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トワ

お楽しみ頂けると幸いです。

状況はよく分からないけれど、コトシュさんが何とか暴れる女の子を抑えている状態だ。


「魔法使います!『鎮静』」


暴れている相手に使う大人しくさせる魔法だ。傷つけたくない相手に使うけれど、効果のほどは術者と相手次第。もちろん俺が使えば大人しくなってくれる。暴れなくなったことを確認してコトシュさんも拘束を解く。


「危なかった。感謝する」

「これくらいは別に何とも。何があったんです?」

「起きたと思ったら急に混乱したようで襲い掛かってきたのでな。何とか抑えつけていたところだ」


バタバタと音がして集まってくる音がする。


「騒ぎがあったと聞きまして!!大丈夫ですか!」

「ロイーグ、落ち着け。イレブンのおかげで何ともない」

「気が付くの早かったですね」

「あぁ、糸太郎が教えてくれてな」


コトシュさんとロイーグさんの関係を考えて急かしてくれたのだろう。偉いぞとほめるつもりで撫でておく。


ロイーグさんが走って行ったことも含めて使用人さん達が何人か駆けつけてくる。フレンドビーも飛んで来たが、もう何ともないことを伝える。

片付けに入る使用人さん達ともう一度女の子を寝かせに戻るコトシュさん、各所に問題無いと伝えに行くフレンドビーたちと別れて行ってくれた。


今度は目が覚めている状態なので色々と聞くとしよう。そこにリセルも合流した。


「やっぱり気になるからね」

「まあそうだな。とりあえず話は出来るかな。水でも用意してあげて」

「私がやろう」


リセルがやろうとしたところで立候補したのはコトシュさんだ。心なしか楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。ロイーグさんに聞いてみる。


「俺の思い過ごしですかね」

「いや、楽しそうにしているので間違いない。俺も初めて見るが」

「2人とも失礼だな。コトシュさんもお世話好きなんだよ。それも証拠にフレンドビーたちの特訓を一手に引き受けてくれてるでしょ!」


自信満々に言い放つリセルに、顔を見合わせる俺たち。


「それはそうだけど」

「あの訓練と少女のお世話を一緒にしたら」

「フレンドビーたちが泣くぞ」

「かつての同僚たちは精神崩壊を起こすかもしれんな」

「そこまで?」

「体が小さいから相当に手加減してるぞ」

「マジで?」

「マジマジ」


それなら俺も色々と指導してもらおうかな。ステータスを落としまくってそこそこにすれば可能ではなかろうか。


「私の指導は体力向上と何に対して適性があるのかを見抜くものだ。イレブンは既に一定以上の基礎は出来ているし、およそどんなものにも適性がある。私は必要ないな。あるならもっと早い段階で私から勧誘している」

「あ、そうですか」


推測が外れていて残念というか、思考を読まれていたことに驚くというか。おっと、はやく話を聞くぞと急かされている。『鎮静』の威力調整もあるから俺もしっかりと話を聞かなくては。


「まず、先程は手荒に抑えて悪かった。謝罪させてほしい」


相手は特に反応は無い。が、空間ごと把握している俺には抵抗しようと動いていたのをやめたことは分かる。


「状況の説明からさせてもらおう」


コトシュさんはそう言うと俺に視線を移す。最初に捕らえたのは俺だもんね。


「キミがどこまで意識があるのかは知らないけど俺がキミを捕捉したのは、盗賊が馬車を襲っていたところからだ」

「最初っからじゃねぇか!」

「そうだよ、なぁ?」

「ねぇ」


リセルも同じ感じで返してくれるのでロイーグさんは何も言えなくなる。


「いや、別にいい…。黙って聞くよ…」

「じゃあ気を取り直して、その後は冒険者たちを俺がボコったのを見届けた後に一目散にマルクトへと戻っていった。そのときに追跡するフレンドビーたちを放ったんだけど、それには気が付かなかったみたいだね」


少しだけ表情が変わるが、指摘をせずに続ける。ついでに抵抗する素振りが無くなったので俺も全て解除する。


「マルクトに着く前にキミを確保させてもらった。無理矢理奴隷にされているのが分かったから、勝手に解除させてもらったよ」

「ぇ……?」

「紋様が入れられていたのは背中だから自分では見えないだろうし、体の具合が変わったのは俺には分からないけど今のキミは自由になったことは保証するよ。もしこれが嘘だったらこのコワイお姉さんたちに俺はひどい目に遭わされるからね」

「間違いない」

「そうだなぁ。ポーションの実験に付き合ってもらおうかな」

「こっわ…」


一応場を和ませようとしたのだが、ロイーグさんだけが過剰に反応している。嘘じゃないから言える冗談なだけなのに。もしされそうになったら?全力で逃げるね。


「あとは解除の代償か、俺が強引にし過ぎてしまったことが原因なのかわからないけど、キミは昏睡状態が続いていたってことさ。さっきのは起きたら知らないところに知らない人で混乱したのかな?」

「そう…です…」


何とか話を聞く状態になってくれたようだ。まあ女の子は甘いものくれる人を信用するって言うからね。水の中にロイヤルクラスのハチミツを少量混ぜてます!少し元気になったのも関係してるかもね。


