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すごく書きやすかったです。楽しかった~。

お楽しみ頂けると幸いです。

「さあ、少し遅くなってしまいましたが食べてもらいましょうか」

「その前に1ついいか?」

「なぜおにぎりを2更に分けているんだ?あっちの方は何か入れていたようだが」

「それはあとのお楽しみです。とりあえずはある物から食べていきましょうよ」


とりあえずは自分の手について米粒で作った一口サイズから口に放り込む。行儀は悪いが作ったものの特権ってことで。


「いただきます」


もぐもぐもぐ…。あぁ…。


とめどなく溢れてくるこの気持ちを何と表現すれば良いのだろうか。ただの一口だ。噛みしめるほどに溢れてくる甘味に、手に振っていた塩が更に引き立たせる。


「うぅ……」

「どうしたんだ?」

「まさか!?」

「いや、自分で毒を仕込むバカはいないでしょ?なんか色々とイレブンに思うところがあるだけですって。……誰も正気に戻ってくれないよぅ」


リセルが何か言っているようだが、敢えて言おう。


「俺はコメのためなら狂ってもいい」

「本当に迷惑だからやめて!」


なぜか怒られてしまった。何かあったのだろうか。さっきから何か変だ。

すると諦めた表情を見せて、手を合わせる。


「とりあえず私たちも食べましょう」

「ぜひ!ちなみに注意点としてはしっかりと噛みしめるように食べてくれ。すぐに飲み込んでしまうのはお勧めしない」

「なら、言われた通り」

「食べることにしましょう」

「「「いただきます」」」

「あぁ、言うの忘れてた。いただきます」


一口目を含んだ彼女たちを見届けて俺も新しく1つ取り寄せて食べる。うん。うまい。確認してきたことではあるが。けどまだ美味しく出来る気がするな。

こっちの世界で習得した『料理』スキルが何かを囁いて来ている感じだ。炊き立てご飯をそのままアイテムボックスに入れておくことが出来るならいつでも食べられるしそうしようかな。

どういう形で手に入れたんだろう。これから育てていくことが出来るように整えていけばいつでも食べられるかな。

こっちに来てから4~5か月食べられなかっただけなのにここまで懐かしいと思ってしまうなんてな。何か知らないうちに刻まれてしまっていたんだろう。

うっかりこぼれそうになる涙は『ポーカーフェイス』でぐっと飲み込む。なんだか少し恥ずかしい。というか今まで俺何かおかしいことを言っていたような気がする。


1つ目のおにぎりを持って食べていたはずの3人を改めて見ると手には何も持っていなかった。

その代わりにものすごくよく噛んでいらっしゃる。伝えて通りにしてくれるのは嬉しいけれど。ちょっとやりすぎでは?


「あれ?」

「ん?」

「えぇ?」

「あ、もう1つ食べてしまいました?まだあるんで気にせずどうぞ」


1つをすぐに食べてしまったことにそれぞれが驚いてしまっているが、3人の気迫に押されてスッと頭が冷えた気がする。さっきまでの俺ってなんかネジが外れてた気がする。

俺の言葉に従い3人は無言で次に手を出して食べていく。観察しているとまたあっという間に食べきってしまった。少し嫌な予感がする。


「お勧めの食べ方も伝えておきますけど、おにぎりが口に残ってる状態で豚汁も少し飲んでみてください。また違った感じの味わいがありますよ」


言われた通りに全く同じタイミングで動く。リセルは俺と同じように食べるために箸の練習をしていたので箸を使っているが、メディさんとサティさんはスプーンだ。まぁこの件に関しては言いたいことはあるが、見なかったことにしておく。

自分が冷静になると周囲の異常に気が付くのな。さっきまではリセルが何とか場を持たせていたようだが、今度は俺のようだ。


懐かしさに涙が溢れては来るが、ある程度味の予測は付いたからな。でも3人は初めてのものだ。

全くの未知だし、曲がりなりにもスキルレベルはマックスの俺が本気を出したのだ。衝撃が凄まじいのも納得するところだ。

勧めるばかりではなく、俺も豚汁を頂くことにしよう。器を持ち上げるがまず香りがやべぇ。やっぱりなんかあるって。魂のどこかに刻まれてるって!


