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スペシャルゲストとの雑談と残念な男

お楽しみ頂けると幸いです。

治癒の設定を書きましたが、以前と違っていても許してください。ここは大きな心で1つお願い致します。

さて、ざっと見たところ心が折れていないやつはいない…かな。何かしてくるならそのときに対処することにしようか。

荒れた庭を半分スキップしながら屋敷の入口へと戻って扉を開ける。


「見てもらった感じどうだった?」

「いや、恐れ入ったよ」

「イレブン君が聞いているのはそこじゃないでしょう。きちんと確認しましたよ。僕らが滞在している屋敷に『押し入り強盗をしてきた者』を確認しました。引き渡す前に話しを聞くくらいは良いでしょう。こんな夜更けですし」

「あ~。俺だって分かってるよ、全く…。発言までは聞こえなかったが、多少ムチャな対応は庇ってやれるし冒険者なら俺が直接調べると約束しよう。しっかし、質が悪いな…。弱すぎる」


そこには楔で『空間接続』を繋いだままの状態にしたものをテレビ代わりにしたものを見ていたデテゴとザールさんだった。

どの程度公的権力が絡んできているのか不明だったのでこちらも遠慮なく公的権力を振りかざすことにした。屋敷の中や周囲の庭の至る所に楔を埋め込み、接続して向こう側の光景を見える状態で維持しておいたのを2人に見てもらっていた。

もし、俺よりも強い奴がいたとしたら玄関から入るとも思えないけどデテゴとザールさんの護衛に全てを任すつもりだった。

そう簡単に俺よりも強い奴が出て来られても困るけれど、念には念を入れておかないとね。


「それはそうと、あの火は消さなくていいのか?」

「まだいいんじゃない。生きてるんだからいいでしょ?」

「あれだと生きてるだけになりそうだが…」


どちらかと言えば常識人の中でも良い人寄りのデテゴが目の前の火だるまを見て聞いてくる。


「だってさ、あのパーティのやつら…、えっと、前科として女性に乱暴狼藉をはたらいてるよ。まず、間違いなく」

「そんな奴らだったのか。じゃあいいや。旅している最中の国で聞いた刑罰を教えてやろうか?」

「ぜひ!」


さすがは放棄したとはいえ一国の皇子だっただけある。色々と情報収集はしているそうだ。お互いがお互いの欲しい情報を取りに行くのが癖になっているんだってさ。


「こういった刑罰の中で俺が感心したのは被害者が選ぶということを設定している国があった。弁償で済む問題の場合、金で済ませるか加害者の肉体に罰を科すかを被害者が決めるんだよ。大体が金で済ませることが多いんだが、あまりに被害者の恨みを買った場合は肉体に恨みを刻むことになるし、被害者の数が多い場合は両方になったりする。その中でも今回のやつらの場合だと、切り落とすんだ」


マジメな話だったはずだが、最後に下す罰のおかげで話が一気に下に落ちた。でも非常に納得のいく話だ。


「…ほぅ。一応聞くけど何を?」

「アレだ」

「アレか」

「女性陣がそろそろ来るのでやめておきましょうね」


だったら真面目な話で聞いておきたいこともある。


「それならついでに聞きたいことがあるんだけど」

「何だ?」

「この世界では治癒があるでしょ?いくら罰で与えたとしても欠損の修復が出来る人にお願いしたら意味ないことになるよね?」

「そんなもん、一緒に罪業を刻んでおけば良いだろう?」

「罪業を刻む?」


聞きなれない言葉をオウム返しに聞く。知らないことだったかと説明をしてくれた。詰まるところ簡単に言えば呪魔法の入れ墨を入れるそうだ。

呪魔法の完全な解除を行うためには高レベルの聖魔法が必要なことは俺も経験している。その上で欠損を取り戻すレベルの治癒魔法を使えるものとなると使い手は限られるし、間違っても犯罪者のために何とかしようとする者いない。色んな組織が全力で囲っている。大抵の場合、ほとんど外に出られないほどの守備体勢を敷かれているそうだ。

