戦闘組の訓練と守護獣誕生
お楽しみ頂けると幸いです。
邪獣人と戦ってから1か月ほど経過した。公開しても良いかなって範囲の地図を作った後は、気分転換でメタルマウンテンに行くことはあったが、基本的にはひたすらに極上の果実でレベル上げを進めている。
基本的にここ最近は一人で行っていたので、ぐっとレベルを上げることが出来たと思う。詳しい数値の計算が苦手なので覚えていないけど春まで続ければ相当にレベルは上がると思う。ステータスで負けることは無くなるからあとは技術戦術での戦いになる。
あとは物量に関してだ。そこで新年を迎えたら全員のレベル上げを手伝うことになっている。具体的には基準をクリアした人に関しては極上の果実に連れて行く。
人に限らず可能ならば薙刀を始めとして戦闘が出来るフレンドビーも連れて行くこと予定でもいる。
それに俺も知らないスキルを使っているフレンドビーもちらほら見るからな。戦闘に重点を置きすぎてもいけないと思うけど現状はある程度ふるいにかけて戦闘に役立つものを直庭させてもらいたい。
あとは本人の強い希望で参加するデテゴやトワもいたりする。俺が作った武器を持たせてひたすらに戦闘をくり返させている。
トワは良いとしてデテゴは長期間の休んで良いのかと思っていたが問題無いそうだ。この冬の期間に魔物と戦闘するようなことを若手にはさせないそうだ。
戦闘でもお守りが必要な若手に雪も降るような環境で遠出はさせないそうだ。遠出しないということはデテゴも内勤、になるかと思ったらなぜかこちらに来ることになった。
「特別にな。金級を目指すつもりは無いが、一応俺も実力を再度身に付ける必要が出てきてな。まあ一つ頼むわ」
よく分からないが、助けてもらった恩はあるので手伝いはしよう。特に不都合があるわけでもないので受け入れた。
トワと並べてみると、無口無表情のちびっことガタイの良い豪快なお兄さんが二人で連携を取りながら戦闘を行っているそうだ。
意外と良いコンビのようなのでそのままがんばってもらっている。
一方で血の涙は流してないけど悔しがっているのはコトシュさんだ。魔力操作を身に付けたとはいえそこまでの戦闘能力は持っていない。
精々が街中で襲われたときに相手に何もさせずに気絶させるくらいしかできない。それでは連れて行けるとしても安全なダンジョンくらいだろう。2人について行くのも難しい。
あ、調べてみたらステータスが見られるようになっていた。後天的に発生する人もいるのかな。万花や毎果もステータスがあってもおかしくないけど発生してないし、よく分からない。
まあ安全に関して気を使わなくて済むのは良いことだ。追いつくのが目標らしいのでがんばってもらうとしよう。
ロイーグさんは戦闘に関してはがんばる気はないそうなので、ゆっくりではないけど開発担当してがんばることに決めてくれた。
糸太郎も引き続きロイーグさんの護衛もこなしてくれることになった。
いつまでもレイさんの屋敷にいるわけにもいかないので、屋敷からはお暇させてもらった。一度だけグレインフィールドでレベル上げを手伝ったのでアンナさんを始め護衛の人たちが強くなったので安心して去ることが出来た。
「新しく学ぶことがあった。交代で戦闘に出て強くなることを目指すことにするよ」
アンナさんはレイさんの手伝いも始めたので非常に忙しいはずだが二足のわらじ発言をしていた。周囲の人たちも同じような表情をしている人と目線があっちこっち向いている人といたからよく話し合って決めるようにお伝えしておいた。
「何か出来ることがあればいつでも仰ってくださいね」
とはレイさんの言だ。せっかくマルクトで出来た太いパイプだから何か来ることがあればお願いしようと思う。
