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表門と周囲の攻防

毎日思うことですが、ブクマ・評価・いいねはいつも感謝しております。最近お伝えしていなかったので遅くなって申し訳ないです。うっとうしいでしょうからしませんけども。でも、毎回お伝えしても良いくらい感謝しております!

それでは今日もお楽しみ頂けると幸いです。

「う…、わああぁぁぁぁああ!!」


逃げるなって警告したのに大声をあげて逃げる奴が1人、そして1人出ると怖気づいたやつからそれに続くことになる。犯罪だと分かって参加したんだから返り討ちにされたくらいで逃げないでほしい。

むしろ死を覚悟して向かってくる奴らを見習ってほしい。それぞれ武器を抜いて仕掛けてくる奴、後ろからその援護に攻撃魔法やら援護魔法をかけている奴もいる。向かってくるやつは既に1つのパーティのように固まっている。

同じパーティに所属してるってわけでもないはずだ。だってダンジョンでもないのに1つのパーティに13人とか人数多すぎるし、適正人数は多くても6~7人くらいじゃなかったかな。

お互いの得意も不得意も知っている間柄か、あまり乗り気じゃない表情から従わざるを得なかったんだろうね。今日の襲撃に参加しなければ良かったのに。


自然体に構えている状態から両手を彼らに向けると緊張感が走る。


「証言する人は多い方が良い。俺が逃げるなって言ったから留まってるのか、本当に戦うのかは後で聞くよ」


ひとまずは、それでも逃げる奴を撃つ。壁を飛び越えようとしていたり、俺の氷壁を融かそう(無駄だよ)としている奴らを後ろから『雷矢』を膝裏に打ち込む。


「ぎゃあ!」

「痛い!痛い~~~!」


悲鳴をあげたものから順に『土塊』を投げて頭にまとわりつかせる。水だと苦しいけど土だったら頭にぶつかった時点で気絶するのが半分ほど。大体頭全部を防御していない装備の後衛は貧弱だからこれでいける。呼吸できるようにするのはこっそりとステルスが得意なフレンドビーたちがやってくれる。


「はっ……」

「ガッ……」


残り半分は簡単に取れるものでもないから取ろうと暴れるんだけど、そう簡単には取れない。必死に首元をかき分けようとするんだけど俺が土魔法でも念動魔法でも抑え込んでいるから取れるわけが無い。

やがて呼吸が出来なくなって何とか動いていたのが、パタンパタンと倒れてピクリとも動かなくなる。ポイントは動けなくなるまでに時間を少し取ることだ。犯罪に加担したことを後悔しながら倒れ込ませたいんだよね。あとは以下同文。


そうなるとどういうつもりで戦う準備をしていたのか分からないけど残っている奴らも顔色は悪くなる。


「自分たちがどういった経緯でここを襲うことになったのか正直に話すなら拘束するだけで済ませてあげるよ。イヤなら同じ目に合ってもらうけど、どうする?」

「し、仕方なかったんだ!」

「何が?」

「冒険者としての評価や活動に関してを盾にされたら従うしかなかった!」

「そ、そうなんだ!だから」


一人が証言を始めると周りも同調して同じことを告げてくる。


「仕方なかったら1つの屋敷を襲撃して良いんだ?」


元から罪悪感があったからだろう。一言でグッと黙り込む。


「俺がここで抵抗しなかったら何してたんだよ。この屋敷の人たちの命や将来はあんたたちの冒険者資格より価値が無いとでも?」

「そうだ!やらなきゃ俺たちはどっちみち終わりだぞ!」

「どうせ子ども1人だ!俺たちより等級だって低いはず!だったら――――」


剣士の1人が叫び出した。もう1人同調する。血迷った判断だと言わざるを得ない。


「『風刃』」


手刀をその場で振って剣を持っていた方の腕の途中から先を切り落とす。もう1人は両手で槍を持っていたので両手だ。


「外見とか肩書とか後から追いついてくるものだから強さとは直接関係ないと思うんだ。あんたたちよりも強いってだけで抑止力としては十分でしょ。はやくしないと失血死で死ぬよ。それくらいは動いていいよ」


慌てて動いた治療できる魔法使いやポーション持ちが手当を開始する。省略しているけど2人とも気を失ったわけでは無いから結構な叫び声をあげている。うるさいったら無いや。

抵抗する気を無くしたんなら、きちんと拘束しておこうかな。


「あっちを相手したらかな。手が空いている人で壁まで下がっててくれる。顔面に土が纏わりついている人も死なせたくない人は回収しといてね」


どういうことだと言わんばかりの表情を浮かべていたが、俺が氷壁で閉ざした門の方から視線を切らなかったためそちらを見て気が付く。


「しまった!『夜更けの酒盛り』が来た!逃げろ!」

「やつらは加減を知らないぞ!お前も終わりだからな!強さだけなら金級冒険者だからな!ざまぁ見やがれ!!」


何となく作戦らしきものは理解する。今までの奴らは先走りこそしたものの見張りで、今から来る夜更けの酒盛りとやらが表立って襲撃者らしい。暴れ方がひどいとかなのかな。一目散に逃げたのは俺の忠告というよりも、彼らの攻撃に巻き込まれるという危機感の方が大きそうだ。まあ命の危機がまた新しく登場したらそうなるか。最初の命の危機を感じさせた俺が言うことじゃないけど。


