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協力を取り付けた後に驚異の紋様

お楽しみ頂けると幸いです。

「まあそういう訳で考えてもらえませんか」

「事情は分かりました。ですが、相手や状況も見ずに良い返事は出来ませんね」

「当然です。しばらくは同行するつもりなのでいつでも連れてくることは出来ますけど」

「ふむ」


しばらくザールさんは目を閉じて考え込む。


デテゴと一緒にメディさんとザールさんの家に着くと、デテゴの晩ご飯だけを残してお馴染みの3人が待っていた。組合から連絡が伝わっていたので待ってくれていた。

家といっても場所は元のメディさんの店だ。売るのはザールさんの店で行うことになり、こちらは完全に工房兼住居として使うことにしたそうだ。店のスペースは改築して生活スペース部分を増やすそうだ。

実力があっても急に台頭してきたザールさんをやっかむ者が出てもおかしくないためサティさんはそのまま継続で雇われている。

加えて変化があるとするとザールさんの店の従業員として2人とも組み込まれているので、デテゴだけが浮いている感じだ。冒険者組合との繋がりを考えると今のままが良いそうだけど。

そんなわけで奇妙な同居生活になりかけているそうだ。場合によっては周囲の家を買い上げて敷地を広げるなんてことも考えているらしい。金持ちコワイ。


その話は置いておいて。デテゴの遅くなった食事を横に事情と状況を全て説明した。その上でザールさんの判断を待っている。商売のタイミングなんてものがあるかもしれないし。

待つこと1分で、そうしますかと言って目を開いた。


「とりあえずは今の情報だけで打てる手を打っていくことにしましょう。それと顔合わせのタイミングですが、マルクトの掃除が終わってからにしましょう」

「遠回しに俺がしっかりとやらかしてからって言ってません?」

「自覚があるのなら影響を抑えるように」


デテゴだけならまだ笑って済ませるけれど、損得勘定に厳しい商人からも言われると自分の迷惑加減がすごいのだと分かるな。


「良い意味でも悪い意味でも振り回してますけど、基本的に得をしているので構わないですよ」

「フォローありがとうございます」


メディさん、このタイミングでのホットミルクは体に染みます。本当なら酒を飲んでやろうかという気分ですが。


「まあ今回の場合は相手側の方が問題ですから構わないでしょう。以前からマルクトの方は進出を考えようにも新規が難しかったですからね。最初から何度も振り回されるよりも結論が出たところで動く方が楽だと判断します。僕個人としてはまだ話を持って来られただけで関係者では無いですからね」

「……知らないふりも出来るってことですね」

「その通りです。どちらかと言うと『今から復興を始めるか』という段階で介入する方が楽ですからね。その算段だけはつけておきます」


変に顔合わせをして難癖を付けられるのは嫌ということか。ザールさんのところの人手や資金や商品で一気に押し返すとか出来たら楽だったのにな。だが、俺の顔には考えていたことが出ていたらしい。


「イレブン君なら現地を見ればいくらでも逆転の手を思いつくことが出来るのでは?僕たちでは考えつかないようなアイディアもまだたくさん持っているでしょう」


少々当てが外れたと考えていたことを見破られていたらしいザールさんは苦笑気味だ。


「あ、はは。見てからでないと判断つかないですけど。何かは浮かんでくるとは思います」

「お店だけ買い取ってもそのレイさんとやらのためにもなりません。好循環を作り出すことの楽しさを味わってもらいたいですからね」


確かにレイさんは妨害をされすぎたせいで、バッキバキに心が折れて諦めた上での判断だったように思う。ザールさんが引き継げば従業員は店が存続するので何とかなるだろうけど。

そのときにレイさんはどうするだろうか。街を出て行く?ひっそりと暮らす?あんまり良い方向には行かない気がする。


「では、役に立つかは分かりませんが知識だけは渡しておきましょう。マルクトは今は商業の街と言われていますが――」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「ありがとうございました。では、色々と相談してまたタイミングを見て相談しに来させてもらいます」

「礼を言われるほどのことではありませんよ。僕としても苦労せずにチャンスを掴むことになりそうなので。口だけならいくらでも」

「そうだぞ、お前。もう少し色々と要求しても構わないぞ。こいつも相当やり手なんだから、今から介入したところでうまくやるぞ。それにイレブンの成果を横取りしているようにも見えかねないしな」


デテゴが食後のお茶を飲みながら話しかけてきた。お茶を淹れたのはサティさんだけど緑茶だ。俺もついでにもらったけれど美味しい。練習中だそうだが十分だ。


「ちゃんと考えてますよ。イレブン君のいないところで説明するから黙っていてください」

「後で聞くからな」


たぶんだけど今の一言もザールさんとしては言いたくなかったんだろうな。だけどデテゴが言ってくれたことでこれからの俺の行動も踏まえてのアドバイスだってことも分かったから安心して取り組めそうだ。