何よりも魔国と近い立地のため、情報や人の動きが手に入れば教えてもらうようにお願いしておいた。魔国に行っても構わないのだが、手を広げすぎるよりはまずは王国内で出来ることは終わらせてからにするつもりだ。
マルクトを出てどこを本拠地にするのかの話だが、人数が多くなったとしても俺たちには全く関係ない。俺がいればいつでも希望の場所に行くことが出来る。
基本的にはユーフラシアの空き家を借家として一軒借りて過ごしている。グレイブ村を使っても良くなれば引き払うつもりなので修繕以上の手はかけていない。
まあ窮屈なことがあればそのときは宿屋に行っても良いし、それぞれ色々とあるだろうから行動に関してはバラバラでも問題無い。俺が把握しているのは主に戦闘関連だけだ。
そんな感じで過ごしていたある日の朝のことだ。
「イレブン、あと2週間で新年だよ」
「あ、そうなんだ」
もちろん分かっている。こっちの世界でも現実の世界とリンクしているのかクリスマスとか新年の概念はある。お祝いをするのは間違いないが、全員が全員に準備するのは大変なので余裕がある人が可能なら準備するに留まることになった。必ずしも全員に準備する必要もない。
準備せねばとは思っているが、色々と悩んでいる間に既にあと1週間だ。一応何も無ければこれにしようという最終手段はあるが決め切れずにいる。日中を戦闘ばかりにしてしまっているから決まらないという言い方も出来る。
「えっと、イレブンはいそがしいだろうから食事だけを空いてる時間で作ってくれたらいいからね」
「お、おう」
しかも何をプレゼントすれば良いのか迷っていることを見抜かれてしまっているらしい。ものすごく気まずい。少し話をしてリセルが去って行く。
一応その光景はデテゴとトワに見られている。
「……何か言いたいことでもあるのか」
「俺からは無い」
「デテゴの言う通り私も無い」
しばらく沈黙が続いた後に絞り出すように一言出す。
「…俺は今日メタルマウンテンに行く」
「いいぞ」
「私もコトシュさんに何かあげるし」
メタルマウンテンくらいなら中で迷わなければ単独で行動することになっても問題無い。
俺はレア鉱石を手に入れるのを目指して一人で走り回るつもりだから、二人も自由に行動してもらうことにしよう。
ニヤニヤした表情のデテゴと違い、トワは俺の顔を見て熱でもあるのかと聞いてくる。悪気が無いから邪険に扱うことも出来ない。
「とりあえず行こう」
デテゴには何かし返すことだけ決めておいた。
☆ ★ ☆ ★ ☆
デテゴへの仕返しは一人だけ残して真っ暗の坑道に放置しておいた。万が一も起こるはずは無いが、念のためステルス追尾が得意なフレンドビーを付けておいた。
トワは俺の目の届く範囲で採掘させた。トワもコトシュさんも、『トワが掘ってきた』ってことが大事だからだ。あとの加工はロイーグさんに回るだろうからそれで良いだろう。
一日メタルマウンテンを走り回ったおかげで目当ての金属は手に入った。翌日に練習してから臨んだこともあって加工に関してもうまくいった。
ゲームでは低確率での生産品だったので一発で完成したのは嬉しい話だ。鋳つぶして使い回すことでも良かったが、純度高く仕上げるなら一発成功に越したことは無い。
合計で三日かけて準備した。その間二人には戦闘技術向上を目的にお互いや薙刀隊を相手に組手をくり返してもらった。試行錯誤するには戦闘回数は多い方が良い。
切り上げの最後の恒例行事が終わった後は大体俺だけが立っていて、二人は倒れ込んでいることが多い。俺がボッコボコにしたからだけど。
ある程度回復して動けるようになったところで大まかに3人で予定を擦り合わせておく。デテゴがいるから必要なことだ。
「それで?明日はどうするんだ?」
「ん?二人はあとは戦闘訓練でもしておいたらいいよ。…いや、突き放してるわけじゃなくて。基礎の部分は押し上げたからあとは自分の得意な形とか最後の仕上げって誰にも見られたくないものでしょ?」
