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絡まれたことなんてもうどうでもいい

お楽しみ頂けると幸いです。

「鋼級冒険者のくせに珍しい魔物を捕まえたもんだ」

「俺らがその魔物をもっといいところに連れて行ってやるよ」

「知ってると思うけどよ。先輩の言うことは聞いておくもんだ」

「安心しな。授業料は別にいらねぇからよ」

「職員にこんなことで言ったら迷惑だからな。しばらく静かにするくらいはしてやるからよ」

「うわ~、俺らって親切~」


何が楽しいのか分からないが、汚い笑い声をあげていらっしゃる。笑い声に関しては後ろからも聞こえたので後ろの人たちも隠れるつもりは無いらしい。

というかデテゴのことを見てなかったのだろうか。冒険者ではないのかな?少しくらいは遊んでもいいかな。


「イヤです。大事な仲間なので」


顔色は少し悪く、怯えたように振舞うのが大事。糸太郎は動揺しているよ。俺が何しているのか理解できていなくて。まあ話を合わせてね、と小声で伝えると頷いてくれた。

時間ももったいないのでさっさと始めよう。最初は断られると思っていたようで男たちにはまだ少し余裕がある。


「じゃあ少し話をしようじゃないか。聞いたら魔物を渡そうって気になるからよ。ちょうど昼時だ。飯でも食べながら話そうぜ。な!」

「あんたたち冒険者ですか?そうも見えないんで遠慮します」

「まあまあそう言うなって色々と話を聞くだけで役立つもんだからよ」


肩を組まれそうになったので、避けるついでにそうと分からないように足をかけて転んでもらう。


「うおっ!?」


手を使えるようにしておいたので顔からは落ちずに何とか手を地面について恥ずかしいだけの状況になる。


「ぎゃはは!お前何してんだよ!」

「もうそこまで酒飲んでるのかよ!」

「うるせぇ!なんでもねえよ!」


酔っ払うだけでこういう行動に出るやつがいるとなると困ったもんだね。思ったよりも面倒だしやっぱりやめよう。


「糸太郎、いいよ」

「あぁん――――!?」

「なぁ、もが!?」

「まず、うるさい」


全員の口には糸太郎特製の粘着糸で口を塞いだ。開けていた口も強制的に塞いだようで開かなくなった上に口に付いたベトベトのものが取れなくて驚いている。

間髪入れずに足が強制的に閉じられ逆さづりの状態で吊るされる。大の男が6人ほどが同じ糸に吊るされても切れる様子が無い。何なら少し上に飛んでいった反動が残っている。そのおかげで体が周囲の壁に当たっているが、まだ元気はあるようだ。

壁が破損したところは俺があとで補修しておこう。


「珍しいってことはその魔物が強いかもって可能性を入れておかないと。それに主人が魔物よりも強い可能性もね」


土魔法で塊を12個作って顔面と腹めがけてそれぞれに当てる。普通には出来ることではないからこれである程度の力の差は理解できただろう。

その後は糸太郎が間違って前にいた3人を頭から落としたこともあるけれど、ちゃんと後ろ手に座らせて一塊に縛った。衝撃で気を失ったままの男が一人いるけど死にそうでは無いので放置とする。


「それでさ。もう分かったと思うけど別に全員何とかしてもいいんだ」


腰に提げていた剣を素手で握り潰す。ナイフは本来なら切るはずのところから丸める。


「声を出されても面倒だから頷くだけで答えてね。あんた達初犯?」


縦にも横にも首を振ることが無かったので話が通じなかったようだ。仕方ない。

遮音用の結界と壁面が黒色になっている結界を張った。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「すいませ~ん。デテゴ居ますか?」