「2人ともありがとう。向こうのメンバーと相談してがんばってみるよ」


それぞれに挨拶を済ませて『空間接続』で繋ぐ。四輪の中に出ることになるんだけど中には誰もいない。フレンドビーたちは多少いるけど、どこに行ったんだろう。


「とりあえず戻るよ。じゃあね」


ひょいっと通過すると温かい空間に戻ってきた。いくら住居が最新でも今のこの世界の技術だと家の中でも結構寒い。基準が違い過ぎるからそこまでは言わないけど。

とりあえずみんながどこに行ったのか探してみようかと『探知』を使う前に残っていたフレンドビーたちが外へ出るようにと促してきた。言われるまま外に出てみると驚いた。


全員が一点を見て話し合っていた。俺が出てきたことで視線はこちらへと移ったが、明らかに安堵の息を吐かれている。


「おかえり。戻ってきてくれて良かった」

「ただいま。とりあえず状況だけどういうことか教えてくれる」

「とりあえず見たままだ」

「それだけじゃ分からないから聞いたんですよ」


ロイーグさんが投げやりな返事をしてきたので俺も反論する。コトシュさんに「報告をきちんと行え」と怒られている。


「あの子がね、意識も戻ってないのに急に動き出したんだ。何か良くない感じがしたから動きを止めようとしたら、体が壊れるのも構わずに動こうとしてね。だから物理的に動けなくしたんだよ」


その結果がこれか。糸太郎の粘つきMAXらしき糸でがんじがらめにされて逆さづりにされている。まだ動くことはやめていないのは本当にこの状態になったばかりなのだろう。

万花たちが後方支援のフレンドビーたちがまだ混乱しているのをなんとか収めようとしている。


「とりあえずはあの子が暴れ出した原因を探るところからかな」


原因は『鑑定』で見たから何となく分かっているけど、本人の意識が無いのにこんなことが出来るとは思っていなかった。

彼女のステータスには状態として『呪い(強制隷属)』という文字が入っている。ただでさえ、簡単に済ますつもりが無いところに余計なことをしてくれるものだ。


「分かった。何とかする」


まずは動きを止めよう。念動で物理的に押さえつけて手元まで移動させる。糸太郎に糸を除去するように伝えて取り除かせると、リセル達にバトンタッチだ。


「多分体のどこかに特殊な紋様が刻まれてると思うんだ。探してみてほしい」

「了解」

「ロイーグさん、あっち向きましょう」

「あんな年齢の子どもの裸なんぞ見たところで…」


じゃあ一人で女性陣の極寒視線に耐えてくれ。俺は無理だ。女性陣を背中に待っているとロイーグさんがゆっくりと俺の横に移動してきた。びっしりと冷や汗をかいている。無言の圧力に圧されてきたらしい。気合が入ったときはカッコいい大人になるのに、なぜ普段はポンコツなのだろうか。もったいない…。


「あった!背中にあったよ。あ、でもちょっと待って」

「落ち着け~。動きが取れないようにはしてある。振り向いて良くなったら言ってくれ」

「分かった!」

「急ぎましょう!」


4人も女性がいるから、作業の手は足りている。すぐに許可の声をかけられた。

だが、背中を見て驚いた。基本は黒いのだが、なぜか時々揺らめいているように見える。円の中に形容しがたい紋様が刻まれている魔法陣という感じだ。


「うわぁ」


今は命令を果たすためにか魔力の流れが発生しているから分かるが、見た目通りあまり気分も性質も良いものではなさそうだ。見ていると呪魔法から知識が引き出されるような感覚がある。強制的に命令に従わせる、遠隔で操作も可能、対象の意識の有無に関係なく行動も可能。なんと醜悪な…。


「レイさん。奴隷って合法ですか?」

「はい。借金などの理由で働き手としてはありますが、気絶しているのに無理に動かすようなものは見たこともありません。どう見ても…」

「明らかに違法ね。当然残しておけば証拠の1つだけど…」

「アンナさん!?そんなことしたら、この子はずっとこの状態だよ!?」

「分かってるってば」

「リセル!落ち着け。さすがにそんなことしないよ。今後のためにこの紋様だけでも写し取っておこう」


ちょうど魔力が通っていることもあって空中に同じ紋様を浮かび上がらせる。何枚かの紙に印刷しておいて保存だ。その後は呪いの解除といこう。

お読みいただきありがとうございました。

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