「この人はキミをずっと看病してくれた人だから信用してくれて良いよ」

「私はコトシュと言う。しばらく元気になるまで面倒を見させてもらうぞ」

「自己紹介もしてなかったか。ごめんね。俺はイレブンだよ」

「私はリセルって言うの。よろしくね」

「ロイーグだ。こいつは糸太郎。イレブンのテイムした魔物だが、大人しいぞ」

「あとはね、こっちが万花ちゃんで、こっちが毎果ちゃんだよ」

「よろしくお願いいたしますね。万花です」

「毎果と申します。細々としたことであれば供の者にお申し付けください」

「いきなり全員の自己紹介は覚えられないだろうから、気にせず何度でも聞いてね」


こくんと頷いてくれる。まあひとまずの信用はしてもらえたかな。


「そういえば、キミの名前は?」

「なまえ?なまえはない」

「ない?…そうか」


これについてはあまり目覚めた直後に突っ込んでしまってはいけないところみたいだ。コトシュさんを見ると頷いてくれているので、これから世話している間に聞き出すなりしてくれるだろう。

目が覚めたから終わりではない。記憶があるのなら色々と聞きだして、アジトなり相手について聞きだして追い詰める情報を聞きたい。

全部が終わってもついて来てくれるとか協力しても良いとなれば、コトシュさんやフレンドビーたちに技術を教えてもらえれば嬉しいというところかな。

俺も少し技術を学ばせてもらいたい。該当の技術があれば良いけど、無ければ練習が必要かな。


余計なことを考えていると俺に向けて腕が挙げられていたので、慌ててそっと下から支える。


「からだが、らくだし、へんなこえもきこえない。だからしんじる」

「そうか。何かしらの干渉は受けていたってことだね。じゃあ体力が戻るまで安静にしておいてね」

「元気になるまで私が見よう。何、教えを請う者が代償を払うのは当然だ」

「コトシュさん、そのあたりはまた今度にしましょう」

「そうか」

「じゃあレイたちに言って、お食事はこっちに運んでもらうね」

「頼んだ。万花と毎果も行くか?」

「はい」

「失礼致します」


そう言ってリセル組が部屋を後にする。俺も行きますね、と言ってロイーグさんたちも部屋から退出するので一緒に出る。


「とりあえずこれで一安心ですね」

「あとはコトシュさんが何とかしてくれるだろう。いきなり外に連れ出す可能性はあるけどな」

「病み上がりみたいなもんですよ?」

「お前はコトシュさんをまだ把握しきれてないな。明日の朝にはさっきの嬢ちゃんは元気に歩いてるぞ」

「まっさか~」


少し茶化す感じで答えたが、ロイーグさんは至って真面目な表情のままだった。


「え?本当に?」


何も言わずに作業の続きに移るからな~と去って行かれてしまった。半分期待、半分信じられないという気持ちで俺も明日からの準備を確認しに、割り当てられた部屋へと戻って準備する。

明日からは翌日からは俺は食材の宝庫では軽く調子を確認して、マルクトに戻ってきたら近くのダンジョンに行って仕入れ作業を行うのだ。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「おはよ~」

「あぁ、おはよう」

「おぅ」

「おはよう」


思わず後ずさりしてしまった。食堂にはコトシュさんとロイーグさんだけでなく女の子が二人の間の席に収まっていた。

ロイーグさんの言った通り、まだしばらく寝ているかと思った女の子がコトシュさんの横に座り、既に朝食を食べだしている。

さすがに食事はおかゆに似たようなものではあったが、顔色が悪いようには見えない。本当に一晩で動き回れるくらいに回復してる。俺の魔法よりもすごくないか?


「秘伝ってやつらしいぞ。俺も知らないし、誰も教わったことは無い。何かされた奴もくわしい記憶は残っていないそうだ。ただ、コトシュさんに従順な部下が出来上がるんだ」

「そっすか」


考えても意味が分からないので考えるのをやめることにする。理解できない何かが行われていると思えばいい。そもそも魔法だって原理を突き詰めればこの世界の理論はあっても前世界の人間には理解できないものなんだし。

とりあえずは対面に座ると俺の前にも食事が運ばれてきた。座るだけで出してくれるなんてありがたいことだ。既に料理担当のおばちゃんと仲良くなったリセルが作っているのだけれど。


朝食を食べながら聞いた話だと今日から街を色々と見て回るそうだ。昨日の今日で体がどれくらい動くか分からないので情報をもらうのがいつになるかは分からないが、早めに現状の確認をしてくれるそうだ。

コトシュさんはいつも通りだが、女の子は多少変装をすることになる。どこに目があるか分からないから隠せるなら隠さないとね。

まあ黒髪に暗い緑の目をしているのはこの世界では多少目立つ。背格好としてはどこにでもいる女の子と変わらないので特徴さえ消してしまえば大丈夫だろう。


「ってそういえば名前は『トワ』?」

「自己紹介してないのに?」

「あ~、なんとなくね?」


一応誤魔化しておいた。細かいところまで聞かれなくて良かった。正式について来ることになったら教えるんだろうけれど。昨日まで見えていた名前は違うものだったが、今見てみるとトワに変化していたので、つい口に出してしまった。


「前の名前と別れたいとのことだったのでな。好きな数字が100とのことだったのでな。『10』でト、『0』でワ、併せて『トワ』とさせてもらった」

「良い名前ですね。よろしく、トワ」

「よろしく」


満足そうにむふーっとした顔を見せてくれる。今までがどうだったかとかは気にせずに健康に楽しく過ごしてくれたら良いなと思う。


「じゃあ今日もそれぞれの活動をするってことでいきましょう」

「「了解」」

「…りょうかい!」


糸太郎も〇とガッツポーズだ。

お読みいただきありがとうございました。

そういえば、いいねボタンって押されてますか?読む側のときは面白かった時はなるべく押しています。各話で何件頂いたか、合計で何件かって書いている側は見れるんです。書いている側は参考にするポイントの方が多いと思いますので、もし良ければ押してくださいね。


いや、他の話を読まれるときに、ですよ。なぜ書いたかというとたくさん押してくれる方が昨日お読みいただいたようで、一気に増えたからです。ありがとうございます!!

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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