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状況を確認しよう

お楽しみ頂けると幸いです。

紅茶のお代わりをもらってしばらく待っていた。たぶん声がかかるまで待機している方が良いと思ったから。ちょっとぼーっとしていたのもあるかもしれない。


「は~い、戻ってきたよ。やっぱりコトシュさんの本気の気迫は単純な力と違った迫力があるよね。まだこっちの人は目を覚ましてないけど連れてきたよ」

「リセル、ごめんな。頭に血がのぼった」

「前後不覚になるほど怒るのに殺さないとか器用だよね。物理的に止められるように私もがんばるよ」

「ごめん…。そうならないように気を付ける…」

「はは。説得力は無いね。がんばって」


厳しい評価だが、言う通りなので全く持って反省するしかない。どうも人の物を奪って罪悪感を感じていないことが分かるとどうも普通ではいられない。力の加減は出来ているけどいつ手元が狂うかは確かに分からない。


「まあ気長にいけばいいんじゃない?イレブンが簡単に踏み外すとは思わないからさ。本当に危なかったら今は精霊さんたちもいるし」


本当に危なかったら精霊の腕輪2つ分の力で無理矢理止めてくれるのは分かってる。


「俺は自分が怖いんだが…」

「まあ今回は出来てたんだしさ。慣れだよ。それよりもお客さんの話を聞こうよ」


リセルの指す先には気丈にも一人で耐えていた人がいる。そうだな。自己反省するのは後にして


「すいません。面倒なところをお見せしました」

「いえ、こちらこそ命が危ないところを助けていただきありがとうございます」


めっちゃ震えながら言われても…。震えさせてる原因は俺か?


「ここまで冷静になればこの人も大丈夫だから。レイも怖がらなくてもいいよ」

「そ、そうかな…うん」


俺が危険人物扱いされてるのかよ。どんな説明したんだ。いや、その前に俺の行動が原因か。とりあえず自己紹介だが、それはリセルが簡単にしてくれていた。じゃあ色々と会話してみよう。


「襲われる原因に心当たりはないですか」

「いうなれば落ち目の商家の残された一人娘なだけですから、馬車だけは立派だったので…。金品を目的に襲われただけだと思います。運が悪かったとしか」


ありそうな理由なのかな。運が悪かったけれど助かっただけ良かったというところか。


「で、これからどうするって話なの?」

「それがひどい話なんだよ!」

「何が?」


リセルがプンプンと音がしそうなほどに怒っている。


「護衛に4人の冒険者がいたのに、盗賊が現れた途端にレイさんたちを置いて逃げたんだって!」

「自分たちが逃げるための囮ってことか?依頼として引き受けたのだとしたら冒険者としてはもう活動出来無さそうだが」

「しっかりとした経歴を持つ冒険者と紹介されていたのですが、御者のパカの悲鳴を聞いた時には既に周囲にはいなかったように思います」


すごく運の悪いお嬢さんだな。幸運が低いというよりは何かマイナス効果の運命を背負っているかのようだ。


「目的地としてはユーフラシアなんだよね?」


そうだよ~とリセルが代わりに答える。ふむ。行くだけなら出来るけれど、どうしようかな。


「何の目的でユーフラシアまで行こうと思ってたんですか?」

「私の商会を買い取っていただこうと思いまして。何かを見出してもらえるなら無償で構わないので、従業員たちの生活だけでも保障してもらいたいんです」

「なんか話が大きくなってきたな」


自分の手が回らない話と思うとどこまで踏み込むか迷う。


「大丈夫だよ。なんだ~ってなるから」

「一通り聞いての判断か?」

「うん」


レイさんとやらの表情を見る限り、まだ不安でいっぱいのようだけど。


「話聞くだけじゃなくてちゃんと安心させてあげてよ」

「何度も同じ話するのは面倒だから一回で済まそうと思ってさ」

「どうせ同行することになるならロイーグさんやコトシュさんにも話をしないといけないだろ。どうせ何度か話をすることになるよ」

「その時は要点だけ話すよ。ほらほら、ちゃんとレイさんの話を聞いてあげて」


話のコシを先に折ったのはリセルのような気がするから、この扱いに不満はある。が、レイさんを放置したままは悪い。


「ごめんなさい。最後まで聞くのでいいですか?」

「はい。相手には私も会ったことは無いのです。アポイントどころか話を聞いてもらえる保障すらありません。ただ、今のマルクトには信用できる商人はいますが、皆もう今にも店を潰されてしまいかねない者たちばかりなのです。だから私が代表していっそのこと…」