「まあそれはそうだが。俺は死線をくぐる時に思いつくことが多かったからなぁ」
「まあ何に時間使っても自由だから良いけどね」
「そうするわ。冒険者組合で予定があるかもしれないからな。また明日だ」
「おーぅ」
他にすることがあれば仕方ない。デテゴの所属は一応冒険者組合だし。すまねぇな、と言いつつデテゴは帰っていった。
「トワはどうする?」
「採ってきた金はロイーグお兄さんに任せたから私は何でもいい。でも久しぶりにコトシュお姉ちゃんと一緒に行動もしたい」
「じゃあ行っておいで」
「分かった。コトシュお姉ちゃんが無理だったらまた明日相談させて」
「了解だ」
翌日、それぞれにやりたいことが出来たとのことでしばらくは別行動になった。それならそれで構わない。送り出す場所がグレイブ村でなければ大丈夫だ。
何をやるかも凡そ見当が付くしな。デテゴは火山の火口だし、トワはメタルマウンテンだ。やっぱりそれぞれの得意を作り出すための仕上げだな。最終的にはステータスだけで決まらないこともあるしな。
何せ毎日の仕上げは精霊の腕輪でがんじがらめに縛った状態の俺との戦闘だ。ハッキリ言って一般の冒険者くらいの戦闘能力でしかない。一度でも攻撃が当たれば俺の負けって状況で俺が勝ってるんだから二人の精神的な強さも大したものだ。
俺の戦闘も色々と見せているけどまあそう簡単に差が埋まってもらっても困るしな。何か工夫をするならしっかりと考えてもらおう。
「さて、じゃあ俺も材料集めといこうかな」
皆の食事作りに関しては俺一人だけのことでは無いが、材料を貯蔵して大量に仕入れるのは俺がやる方が速い。色々と集めに行くとしよう。何カ所か巡って最後に極上の果実を巡っていた時のことだった。
何かが俺のカバンの中で動いた気がした。動くものなんて持っていただろうか?立ち止まって中を見てみる。
「あ~、これか~」
朱雀から受け取った黒い石、守護獣とやらがこの中から出て来るらしい。アイテムボックスに入れたら意味が無さそうだったから肌身離さず持っていられるように久々にカバンを携帯していた。
大きくなったわけでは無いが、かすかに脈動している。とてもでは無いが生き物が生まれてくるようには思えない。卵っぽくも無いゴツゴツとした感じだが、このまま待っていれば良いのだろうか。
しかし卵が割れるような感じで皹が入って、すぐに割れた。生まれた。
「パンダか…」
本当なら生まれてきたときは毛が生えていないのが普通だが、既にキッチリとパンダだと言えるような毛並みが整っている。ただしサイズは手乗りサイズだ。この大きさでどうやって俺を守護してくれるのだろうか。
聞きに行くにしても火山の火口にはデテゴがいるから朱雀が出て来るとは思えない。すぐじゃなくてもいつでも聞きに行けば良いか。自分で納得して手の平に乗せたままでは戦闘もしにくいし帰るかと思ったらまた何か聞こえる。
「…なか…い……」
人の名前か?周囲を見回したところでそんなものは見当たらない。やはり発生源はこれだろうな。手の平に乗っているパンダをじっと見てみる。耳を近づけてようやくはっきり聞こえた。
「おなかすいた…」
「このパンダしゃべるんだ…」
笹なんて持ってないけど何を食べるんだろう。ちょうどいいからここで手に入れた果実でも与えてみるか。
小さい果物ってことで少し小粒のイチゴを一粒出して与えてみる。
鼻をひくひくさせて動いて近づいていく。
お~、食べた。
※実際のパンダは食べません。調べてないけど
食べ終わったらまたプルプル震え出したのでイチゴを与えてみたり、違う果物を小さくカットして与えてみた。しばらくはもそもそ食べる様子を見守った。
お読みいただきありがとうございました。
パンダが好きなんで開き直りました。




