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厄介事は呼ばれなくてもやってくる

お楽しみ頂けると幸いです。


串肉屋のおじさんに教えてもらった通りに色々と見て回った。冒険商店街の武器屋、防具屋、雑貨屋、食料品店など並んでいるところは一通りざっと見て回った。

当然ながら買う物があったとして食料品店くらいなのだが、予想通りほとんどが割高だ。この街で過ごしているなら我慢して買うことになるが、俺たちはそうではない。完全スルーをさせてもらった。


「みんな同じ?」

「そうだな。どの程度協力しているのかは分からないけれどカンジョー商店の傘下ばかりだな」


一部の業界だけを牛耳っているわけでは無く、本気で街全体を支配下に置いているようだ。だとするとまだ価格は良心的と言えるのだろうか。暮らしていけないことも無い。まあそれで泣きを見ている人が実際いるわけだし、価格よりも高め設定にしていることの理由を聞かなければ納得がいかない。むしろ勝手に世界共通になっているはずの価格を上げるとか本気で出来たのかとツッコミたい。


マルクトには希少なアイテムを買うことのできる裏市場があるが、そこでなら売る時も希少品なら少し高めに引き取ってくれる。あくまで希少品だけだ。序盤に大きな拠点となる街だけに割高だが性能の良い装備品を買うか、通常品でいくかが分かれ目になるところだ。レアドロップが多めに手に入れば買える。1周目なら悩むところだが、2周目以降に関しては言及するところでは無いな。


まあそういう訳だから通常品の価格が上がっているだけで俺としては非常に違和感がある。念のため、マルクトに暮らす一般住民用の店の方も見てみたが同じだった。価格が少し割高だ。これはユーフラシアと比較した結果だ。


「値段が少しずつ高いのは地域によって無くもない」

「ここしか知らなければ『そういうもの』だと思っちゃうよね」

「全体的に問題があるってことは元の卸値が高いか、仲介している元締めが高いかのどちらか、もしくは両方だな」

「どうやって調べるの?」

「とりあえず冒険者組合かな。多少の仕入れはあそこだし。仲介はカンジョー商会だろ?忍び込んでも良いけど、そこまでする前には決着を付けたいかな」


そんなこんなで一応冒険者組合に顔を出してみた。本当ならユーフラシアから違反の冒険者についての対応が決まってから顔を出したかった。同じ組織とはいえもめている最中に当事者が飛び込むのはいらない火種になりそうだからね。用件をさっさと終わらせてしまおう。


ユーフラシアからの移動中で狩ったという申告で納品してみた。実際にフレンドビーたちが狩ってきてくれたものだし、嘘は言っていない。俺の戦力の一部だからね。受け取った報酬金額はユーフラシアよりも少し高いくらいだ。

ついでに貼り出してある依頼書の金額を見てみるとこれも同じく少し高めに設定してあるくらいだった。高いと言っても販売品に比べれば少ない。よって少し節約するか、収入を増やすべくがんばれば同じような暮らしをすることは出来る。


「ふ~む」

「よく分からないね」

「だな。すぐに分かるものでもないし、一旦帰るか」

「そうだね」


貼り出してある依頼書を見て確定的なことが何も言えなかったので、振り返ったときだった。新たに組合の入り口に入ってきた人相の悪い3人の男たちがこちらを見ていた。あぁ、俺は見えてないみたいだからリセルの方だな。依頼終了後かどうかは知らない。

どういう目で見ているかというのは今更説明する必要もないものだった。まだ方針を決めていないから今はあまり目立ちたくないのだけども。明らかに寄って来ながら声をかけてきた。


「お~い、そこの姉ちゃん。新顔か。先輩にあいさつしてもらおうか」

「俺たちのこなしてきた依頼の話を聞かせてやるよ。これからの経験になるぜ」

「俺たちを気に入ってしまうかもしれないけどな」


なんでこういうのが一定数いるんだろうか。組合もこんなやつらを野放しにするなよ。銀級以上なら問題だろ。人手不足なのかと嘆きたくなる。前に出て拒否しようとしたときに別に立ち上がってこちらに近づいてくる人を察知する。


「待ちたまえ。下卑た目で彼女を見ることはぼくが許さない」

「あ~?うっ、ズワンかよ」

「おい、相手が悪い、ずらかるぞ。報酬が飛んじまう」

「ちっ!いい女なのによ」


一声で追い払ってしまった。ここで長く活躍している冒険者なのかな。一応お世話になったんだから挨拶だけはしておこうかと思ったんだが、やめておくことにした。


「すいません。マルクトの冒険者を代表して謝罪いたします」

「いいよ、別に。あんな人たち何でもないから」

「いえ、一瞬でも不快な思いをさせてしまったことが悔やまれます。申し訳ない」

「あ~、うん」


ズワンとやらも同じ穴のムジナだった。彼とリセルの間に俺も立っているのだが、明らかにリセルしか見ていない。こうなるともう先程の3人とグルで、引き立て役として雇っていたのではないかと思えてしまう。

