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久々のユーフラシアで

お楽しみ頂けると幸いです。

続いて先に出発のタイミングについて何かを察していた蜂娘たちに改めて伝えておく。


「ここに残りたいってフレンドビーがいたら指示しといてくれる?」

「問題ありません。既に把握しております」

「私の方でも残留を希望するものを聞いてあります!」

「毎果も薙刀も仕事はやいね。希望者いた?」

「多少はいたのですが、ほとんどがついて来ることを希望すると全員ついて来ることになりました」


蜂の中に人間の同調圧力みたいなものがはたらいたのだろうか。万花が大丈夫ですと引き継ぐ。


「残留を希望したのはこちらに来てから生まれたものばかりだったんです。ついて行くには自分たちでは経験不足だと判断してまして。獣人の村と違って交流の無い場所で置き去りにするのも忍びないですから説得してついて来させることにしました」

「そういう理由か。じゃあ今からユーフラシアに行くんだけど、そっちの隠れ家にいる子たちに合流させる?他の生物との交流は少ないかもしれないけど学ぶことは何かあるかもしれないし」

「じゃあ獣人の村の子たちにも聞いて交流してもいいかもね。時々行った感じでは仲良くしてたよ」


思っていたよりも理由が重かったのだが、選択肢を増やせたのは良かったと思う。リセルも時々元村長だからと戻ってたもんな。

こうなると俺無しでも『空間接続』が使えるようにするのは実現しないとな。もう少しだとは思うけどまだ出来てないから。まだいいかと思ってたけど何とかすることにしようかな。


「よし、じゃあユーフラシアに行くからとりあえず連れて行くだけ行ってみよう!」

「引っ越しの手配は最初からついて行くと決めた者たちで行っておきます」

「四輪は置いておくから積み込んでおいて。中は前よりも広くなってるから何でも積み込んでおいていいよ」


『時空間魔法』で捻じ曲げて大きくしてあるからね。無駄に大きくすると操縦席に付くのが大変になるから少しだけだけど。


「少し大変だから気を付けてね」

「イレブン様のなさることにもう驚いていても無駄だと心得ておりますので」

「どういう意味?」

「ちょっとやそっとじゃ驚くだけ損だって意味」


リセルが冷たいし、毎果は変わらず無表情だ。少なくとも褒められていないことだけは分かる。下手に突っ込んで余計に傷つけられてもイヤだからこれ以上の手出しは控えよう。


「じゃあ行こうか…」

「かしこまりました」


万花だけは優しかった。薙刀はそういうところに無頓着だもんな。


まあ隠れ家でフレンドビーたちとは別行動だ。統括のために万花が残り、護衛とこっちの部隊とも久々の交流で薙刀も残留することに。

結局ユーフラシアに行くのは俺とリセルとの2人だった。


「二人で行動するのって久々な気がするね」

「ん、二人?」

「そうだよ。え?糸太郎…」

「こいつの登録をしてなかったから連れてきた…」


ユーフラシアに到着するまで無言で走りました。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「じゃあ別行動でいいよね」

「まあ今更この街で護衛もいらないだろうしな」

「私だって一応レベル81だからね」


極魔石はまだ相当数残ってはいるし、いざとなればいくらでも吸収は出来るが控えていたのでリセルも中途半端なレベルに留めている。

かつてレベルに悩まされていた彼女の姿はどこにもない。こう見えても屈指の強さを持っているぞ。


「色んな意味で気を付けろよ」

「イレブンにだけは言われたくないんだけど?」

「自分でも言うのもなんだがそれは言えてる」

「そうは言ってもまずはメディさんとサティさんに会いたいからそっちから行くよ。ザールさんがいたら伝えておくね」

「頼んだ。俺は冒険者組合から行ってみるから」


お互いに目的地の確認をすると分かれて歩き出す。とは言っても俺の目的地は目の前だが。

それに獣人の村を拠点にしていた時は来ていたし、まるっきり姿を見せなかったのはここ1ヵ月だけだからそこまで久々でもない。

冒険者やっていれば年単位で会わなくても普通だ。俺に移動手段があるだけの話だ。


静かに扉を開けて受付まで行くと見覚えのある受付嬢さんがいた。


「イ、イレブンさんですか?」

「どうも~。またテイムしたので登録しに来ました」

「はい!ただいま!」


かしこまられるほどのことはしていないはずだけど、デテゴがまだなんか吹き込んで回ったのだろうか。デテゴを呼んで来いって声がするからそうっぽい。

なんか獣人の村に行ったあたりからあまり会ってなかったから顔を会わせたとしたらあいつだけは久々な気がする。ザールさんも特に何も言ってなかったしな。

糸太郎の手続きをしながら、他の町にも行ってみようかと思っていることと周辺に地理や評判を聞き、ついでに今はどんな依頼があるのかを見ておく。


「寒くなってくるとあんまり派手な依頼は無いんだなぁ」

「そうなると元気な奴は違う土地に行くし、残っている奴はダラダラするか鍛えるかの二択だ」

「デテゴ!久しぶりだな」

「おぅ!全然会わなかったな!」


ギルド職員として新人を鍛えるようになったからいないのかと思っていたが、寒いにも関わらず上半身タンクトップで汗を光らせているところから自分で言った残っている奴の後者のようだ。