そこまで自分の聖魔法や治癒魔法を習得した者が金を積まれた程度で首を縦に振る者はいないし、まず犯罪者に手を貸すという危ない橋を渡る者はいない。下手に手を貸して国にバレてしまえば身柄を抑えられ、組織は国や敵対組織によって解体されるだろう。国に数人いれば良いレベルなのだ。優秀な人材はいくらでも確保したいのが権力者というもの。

しかも消耗も激しいからこっそりと行うことも出来ない。いざ治癒魔法を使ってもらおうとして、立ち上がれないほど消耗していたら周囲にもバレるから術者が勝手に使うことも出来ない。


ふむ。俺も色々とやらかしているからな。俺もバレないように気を付けよう。


「ちなみにくっつけるだけならまだ何とかなる。今回のお前がやったみたいにぐしゃっと潰した場合は、そのあとの処置やポーションの出来に依る。何も無いところから元通りにするのはほぼ無理だ」

「今後の参考にしてください。外にいる者たちは自業自得でしょう。ユーフラシアならまだ僕の方で隠蔽できますけど」

「分かりました。じゃあ今度からはそのことを踏まえた上で行動することにします」

「俺も1つ噛んでるんだからな。忘れるなよ」

「うん、ありがとう」


最後のやり取りは聞かれてしまっていたが、内容として治癒魔法の話だと理解してくれたのであまり深くまで聞かれることは無かった。


「何の話をしてたの?」


リセルが話しかけてきた。ん?


「デテゴにちょっと気になることがあったから話を聞いていたんだ。いや~、俺もやっぱりまだまだだな。知らないことが多かったよ」

「敬ってくれても良いんだぞ」

「言い方は何かちょっとイヤだけど、素直にお礼は言っておくよ。ありがとう」


頭を下げてから顔を上げると変な顔をされる。


「デテゴ、その顔は何だ」

「いや、思ったよりも素直だったからちょっと変な感じがして」

「せっかく素直にお礼言ったのに!」


ふざけ半分でデテゴと話しながらチラッとリセルを見たら少しだけホッとしたような顔をしていた。あとで話す時間を取った方が良さそうかな。デテゴにこっそりと告げておく。


「サンキュ」

「なんだそりゃ」

「あ~、ありがとうって意味だよ」

「響きは良いな。俺も使おう。嬢ちゃんの様子は変だからな、見てやれよ」

「当たり前だ」


最終的に使用人の方々も部屋から出て来てしまった。何が起こるかを伝えていたら誰かの部屋にまとまっていたそうだ。主に俺が出した戦闘音で打とうとしてた幼い子まで起こしてしまったそうだ。それは誠に申し訳ない。

使用人や仲間全員の安全を確認をした後で後片付けを引き続き有志で行うことになった。使用人の方々には屋敷の内側を、毎果の部隊が手伝ってくれるそうなので見逃しも無いだろう。


俺は主に治癒と牢への運搬を行う。リセルは土精霊で穴を塞ぐ。とりあえずは屋敷の敷地の分だけだ。残りはどこから続いているのかを確認が必要なので俺とデテゴで後日行う。

トワは寝かせたいとのことだったのでコトシュさんにはついて行ってもらい、ロイーグさんも力仕事は向いてないので屋敷の中に行ってもらった。


俺の分担は糸太郎や薙刀の部隊が手伝ってくれたのでほぼ治癒だけで済んだ。とは言っても継続ダメージになりそうな出血を止めただけだ。切り傷は残っているし、欠損はそのままだし、骨が折れたものも放置している。

以前だったら治癒していたが、今回の場合は完全に敵対していたこともあって治す気にならない。うめき声をあげながら運ばれて行く元冒険者を見送った。


「リセルのところに行こ」


屋敷の中庭に穴が開けられている、というかそこに開けるように誘導していたから場所は分かっている。リセルはその穴の近くにいた。


「お~い、どうした」

「イレブン…」


完全に何かあったことが分かると共に隠さずに見せてくれたことを嬉しく思う。だって弱音って受け止めてくれると思うから言えるものだろう。隠されなかったということが嬉しいんだよ。