相手から見えない位置でリセルが背中を突いてくるので、早くここは去らせてもらうことにしよう。


「まだこの街に来たばかりで「キミとは話していないだろう」」


おっと、表情は変わらないまま思いっきり話を遮られてしまった。


「子どもには分からないだろうけれど、今は彼女はこのぼくと話をしているんだ。黙っていてくれないか」


ようやく見てきたと思ったらリセルに向けていた顔とは違う顔だ。リセルからも見えてると思うんだが、そこは隠した方が良いんじゃないかな。というか話し方から自信過剰のようだ。う~ん、どうしようかな。

既に周囲からは好奇の目を寄せられている。気の早いものだと賭けに入ろうとしている者もいる。ほとんどが相手方に賭けているので、そこそこ強いか有名な奴らしい。ハッキリ言うしかないと思ったのだろうリセルが毅然とした声で告げる。


「あなたと話すことは何も無いので失礼します。イレブン、行こう」


リセルが腕を掴んで出て行こうとすると進む先に腕が伸びてくる。触られる前に俺たちは2人とも後ろへ下がったため男の手は空を切る。触れるつもりだったのらしく、避けられたことに意外そうな顔を見せた。少し、笑える。

それでも諦めるつもりは無いらしく、しつこくリセルに笑顔を向けると再度話しかけるのをやめない。


「せめてものお近づきに食事でもいかがですか?」

「結構です」

「女性をいきなり誘うのは失礼でしたね。まずは名乗らせていただ「けっ・こ・う・で・す」」


俺が遮られたのと同じようにやり返してるわ。まあわざわざ相手したい感じでも無いもんね。風貌としてはどこか良いところのお坊ちゃんが才能もあったからか冒険者をやってますって感じだ。まだ若いこともあってか顔も並み以上だし実力もそこそこだ。

でもフレンドビーたちの新兵ならともかく、進化した個体が3匹いれば無傷で勝てるかな。やり方では1匹で十分だろう。そんなわけで俺たちの相手にはならないし、よほど欲しい情報を持っていない限りは相手をする必要性を感じない。


ただ単に今はまだ目立ちたくない。なるべくなら穏便に済ませたいのだ。リセルがこれだけ拒否を示したのならもう脈無しだと判断できるだろう。


「すいません。急いでいるので失礼しますね」

「待て。いつまでも彼女に甘えるのはよしたまえ。そこのキミでは彼女にふさわしくないと言いたいんだよ。彼女をかけて決闘してもらおうか」


左手に着けていた手袋を外して俺に向けて投げてきた。急に矛先が俺に向いた理由がよく分からない。甘えるって何?





俺とリセルで同じ方向に移動して避けたため、誰にも当たらずに床に落ちる。ポトって音が響いたよ。ついでに建物内に静寂も落ちる。


「当たったら決闘の合図ですよね?当たってないからもういいですよね。失礼します」

「ブフゥ!」

「ばか!黙れ!」


遠くからこらえきれずに吹き出した笑い声が聞こえた。かみ殺しているし、目の前の男がそちらに殺気すらこもった視線を向けると静かになった。それなら最初から笑うなと言いたい。

でも、今のでこいつは周囲からも認められるくらいの存在だということが分かった。これがトップクラス?デテゴなら片腕で終わらしそうなんだけど?サティさんも秒殺だな。二人の違いはパワーファイターかスピード重視かの違いです。


「逃がすわけが無いだろう。ついて来い」


建物の入り口を仲間か手下かが両脇を挟んでいる。外からは見えないけど塞がれている形だ。あ~面倒なことに巻き込まれてしまった~…。

ズワンとやらは受付の人が話しかけているのを無視してドンドンと先へ進んでいく。進む先には広場でもあるらしい。ギルド内研修やら訓練に使われるところだな。このまま無視しても良いんだけど、侮られたままなのも嫌かな。


「どうする?」

「『手加減』全開で何とかするよ」

「最上級ポーションは準備しておくよ。死なない限りは大丈夫。イレブンも治癒魔法の準備しておいてね」

「あぁ。一段階上の生命魔法を使うつもりにしておくよ。精霊たちにも仲介の準備をお願いしておいてくれ」

「オッケー」


それくらいしないといけないくらいの実力の差があるんだよ。誰か気づいて。止めてくれ。

お読みいただきありがとうございました。

もし、面白いと思っていただければ、評価、ブクマ、いいね、など何でもお願い致します。

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