ズズズズ……。ごくり。


「あぁぁぁ~~~~~。あったか~いぃぃ」


至福。この一言以外不要だ。


相変わらず3人は無言で食べている。多少手の動きが速いのはご愛敬だ。リセルに分があり過ぎるし、そうなるとほぼ一般人のメディさんが不利だが、そのラインは越えないところでやり合っているからまだ平和と言って良いのだろう。

明らかに気に入ってくれているのは言わずとも分かるところなので、このままいくとしよう。止めるための手段もきちんとあるからね。覚悟も出来ているし。


時々様子を見て豚汁のお代わりを言い出すかなぁという頃にはおにぎりの第一陣が終了した。


「結構満足しました?」

「「「………うん」」」


驚愕と感動に包まれた表情をしていたが、最初に我に返ったのはメディさんだった。


「いや、美味かった。おにぎりを作るところから見ていたが、塩くらいしか味付けはしていなかったはずだ。それでここまでの甘味がくるなんて」


元から料理スキルが高いメディさんはシンプルなのに味わい深かったおにぎりに感動してくれているようだ。正直作ったことなんてほとんどないけどね。たぶんおにぎりの達人がいたらこう握るだろうなというイメージの元に身体が勝手に動いたんですけどね。『覚醒』の補正が凄いんですよ。


「おにぎりも美味しかったけど。私は豚汁だよ!具が入っていて食べ応えもあるのに、スープの塩分と旨味が想像をはるかに超えてきた!おにぎりがシンプルだからこそこっちは色々なものが入っているのは分かるけど、バランスがすごい!これは毎日食べたいよ!」


おい、リセル。そのセリフはヤバい。俺も話にしか聞いたことの無いが、めっちゃ心に効く。表情に出すのは恥ずかしく、また『ポーカーフェイス』さんが仕事をする。ナイスだ。


「非常に美味しかったです。ですが、わたくしがどうしても気になってしまうのは別に分けてあったおにぎりなのですが…。あちらは…まさか」


さすが『剣姫』の異名を持つサティさんは視野が広く、また相手の隠し玉は決して忘れないようだ。金級冒険者の力を垣間見た気がする。


とまあ、悪ふざけはここまでにしておこう。


「はい。さすがに3個も4個も食べるとお腹も膨れるでしょう?ですが、おにぎりには無限の可能性がありまして。おにぎりの中に色んな具材を入れることが出来るんです。別々に分けても良いんですけど、中に入れることでいつもと違う味付けだったり中に何が入っているかのわくわく感がたまらないですよ」


あくまで微笑みながらもう1皿を机の上に置く。


「たしかに気が付いてみると気付かないうちに食べすぎている気がするな」

「メディは元から少食ですからね」

「体を動かす系ではないからね。あたしはあくまで薬師だよ」


そう言うと思っていた。


「だから、食が進みやすくなるように工夫をさせてもらいました。そして中に入っているのは『極上素材』を使っています。一口だけでもどうですか?」

「うわ、そう言われると私は食べるよ!」


リセルは極上素材のおいしさを知っているからな。多少無茶をしても食べてくれるだろう。そして、叫ぶがいい!!


「ふわああぁぁ!すっっっ」

「「す??」」


出遅れた2人は固まってしまったリセルを見て顔を見合わせる。味の感想で『す』から始まることってあんまりなさそうだもんね。でもこれはあり得るんです。


「ぱああぁぁぁぁい!!」

「「ぱい?」」

「続けて言うと『す』『ぱい』つまり、酸っぱい。秘密はこれです」


アイテムボックスから取り出して見せる。一応向こうに技術があったのでガラス瓶に詰めたものを見せる。


「梅干しと言います。おにぎりの中に詰めるものの中には定番のものがありますが、現在ある中での一押しはこれですね。梅が極上素材です。ちょっとがんばって作ってみました」


