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灰色探偵ユウマの放課後事件録  作者: たくわん。
第14事件 音楽室の消えた楽譜

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第3話『沈黙のエチュード』



校舎の電源が落ちたのは、午後11時ちょうど。

一瞬で世界が闇に沈み、静寂が訪れる。


だが――その静寂の中で、ひとつだけ確かに響いた音があった。

ピアノの「ド」の音。

誰も触れていないはずの鍵盤が、確かに沈んだのだ。


ミナトが息をのむ。

「ユ、ユウマ……今の、聞こえましたよね!?」

「……ああ」

ユウマは懐中電灯を手に、ピアノの奥を照らした。


中に仕込まれていたのは、古いオルゴール。

ねじが切れて動かないはずなのに、ほんの一瞬、ゼンマイが震えていた。



「このオルゴール……五年前の《灰色の旋律》と同じ旋律だ」

「つまり、これが“音源”……?」

ユウマは首を横に振る。

「いや、これは“鍵”だ。真の音源を隠すための」


ピアノの譜面立ての裏を確認すると、小さな焼け焦げた紙片が貼られていた。

そこには五線譜の断片――だが、音符の一部が左右逆転している。


ユウマの目が細くなる。

「反転譜……つまり、鏡で見ると正しい譜面になる仕掛けだ」


彼は音楽室の鏡――生徒たちが使っていた姿見の前に紙を持っていった。

すると、譜面の上部に浮かび上がる言葉。


“沈黙の中に在りて、真の旋律は響く”



ミナトが不安げに辺りを見回す。

「真の旋律……って、何を指してるんですか?」


ユウマは答えず、ピアノの鍵盤を三音だけ叩いた。

「ラ、ド、ミ」――音が響かない。

代わりに、壁際のスピーカーから低い雑音が流れ出した。


「……聞こえるか、ミナト。このノイズの中に“声”が混ざってる」

「えっ? ノイズに……?」


ユウマは携帯レコーダーを取り出し、再生速度を下げた。

すると、かすれた声が浮かび上がる。


『き……え……た……の……は……わた……し……じゃ……な……い』


ミナトの顔が真っ青になる。

「これ、五年前に消えた吹奏楽部の子の声……?」

「恐らく、そうだ。彼女は“消えた”のではなく――消された。

 《灰色の旋律》は、真実を隠すための曲だったんだ」



その時、音楽室の扉がバンッと閉まった。

突風が吹き、楽譜が宙を舞う。

その中の一枚がユウマの足元に落ちた。


裏には、たった一行のメッセージ。


“ユウマへ。次に鳴る音は、あなたのために。”


ミナトが悲鳴を上げる。

「これ、誰が……!? まさか、ユウマを狙って――」

ユウマは静かに指を立て、ミナトを制した。

「落ち着け。これは“挑戦状”だ。……犯人はまだ、この学校にいる」



雨音が、音楽室の窓を叩く。

外の世界と遮断されたこの空間で、再び“沈黙の旋律”が始まる。


ユウマはピアノに手を置き、目を閉じた。

「いいだろう。君のエチュード(練習曲)……聴かせてもらおうか」


灰色探偵の耳が、沈黙の中の真実を捉えようとしていた――。


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