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第Ⅲ話!剣道!現代剣術で異世界無双!?

放課後。

部室へ入ると、ホワイトボードにデカデカと。


──────────────


剣道場で待つ!


──────────────


「……。」

嫌な予感しかしない。

「おっ、朝倉。」

ちょうど部室に来た神崎副部長と鉢合わせる。

「今日は移動か。」

「移動?」

「剣道場。」

「嫌な予感しかしないんですけど。」

「大丈夫。死にはしない。」

「その言い方が一番怖いんですよ。」




剣道場。

板張りの床に、竹刀がずらりと並んでいる。

奥では剣道部が練習をしていた。

「すみません、お借りします。」

高瀬先生が顧問へ挨拶を済ませる。

どうやら今日は道場の一角を借りているらしい。


桐生先輩は、すでに竹刀を一本手に取っていた。

「いい重さだ。」

「慣れてるんですか?」

「中学まで少し。」

「少し、ですか。」

その構えはどう見ても"少し"ではなかった。


白峰部長がホワイトボード代わりのスケッチブックを広げる。


──────────────


現代剣術で異世界無双!?


──────────────


袴をまとい、準備万端の白峰部長が勢いよく手を挙げる。

「異世界といえば!」

「……魔法」

「ドラゴンだな。」

「剣。」

「そう!現代剣術!」

俺も頷く。

「日本には積み重ねられた剣術がありますし。」

「異世界に行けば強そうですよね。」

高瀬先生は竹刀を一本持ち上げた。

「では質問。」

「剣道は、人を倒すための技術か?」

「え?」

部室と同じように。

いや、それ以上に静まり返る。

桐生先輩が答える。

「一本取る競技。」

先生は頷く。

「その通り。」

竹刀を軽く振る。

「これは竹。」

「だが、異世界で使うのは鋼だろう。」

「重さ、重心、刃。全部違う。」

「これは木剣だが。」

先生は竹刀と木剣を、一本ずつ俺へ差し出す。

俺は木剣を持たせてもらう。

「うわっ、重い。」

竹刀とは全然感覚が違う。


白峰部長がスケッチブックをめくる。


──────────────

剣道で身につくもの


・間合い

・体さばき

・姿勢

・反応速度

・精神力


身につかないもの


・刃で斬る感覚

・鎧への対応

・盾との戦闘

・命のやり取り


──────────────


俺はぽつりと呟く。

「じゃあ。」

「剣道だけじゃ無双できない?」

先生は笑った。

「剣道だけでは足りない。」

「だが、剣道をやっていない人より、ずっと有利だ。」


桐生先輩が竹刀を正眼に構える。

「数百年かけて積み重ねられた技術だ。」

「全ては使えなくても。」

「全てが無駄にはならない。」

その言葉には、不思議な説得力があった。

「朝倉。」

「はい?」

「来い。」

「えぇっ!?」




「始め!」

高瀬先生の声と同時に、俺は竹刀を握り締めた。

「せぇいっ!」

勢いだけで飛び込む。

――パシン!

「いてっ!」

気付けば俺の竹刀は天井を向き、桐生先輩の竹刀が俺の面の寸前で止まっていた。

「一本。」

「早っ!」


もう一度。

「やあっ!」

――パシッ。

「ぐっ!」


三度目。

「うおおお!」

今度こそ、と全力で踏み込む。

――スッ。

桐生先輩の姿が目の前から消えた。

「え?」

勢い余って足がもつれる。

――ドンッ!

「いってぇ!」

気付けば、俺は床に転がっていた。

桐生先輩は半歩横にずれただけだった。

「……。」

「……終わりだ。」

桐生先輩は竹刀を下ろした。

「朝倉。」

「はい……。」

「剣道経験は?」

「ゼロです。」

「なら十分頑張った。」

「慰めになってません。」


桐生先輩が静かに竹刀を再び手に取る。

「先生。」

「一本。」

高瀬先生は少し嬉しそうに笑う。

「久しぶりだな。」

「遠慮は?」

「いらん。」


道場の空気が変わる。

さっきまで楽しそうに観戦していた白峰部長も口を閉じた。

神崎副部長は眼鏡を押し上げる。

栞もノートを書く手を止める。

いつの間にか剣道部員たちもギャラリーに加わっている。


「始め。」

二人はゆっくりと間合いを詰める。

誰も動かない。

竹刀の先だけが、わずかに揺れている。


「……。」

「……。」

「長くないですか?」

俺が小声で聞く。

神崎副部長が首を振る。

「これが間合いだ。」

次の瞬間。


――ダンッ!!


床を踏み込む音が道場に響いた。

互いの竹刀が一瞬で交差する。


――バシィッ!!


乾いた音。

「っ!」

桐生先輩がすぐさま体勢を立て直す。

先生も半歩だけ下がる。

「……今の見えたか?」

神崎副部長が尋ねる。

「全然。」

「俺もだ。」


二人は再び構える。

今度は桐生先輩から仕掛けた。

先生の竹刀がそれを阻む。

離れる。

また詰める。

さっき俺が相手だったときとは、まるで違う。

竹刀を振っている時間より、二人が何もせず睨み合っている時間の方が長い。


なのに。

その「何もしていない時間」の方が、怖かった。

道場に竹刀の音だけが響く。

「はっ!」

桐生先輩が大きく踏み込んだ、その瞬間。

先生はわずかに身体を開き、竹刀を滑らせるように受け流した。

そして。


――コツン。

桐生先輩の面へ、軽く竹刀が触れた。

「……一本。」

静まり返る道場。

桐生先輩は竹刀を下ろし、小さく息を吐いた。

「参りました。」

先生も竹刀を下ろす。

「腕は落ちていないな。」

「先生ほどでは。」

二人は笑って竹刀を合わせた。

「……すごい。」

柊さんが小さく呟く。

「かっこいいよね!」

白峰部長が目を輝かせた。

高瀬先生は照れくさそうに頭をかいた。

「昔、少しやっていたんだ。」

神崎副部長がぼそりと言う。

「先生の"少し"は信用するな。」

俺も頷く。

「王様役も"少し"でしたし。」

部長が大きく頷く。

「あとコーヒーも"少し"しか飲んでないって毎日言う!」

「それは違う話だ。」

笑い声が道場に広がった。




そして翌朝。

「……痛っ!」

起き上がろうとした瞬間、全身が悲鳴を上げた。

異世界へ行く前に。

まず運動不足をどうにかした方がいいかもしれない。


──────────────


研究結果

・剣道は異世界でも役に立つ。

・ただし、そのまま実戦剣術にはならない。

・重要なのは、長い歴史の中で磨かれた「間合い」「体さばき」「判断力」である。


そして!

経験者は強い!


──────────────

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