「イレブンさん?呼んで来たらいいですか?用件だけでも伝えておきましょうか?」

「ぶっちゃけ誰でも良いんですけど、男性の方が良いですかね。出来れば冒険者上がりの人がいいです」


面倒だけれども冒険者組合まで戻ってきた。こいつらが活動しているとなると申し訳ないが、憲兵はやはり信用できない。

対応してくれた受付嬢さんはよく分かっていない感じだったが、言うとおりにしてくれた。

デテゴがすぐに来てくれてほっとした。


「何かお前やらかしてきただろ」

「俺が原因じゃないから。俺は被害者だ」

「ダメージをくらったように見えないやつが何を言うか」

「まあそうなんだけどさ」


むしろどうやってあいつらから攻撃をくらえば良かったというのなら、どうすれば良かったのか教えてもらいたいくらいだ。


「とりあえずさ。俺だとあんまり上手に聞き出せなかったから代わりに頼みたいんだよね。信用できるのが冒険者組合の人しかいなかったからさ」

「何があった?」

「糸太郎を寄越せって言われたからさ。ケンカを売って来たやつらをボコった」


すっごい面倒そうな顔をしないでくれ。俺だって面倒だとは思っている。

それに分かって送り出したデテゴもほぼ共犯だろう。


「なんで大人しく昼飯を食べることが出来ないんだ、お前は」

「俺だってそう思ってるよ。とりあえず身柄渡してもいい?一応言っておくけど怒らないでね」

「怒られるようなことをしたのなら受け入れろ」


怒られるかもしれないなと思いつつ、組合の横の路地に置いていた塊のところまで連れて行く。

見た瞬間にゲンコツが降ってきたけれど避けることも防御に固めることもなく受け止めた自分を褒めたい。


「痛って~」

「こっちの手が痛いっつ~の。面倒なことしやがって」

「だってこうした方が身元引受人には面倒なことになるだろ?」

「あほ!面倒だったらあっさりとこんな下っ端なんて消されるわ!」

「…なるほど」


社会状況としては向こうの大陸よりもこっちの方が遅れているし命の価値が低いらしい。そうか。ちょっと手間な作業を増やしてしまったらしい。

そうなるとさっきの俺の手間は無駄だったのか。情報を引き出す時の方法についてはもう少し考えた方が良さそうだ。俺の常識が通用しなかった。


「じゃあこれ元に戻した方がいい?」

「……そんなことも出来るようになったのか」

「知り合い価格で安く提供することも出来るよ。公表はしない方向でよろしく」

「とりあえずそうしろ」

「了解。激痛と少々痛いと無痛のどれがいいと思う?」

「任す」

「オッケー」


遮音の結界だけ張った。治療しながら相談だけしておきたい。


「こいつら初犯じゃないみたいなんだ。それすら聞いても教えてくれなくてさ」

「分かった分かった。お前が関わっていることも含めて憲兵に知らせて尻を叩いておく」

「犯罪者が引き寄せられる現状が何かあるんじゃないの?」

「まあ後でザールにでも聞いてくれ。何か良くない感じはある」

「未成年に頼まないでよ」

「こんな芸当を次々に出来るようなやつに年齢はもう関係ないだろ」


指の先にはのたうち回りたくても6人が縛られているので身動きが取れない奴らが大きな口を開けている。目が凄く血走ってるから表情だけで結構コワイ。

声が聞こえないから分からないけれど、思うのはここまでされても口を割らないってどんなボスなのかなってことだね。まあ無事に五体満足に戻るのだから許してもらいたいもんだ。

10分ほどかけて治療は完了。全部がちゃんと繋がって感覚も問題無いことをつねって確認しておく。


「はい。これでいい?」

「ああ。あとはやっておくから大人しくザールのところに行け」

「は~い。物理的な力が必要だったら言ってね~」


さっさと行けとばかりに手で払われてしまった。退散しま~す。

引き渡しは思った通りでは無かったけれど、押し付けることには成功した。テイマーなんてそんなに多い職業ではないと思うのだが、根は深いみたいだな。

珍しければ何でも良いというのなら片付けないといけないのは根本部分が他にもいるってことだな。


「俺にも少し借りがあるって言ってもいいかもしれないな」


歩いていくと何かまた巻き込まれてしまうかと思って空中を移動していく。『空歩』と結界を組み合わせてしまえばこれくらいは何とでもなった。

久しぶりのメディさんの家が見えてきた。空から見たことがあるわけでは無いが、場所は覚えている。


「あ~久しぶりだ」


『探知』を使うと中にいつものようにメディさんもサティさんもいる。リセルも到着していたことを感じ取る。ザールさんはいないようだ。

薬屋の裏手に着地する。さすがに表通りに人が上空から降ってきたら驚かれるからな。裏口から入っても良いけどさすがに親しき中にも礼儀ありだから表に回る。

その途中で気が付いた。このにおいは!?まさか!?


急いで薬屋へと駆け込む!


驚いた顔の2人と俺が近づいていることに感づいていたらしい顔のリセルがいた。


「それって!」

「この反応だとやっぱり当たってたみたいだね」

「いろいろと借りがあるって言ってたからザールも喜びそうだよ」

「挨拶よりも先に心奪われるくらいなんですね」

「ご、ごめんなさい。お久しぶりです!」


でも仕方ないと思わない?香りですら既に懐かしい。その蓋をはやく開けてほしい。その中に白い宝があるんじゃないの!?

お読みいただきありがとうございました。

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