求められたので握手をしたが、握った手を見てそのまま腕を伝って顔をじっと見てくる。いや、俺もそう思うけど。


「お前、なんか弱くなったか?いや強くなった?」

「あ~。いろいろあってね。強くなってるとは思うよ。というか分かるのがすごいね」

「相手の所作から強さやらなんやらを読み取るのは冒険者になる前から仕込まれることだ。命がけでな」


そういや王族だ。やっぱりそういうのって必要なんだな。強さは分かっても腹黒さまでは俺はわからないもんな。

『鑑定』使えば分かるかな。また今度あやしいやつがいたら試しておこうか。


デテゴが効果音が付きそうな勢いで指を突き出してくる。


「その経験から考えても敵う気がしねぇ」

「あはは。でもデテゴも俺の方が強いって言ってたときより、強くなったじゃん」

「生意気な。あわよくば試合でもと思ったがやめておこう。本番までの楽しみにしておけ」

「本番?」


頭をなでてくることには多少の抵抗はしつつ話を聞く。俺が戦うことを公言しているのは1つだけだ。


「デテゴも武闘大会出るの?」

「ギルド職員枠があってな。サティも個人的に出るぞ」

「そうなんだ!じゃあメディさんも一緒に?ってことはザールさんも行くんだね」

「もちろんだ。あいつがメディと一緒に行かないわけが無いだろう。まだ準備する期間はあるから少しの間いなくても店が回るくらいには準備が出来るだろうしな」


他にも顔つなぎやら商売人として販路を広げるのにちょうど良さそうだもんね。何もしなくても向こうから呼ばれる可能性もあるし。

俺が原因の1つでもあるけど、王国内でも勢いのある商人だもんな。販売してるものが今までに無いものだし、裏の権力があるから邪魔もされないし。

こっちの世界に元からいる人で一番のチートだと思う。


「で?何をしに来たんだ?」

「あぁ。俺の生活を邪魔されたくないから優勝するつもりでいるんだけどさ。参加する前に冒険者資格も上げておこうと思って」

「さらっと言いやがって。まあ銅級になれば、ここですぐにでも銀級に推薦くらいはしてくれるだろう。肩書がある方が大会でも下手に手を出してくる奴はいないだろうしな」

「出してくれても良いんだけどね~」

「まあ俺もどっちでもいいけどな。で、どこに行くのがお勧めとか聞きたいのか?」

「まさにそれ!」


似合っているか分からない髭をかきながらそうだなぁと言ってデテゴが悩む。


「一長一短なことだが。味方を増やすという意味ならデカい町の方がいい。それだけ蹴落とす相手が多いが。小さい町だと同じように依頼が少ない可能性があるから行くだけ無駄の可能性がある」

「移動には時間がかからないからどこでも良いんだけどね。それなら大きい町にも行こうかな。そうなるとどこなの?」

「商業の街マルクトだな」

「マルクトか~」


色々とイベントが起こる町だ。交易都市として栄えているし、歴史もある。王都の次に大きい街はどこだとなったときに、ユーフラシアかマルクトのどちらかと言われるくらいだ。

王都に本店を置くかマルクトに本店を置くかを悩む商人もいる割に、露店から店を持って大きくしていくサクセスストーリーもあると聞く。


っていう設定だけどね!

それだけにお金にまつわるサブイベントや何やらは事欠かない。メインストーリーを進めて戻ってきたら何かしらのサブイベントが起こるところだった。

スタッフの中にこの街専属でイベントを考える班があったそうだし、大変な思いをしていたそうだ。さすがにサブイベント全部を覚えていなくてもそれくらいは聞いたことがある。


「知ってるのか?…当たり前か」

「まあどんな街かってくらいはね。まあ行ってみたかったところだし、目的地にしようかな。他にある?」

「まあ飯の美味かった町を教えておこうか。田舎の方だが良いところだったぞ」


そろそろ体が冷えてきたと言いながら上着を着ながら話を教えてもらったところで候補が揃ったので参考にさせてもらう。

話しているうちに他の話にも飛んでいき、そこそこ時間が経過してしまった。昼ご飯の時間が近い。


「もうこんな時間か。一緒に昼ご飯食べる?」

「一人なのか?」

「リセルも来てるよ」

「だったらメディの店に行け。いいものあるぞ。きっとお前が一番喜ぶ」

「俺が?」

「間違いない」


何やら確信があるらしい。俺が食事で喜ぶようになっていった経過は知っている人たちではあるが、そこまでの自信を持って言われるとはただ事ではない。

どちらかというと喜ばせる方のサプライズのようだから言うとおりにさせてもらうことにしよう。


「俺は目標が明確になったからな。しっかりと鍛えておくことにするよ。お前はこれ以上無理に鍛えようとするな」

「それは時と場合によるでしょ。しかも俺の責任じゃないし」

「違いない。まあ好きにしろ。本気は無理でも出せる範囲の当て馬くらいにはなってやるよ」

「あはは。そのときはお手柔らかに」

「俺のセリフだ。優しくしてやってくれ」


最後は当たり障りのない会話で切り上げて職員さんにも会釈で挨拶して組合の建物を出る。


「いや~。忘れてたよ。糸太郎って激レアの魔物だったよな」


よく分かっていない糸太郎は頭部分をかしげる。

かわいい…!その仕草はどこで覚えたんだ。


少しだけ和んだ後、メディさんの店に向かう道の中で一番暗くて人通りの少ないところを選んで進む。


「待ちな」


進行方向に男が3人現れる。見るからにチンピラさんです。ありがとうございます。腰にはこれ見よがしに剣やらナイフやらを帯びている。


「何でしょうか」


少しだけ怯えて見えるようにするのがコツな。このタイミングで後ろの道にも3人が塞ぐように現れる。風貌は同じ感じだね。見なくても分かるし。


「その魔物を俺らに渡しな」


お読みいただきありがとうございました。

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