魔法で熟成を促すという裏技をかましているので、なかなかお目にかかることのできない逸品です。こんなに早く使うことになるとは思わなかった。


「すっぱいことがどう関係してくるんだ?」

「俺から説明してもいいですけど、リセルから聞いた方が実感こもって良いと思いますよ」

「リセルちゃんどうなるのですか?」


あまり感じたことの無い酸っぱいという味覚への不安と、抑えきれない味への好奇心で食べてみたい気持ちを抑えられない2人だが、まずはリセルに聞いてみることにしたようだ。

叫んだ後は1つをもぐもぐと口に入れていたリセルは、時々酸っぱい部分を感じ取ったのか表情の変化を見せつつ、飲み込んだ。

どこからともなく、ごくりと喉の鳴る音がする。お腹のなる音も常人には聞こえないレベルで鳴ったかもしれない。しかし俺では無いことから聞こえないふりをする方が賢明である。


「おにぎりが更に甘くなった……」


その一言を聞いて俺の顔を見てくるが、無粋である。


「説明しても良いですけど、まずはどうぞ」


リセルには2個目を、二人には1個目を。俺も久々に食べたい。可能なら海産物が欲しいが無いものねだりをするのはまた今度だ。豚汁があるだけ土下座である。

そしてまた無言の時間だ。ふぅっ!という声がしたり、キュッと目を閉じているところを見たりはした気がするが、俺が言及することではない。


4人で食べるには多い量のおにぎりであり、豚汁ではあった。おにぎりはきれいに無くなり、豚汁は残った分は俺が最後にきれいに頂戴した。

ちなみに具は、豚肉(厳密には違う)、ニンジン、太ネギ、サツマイモを入れていたよ。もっと他にもいれたいものはあったけど時間の制約と手元に無いものは諦めた。

豆腐や油揚げなんかも欲しい。買っても良いけど細かい作り方は知らないからな。魔力でゴリ押せる気もしない。いつか手に入れたいものだ。


「「「「ごちそうさまでした」」」」


食後はフレンドビーが育てた茶葉から作った緑茶を温かいものを注いで、それぞれの前に置いていく。

さすがに女性3人も量が多かったことと美味に顔に至福、簡単に立ち上がれなくなるくらいには満足してくれたようだ。腕を振るった甲斐があるというものだ。

散々作ってもらったお礼として、食後のお茶くらいなんてことはない。


「満足してもらえました?」


コクコクと頷いた後、メディさんが一言呟く。


「レシピとかもらえるか?」

「構いませんよ」

「メディ、ナイスですわ。わたくしもこれは自分で作れるようになりたいです」

「イレブン、私も教えてほしい」

「了解了解」

「ただ…」


メディさんが少し愁いを帯びた顔になっている。気が付いてくれたようだ。


「これ、毎食満足するまで食べたら太るよな…」


ぐるん!という音がする勢いで俺を見つめてくる。うん、言う覚悟は出来てる。


「おにぎりは小さめに作りましたが、それでも同じサイズのパンよりも少し栄養は多めです。割と栄養満点だと思います。思う存分食べると…ね。あはは」


言葉は濁すが、それには聡い女性は何が続くかは分かるだろう。ただ、メディさんの誤算はここにある。


「わたくしは特訓を増やすことにしますわ。ちょうど寒いからと言い訳するのもいけないと思っていましたので」

「私はね~、レベル上がったおかげでたくさん食べても太りにくくなったんだ~…」

「なっ!?あたしだけか!」


インドア派のメディさんは運動の機会が少ないからこういうときに不利だ。

一応リセルは気まずそうに言っている。食べようと思ったらまだまだ食べられるが遠慮しているのだ。彼女自身は実はまだまだいける。俺もだけど。

あとは一応聞いておこう。


「晩ご飯も俺が作りましょうか?」

「「「ぜひお願いします」」」

「お任せください!」


何作ろうかな~~♪

お読みいただきありがとうございました。晩ご飯に何作ったかはダイジェストでいきます。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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