店ごと売りにだそうと考えたと。


「商人の町だから縄張り争いもすごいってことですね」


そんな太っ腹なことしそうなユーフラシアの商人ってあの人のことだよな?他にも有力な商人もいるようだし、違うかもしれないか。


「はい。私の力不足で本来は守るべきところをみすみす全てを奪われるような形になってしまいました。父母だけでなく祖父たちにも申し訳ないです…」


マジメな人だな。昔気質というか…。まあ何がどうなろうと頼ろうとしている先が本当にザールさんだったとしたら絶対に勝てないけどね。全てあの人の手の平の上で踊ることになるから。俺も商売で勝負はしたくないな。何かしてやられそうで。


「ですからこの半年足らずでユーフラシア一の商人と言われるほどに成功したザールという方を訪ねようと思って来たのです!会えるかどうかも信じていただけるかも分かりませんが、その覚悟で!でも辿りつくことすら出来ないなんて…」


悔しさと悲しさを併せた表情で涙をこぼしているが、思わずリセルの方を見てしまう。リセルも最初に聞いた時は同じ表情だったんだろう。本当にそうなんかい!としか言えないが。話を聞いて納得の声が出る。


「あ~」

「でしょ?」

「なんだ~ってなったな」


相当の覚悟持って話してくれたレイさんが泣いているのに全く違う雰囲気を出してしまって申し訳ない。少し混乱させてしまった。

怒らないでいてくれるだけレイさんは良い人だな。


「結論を言いますね。俺たちはザールさんの友達なので、余裕で話を通すことが出来ますよ。すぐにでも会わせることが出来ます。アポ不要です」

「…そうなんですか!本当ですか!?」

「はい。証拠と言われると難しいですが、嘘だったら冒険者組合に突き出してくれて構わないです」

「いえ。信用致します。既に命を救っていただいた身です。これ以上何を望むというのでしょうか」


やっぱり良い人だな。だから商売の世界で負けたのかもしれない。自分で言うのもなんだが簡単に他人を信頼してはいけないと思う。

ただ、そこまで追い詰められていたという言い方も出来る。とりあえずはマルクトに知り合いが出来たと思うことにしようかな。


「しかし、こうしてみるとザールさんってやっぱりすごいんだな、他の町にまで名前が売れてるとか。やっぱりあの笑顔が原因かな」

「きっとそうだよ。私、たまにあの笑顔が笑顔に見えないもん」

「だよな~。こうして話したことさえ見抜かれそうだよな~」

「口での戦いには勝てる気しないよ。イレブンとは違うところで先読みするしね」

「えっと…」


レイさんを置いてけぼりにしていたので、友好を深めようとアイテムボックスから色々と女性が好みそうなお菓子を出す。

このタイミングで毎果が新しくお茶を持ってきてくれるのもいつも通りだ。よく分からないまま流されているレイさんも一口含むと驚きと共に勧めるままに受け取ってくれた。


「く…。レ、イ…?」

「アンナ!目が覚めましたか!?」

「おっと、目が覚めたのなら魔法も効果有りだろう。治癒しよう」


レイさん護衛のアンナさんが目を覚ますのとコトシュさんが戻ってくるのがほぼ同じタイミングだった。


「聞き取り終了だ。情報共有はすぐにするか?」

「おつかれさま!みんなで一応休憩してるからコトシュさんもどう?」

「俺も気にしてくれないかな?」

「ロイーグ、拗ねるな」


アンナさんが四輪や蜂娘たちに混乱もしたけど、どうにか落ち着いてもらってとりあえずレイさんの話してくれたことを確認する。

やはり同じような反応を返されたことで、二度目のレイさんは苦笑い、初回のアンナさんは顔が引きつっていた。


「ならばここから先は私が聞き出したことだな」


盗賊から何の情報が出てくるのか分からなかったが、予想外だった。


「やつらは雇われてこの襲撃を行ったと自白した。そこのレイさんが通るから捕らえて好きにしろと言われていたそうだ」


二人の顔色が一気に悪くなる。女性が好きにしろと言われて笑っていられるわけが無い。始末される前に何かされていた可能性がある。実際に盗賊は下品な顔した男たちだったわけだし。

当然の様に報告してきた人も女性なんだけど、この人はまた別枠なんだろうか。


「その雇い主の名前とか何か聞けたんですか?」


俺の問いにコトシュさんは首を横に振る。


「顔も見ていないそうだ。やつらもほぼ脅されたようだな。この辺りを縄張りにしているから使われたようだし」

「ボウカツだ!あの男しかいない!」

「アンナ、落ち着いて」

「レイ!落ち着けるわけが無いだろう!あの男のせいでお前のマークル商会は滅茶苦茶になったんだぞ!」

「待って。レイさんってマークルって名前の人なの?」

お読みいただきありがとうございました。

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