一拍置いて氷壁が爆発と共に消え去る。そこそこ威力のある魔法だ。住宅地で使って良い種類でも威力でも無い。


「妙な子どもがいるようだな」

「しかもなんで先に戦闘が始まってんだ」

「後で話を聞けば分かるでしょ。とりあえずは仕事しようよ」


こちらも男3人が登場する。装備しているものから判断すると力押しタイプの斧槍使い、手から肘までそれから脛当てが棘付きだらけの装備をしている恐らくは武闘家、それから他よりも身軽な格好だが短い杖から考えて魔法使いが入ってくる。

先程まで相手していた冒険者くらいならそれぞれが1人手殲滅できるくらいの強さだろう。それを証拠に俺と彼らの間で出来る限り仲間の回収作業をしている者たちを一度も見ようとしない。


「見た感じ魔法も使うけどそこそこ近接も出来る感じのようだな?」

「ここでもたついてる場合じゃないだろ。俺たちも早く行かないと楽しめないぞ」

「ってわけだ。ここでお別れだな」


魔法使いが少しの溜めの後に魔法を放つ。


「フレイムピラァ!!」


足元が赤く光ったと思ったら炎が巻き起こり3人分の高さまで炎の柱が発生し、心もとない光しかなかった夜を明るく照らした。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


【ロイーグ視点】


「表の方が何か騒がしいな~」


表側は出たところのスペースも大きく取ってあるためにそちらから挑んでくるものが多いだろうと予測した。陽動の可能性も十分あるが、人数が多いなら自分が行くとイレブンが主張したから任せることになった。

そして俺は今屋敷の裏口の門が見える位置に控えている。


とは言っても俺がすることは後片付けだけだ。彼が動く邪魔をするといけないという理由で離れたところにいる。というかここで待っていれば勝手にほとんどやってくれる。誰に似たのか働き者である。おそらく今日の騒動の中では一番俺が安全だろう。最初がどうだったのかは知らないが、俺が知る限り一番穏やかな性質だ。性別が同じってところがまた良い。


軍にいたことは9割5分以上が男で、女性上司だと聞いた時は喜んだけれどとんでもない人と分かったときには落ち込んだ。何がどうなって今の状況になったのかは思い出すのに苦労するが、今の方が刺激もあればやりたいことがやれる。唯一の不満が女性が多いことで多数決で大体負けることだ。イレブンはそのことに関しては特に何も言わない。


「女性に逆らって良いことは無い」


男尊女卑社会で生きてきた俺にとってはあまり馴染みの無い感覚だが、イレブンは本気で言っている。リセルちゃんやあの蜂の嬢ちゃんたちを見ていると間違いないと思ってしまう。それでも不満に耐えきれないのかと言うとそういう訳ではない。まあ以前よりもよく笑うようになったことがその答えだろう。そして何よりも最近仲良くなった相棒がまたスゴイ。誰かって?


糸太郎だ。


元は結構な強さの蜘蛛の魔物らしいんだが、イレブンがテイムしたことでデフォルメされたらしく見かけを分類するならかわいい方に入るだろう。別に愛でる趣味は無いが、撫で心地が良いと何だ、こう…、うん、和むんだよ。


ただ森の中での戦闘を見たときは恐怖を覚えちまったね。相当な高レベルでないと戦えないというのがよく分かった。糸太郎は足一本を動かしただけだ。スパンと木の数本と一緒に突進してきた牛の魔物を縦に裂いちまった。魔物で良かった。死体が残ってたらしばらく肉が食えなかっただろう。

しかも使ったのはあの手触りの良い糸だ。しばらくは触るのが怖かったよ。マルクトに来てから糸に触ってる間に慣れたけどな。


「糸って便利なんですよね。そのまま特徴を付与することも出来るし、織り合わせれば布になる。武器にも防具にもなるんですよ。実のところ、蜘蛛って益虫であることが多い認識なんでね。人気もあると思いますよ」


どこで調べた話だって聞きたかったがイレブンがそんなことを言っていた。まあそれはいい。マルクトに来てから組み分けで俺と過ごすことになったが、お互いあまり街中に出回ることが出来なかったので屋敷の中にいることが多かった。お互いに黙って作業していて苦に思わないしな。


だから今も一緒にいる。姿は見えないけれど。今、糸太郎は仕事の真っ最中だ。


裏側や側面に糸太郎が侵入者用に仕掛けてあった罠に引っかかる奴がいるのだ。確かに仕掛けてあるのは不可視と言ってもいいくらい細い糸だから引っかかるのは仕方ない。哀れな冒険者たちは身動きが取れなくなった状態で糸太郎が近づいて来て更に糸に巻かれるのを待つしかないのだ。そして糸太郎はその冒険者たちを糸でグルグル巻きにしてから俺の前に引きずってくる。


イレブンに言われた通りまず顔面、特に口を塞いでいる。魔法対策だそうだ。無詠唱で出来る奴には意味が無いが、口を塞ぐのは魔法使いに関しては意味のある拘束らしい。それに細い割に蜘蛛の糸は切れもしないしな。特に今日使っている糸は耐火耐斬撃の性質を高めているらしい。糸太郎がイレブンからの合格をもらっていたのだから大丈夫だろう。


注意点として言われていたのは裏からは隠密が得意なやつが来るだろうってことだ。確かに暗い色の服や偽装をした奴が多い。そんな奴が山積みにされている。今積んだ奴で4人目だ。


「あと何人くらいいるんだ?」


あと2人か。最近は文字も覚えてきたようで、簡単な会話が出来るようになってきた。イレブンは字幕だ!とかはしゃいでいたな。


あ~、そうそう。糸太郎とは短い期間だが一緒にいたから分かる。


このグルグル巻きにする作業が楽しくて仕方ないらしい。


……誰に似たんだろうな。


一人しかいねぇか。

お読みいただきありがとうございました。

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