「聞くから言ってみ」

「眠くないの?」

「気になって寝れないから。言ってくれ」

「うん、あのね…」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「仲間を囮にして戦闘ね」

「私がやってるみたいに敵を引き付けている間に仲間が攻撃するとかじゃなくて、見捨てるって感じだったんだ…。なんか悲しくて…」

「なるほどな~」


しかし、困った。状況を見ていないので何とも言えないが、タンクみたいなもんじゃないのかって切り口は先に封じられてしまった。何て言えばいいかなぁ。えぇい、行き当たりばったりだ!


「俺のところの奴はさ、思いっきり手加減してたら武闘家がそこそこがんばってくれてさ。気功闘術ってのを使ってる奴がいた。動き自体は変だったけど体の動かし方は参考になった。さっき確認したら上級戦闘スキルのところに追加されてたから早速使えるようにしておいた」

「イレブンらしいね」


よし、ちょっと笑った。


「学ぶってのは色々あるってことだよ。ハッキリ言って俺が相手した奴らも真似したくもないところの方が多かったよ。だけどスキルに罪は無いからな。その技術、スキルをどう使うかってだけだよ。たぶんな」

「私の相手はそんなところ無かったかな」


今日で確信できたことだけど、勝手に増える以外にリストに無いスキルでも俺は見たら使うことが出来るようになるみたいだ。それだけ珍しいスキルってことだけど。

リセルは見ただけで使えるようになるわけじゃないし、攻撃に使うようなスキルは覚えられないものが多いからな。


「じゃあ気功闘術が使えるか教えてみるから試してみるか?」

「それはまた今度で良いよ」

「分かった。まあ何が言いたいかっつーとだな」


俺も何が言いたいかまとまってないんだけど。と、思っていたらリセルが手を俺の方に向けて止められる。


「どう使うかが大事…ってところで分かった気がする。今まで私の周りには獣人としての技術や生き方を全力で教えてくれてた。ほとんどみんな同じことを言ってくれてたから迷わずに済んだんだ。ユーフラシアで出会った人たちも色々あったけど、善人だったから受け入れられた」

「あ~、人攫いはいただろうけど、直接出会って話を続けるほどは近くにはいなかったもんな」

「そう。だから考え方が根本から理解できない人と話をするなんて無かったからどうすればいいか分からなかったのかもしれない」

「人間の扱いは厄介だとは思うよ。慣れてくれって言うと投げやりな言い方かもしれないけどさ」

「話だけは聞いてたけどね。受け入れられないって拒否するんじゃなくて、いいなって思うところを受け入れることにするよ」

「少しは区切りが付いたみたいで良かったよ」

「話を聞いてくれてありがとね」


うん。いつものリセルに戻って良かった。悩みがスッキリしたおかげか、いつもよりも笑顔も良い感じだ。照れくさくて少し目線を外す。

そういえば今は何時くらいかな。時計を作っていれば少し話題になっただろうにな。


…時間か。あぁ、そういう解釈もあるのか。なるほど。


「まあ気にしないでくれよ。そういえばさ、状況によっては囮は有りってのを思い出したよ」

「え?」


いつの間にか目の前に近づいていたリセルの表情が固まる。ちょっと近かったので、話すついでに少し離れる。


「援軍を呼びに行くときの時間稼ぎだな。その場合当然足止めに残った方は命の危機だけど、どうしようもない状況ってのはあるからな。俺たちの周りで起こらないようにはしたいもんだけど、そういうこともあるってことさ。あれ?リセル?」


笑顔ではなく、どちらかと言うと膨れた顔になったリセルがいる。なんで?

よく考えたら割とあるシチュエーションだぞ?


「なんでもないよ。土ちゃんも終わったし、もう今日は疲れたし寝るね」

「お、おぅ」


スタスタと歩いて行ってしまった。あれ~?

「イレブンのアホ」という呟きがあったとかなかったとか

お読みいただきありがとうございました。

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