向き、桐生先輩の竹刀が俺の面の寸前で止まっていた。
「一本。」
「早っ!」
もう一度。
「やあっ!」
――パシッ。
「ぐっ!」
三度目。
「うおおお!」
今度こそ、と全力で踏み込む。
――スッ。
桐生先輩の姿が目の前から消えた。
「え?」
勢い余って足がもつれる。
――ドンッ!
「いってぇ!」
気付けば、俺は床に転がっていた。
桐生先輩は半歩横にずれただけだった。
「……。」
「……終わりだ。」
桐生先輩は竹刀を下ろした。
「朝倉。」
「はい……。」
「剣道経験は?」
「ゼロです。」
「なら十分頑張った。」
「慰めになってません。」
桐生先輩が静かに竹刀を再び手に取る。
「先生。」
「一本。」
高瀬先生は少し嬉しそうに笑う。
「久しぶりだな。」
「遠慮は?」
「いらん。」
道場の空気が変わる。
さっきまで楽しそうに観戦していた白峰部長も口を閉じた。
神崎副部長は眼鏡を押し上げる。
栞もノートを書く手を止める。
いつの間にか剣道部員たちもギャラリーに加わっている。
「始め。」
二人はゆっくりと間合いを詰める。
誰も動かない。
竹刀の先だけが、わずかに揺れている。
「……。」
「……。」
「長くないですか?」
俺が小声で聞く。
神崎副部長が首を振る。
「これが間合いだ。」
次の瞬間。
――ダンッ!!
床を踏み込む音が道場に響いた。
互いの竹刀が一瞬で交差する。
――バシィッ!!
乾いた音。
「っ!」
桐生先輩がすぐさま体勢を立て直す。
先生も半歩だけ下がる。
「……今の見えたか?」
神崎副部長が尋ねる。
「全然。」
「俺もだ。」
二人は再び構える。
今度は桐生先輩から仕掛けた。
先生の竹刀がそれを阻む。
離れる。
また詰める。
さっき俺が相手だったときとは、まるで違う。
竹刀を振っている時間より、二人が何もせず睨み合っている時間の方が長い。
なのに。
その「何もしていない時間」の方が、怖かった。
道場に竹刀の音だけが響く。
「はっ!」
桐生先輩が大きく踏み込んだ、その瞬間。
先生はわずかに身体を開き、竹刀を滑らせるように受け流した。
そして。
――コツン。
桐生先輩の面へ、軽く竹刀が触れた。
「……一本。」
静まり返る道場。
桐生先輩は竹刀を下ろし、小さく息を吐いた。
「参りました。」
先生も竹刀を下ろす。
「腕は落ちていないな。」
「先生ほどでは。」
二人は笑って竹刀を合わせた。
「……すごい。」
柊さんが小さく呟く。
「かっこいいよね!」
白峰部長が目を輝かせた。
高瀬先生は照れくさそうに頭をかいた。
「昔、少しやっていたんだ。」
神崎副部長がぼそりと言う。
「先生の"少し"は信用するな。」
俺も頷く。
「王様役も"少し"でしたし。」
部長が大きく頷く。
「あとコーヒーも"少し"しか飲んでないって毎日言う!」
「それは違う話だ。」
笑い声が道場に広がった。
◇
そして翌朝。
「……痛っ!」
起き上がろうとした瞬間、全身が悲鳴を上げた。
異世界へ行く前に。
まず運動不足をどうにかした方がいいかもしれない。
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研究結果
・剣道は異世界でも役に立つ。
・ただし、そのまま実戦剣術にはならない。
・重要なのは、長い歴史の中で磨かれた「間合い」「体さばき」「判断力」である。
そして!
経験者は強い!
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