VS大型人型戦車その2、爆裂・爆走
お楽しみ頂けると幸いです。
塵も積もれば山となる。雨垂れ石を穿つ。そんなに時間が経過したわけでは無いが、自分たちが製造していた武器で最新の秘密武器を削られるのはどんな気持ちなのだろうか。
アイテムボックスという物資輸送の反則技を使っているから攻撃が止まらないことに関して混乱させるだろうことは理解している。
それに操縦席は前面に接していないようだから正面から攻撃する限りは死人も出ないはずだ。どかどか撃ちまくっていること自体が楽しい。爆発音なんて滅多に聞けるものでもないし。
俺が位置は固定せずに移動と設置、装填して発射をくり返していると、向こうは生存者を気にしてか反撃は散発的だ。と思っていたら不意に一旦止まった。
「降参でもするのかな?」
こちらも手を止めて目立たないように様子を見る。大声で叫び声が響くことに大げさに反応してしまった。
「今からこの場所を敵性勢力の拠点を見なす!!一斉攻撃始め!!」
「はぁ?なんだそりゃ」
向こうの声は聞こえるけれど、俺の声は当然ながら向こうには届かない。一方的な宣告から攻撃の間が短かった。ついでに攻撃の成果を確認するが破壊出来ているのは装甲の表面のみで、ありていに言えばよく言って少し抉ったくらい、悪く言えば黒い汚れくらいにしかなっていない。予想以上に強固に作られているようだ。
「通常兵器ではなかなか破壊できないのかな」
その上で転がっている車両もろとも爆破するほどの攻撃が開始される。さすがに退避だ。
改めて確認すると先程まで隠れ蓑にしていた車両も、他の転がっていた車両も次々と爆発が起こっていく。同時に『探知』から反応が消えていく。何とは言わない。あ~あ~。不利になったからって自軍の兵士をこんな扱いするなんてね。証言しか出来ないが、これも罪状としてカウントしよう。責任者は責任を取るのが仕事らしいし。そんなところ見たこと無いけど。
さて、一方的に攻撃は加えたつもりだけど効き目無し。どんな攻撃をすれば良いかを考える前に相手の攻撃を観察しておくとするか。
肩に担いている砲台は熱線系、各部位からミサイルやら機銃が出てきてやたらめったらに打ちっぱなしになっている。……弾切れは気にしないのかな。どれくらい撃てるものなんだろう。
そうしている間に最後の車両が爆破されてしまう。煙が出ているところに更に攻撃を加えてしっかりと跡形もなく吹き飛ばしている。見事に悪役が過ぎる。確実に自軍の兵士100人以上に積極的な止めを刺したな。
いくら立場が上でもそういう命令だすかな。狂った軍人は怖いや。転がる原因になった俺が言うなって?兵士ならいつでも死ぬ覚悟できていないといけないよね。
「対象の生存は!?」
「爆炎によりロスト!現在不明です!」
「この無能どもがぁ!!」
操縦席内の会話が外にまで聞こえるってのはなぜだ?もしかして指揮官が外部との交信を繋いだままにしてるから?
あの指揮官危ない薬でもやってるんじゃないだろうか。そのまま暴れている音まで聞こえるんだけども。殴る音がリアルで怖いな。
仕方ない。別に義理は無いけど、放っておいたら街まで焼き討ちしかねないから操縦不能になるくらいまでは壊すことにしよう。
アイテムボックス内からロイーグさんに地雷と呼ばれていた爆発物を30個ほど取り出す。実験したけど、自動車くらい大きなものでないと反応しないものだった。人間が一人乗ったくらいでは反応しないんだ。実験済みです。
そうなるとなぜこんなものを作ったのかな。大型の魔物用だろうか。もしかして俺のいた大陸も同じくらいの発展と想定していたのかな。開発時の想定が使用時も同じとは限らないので何か変わったのかもしれない。俺には何の関係も無いし、考えても仕方ないか。
俺が避難場所に選んだのは上空だ。危ないなと思ったところで一度『空間接続』で退避し、いくつか仕掛けた中から一番近いところに設置していた壁の監視場所から大急ぎで文字通り飛んで戻ってきた。
だから俺の位置をロストするのは当然だ。一度この場から完全にいなくなったのだから。不思議なことに空軍の概念も無いようで空の監視もしていないようだ。鳥を見たこと無いのかと言いたい。
もしかしたら秘密裏に開発はされているかもしれないけど、まだ成功していないことにしておこう。嘘か本当か知らないけど飛行機もなぜ飛ぶのか分からないって話を聞いた事がある気がするし。
この地雷は重さを検知してからおよそ2秒後に爆発するそうなので、とりあえずは目標に向けて落とすのが先だな。とりあえずバラバラと放出していく。ふと気づいたが大型人型戦車の直上は危険だ。少しだけ移動しておく。
次々と大型人型戦車へと落としていく。
あとは重量感知部分に重力魔法をかける。回転しているが、スイッチが入ったことは間違いない。
接触と同時に爆発するはずだし、正面ではなく防御の薄そうなところに落ちるように少し調整をしておこう。
はい、接触!ドカン!!
先程の攻撃とは比にならないほどの爆音、爆炎が巻き起こる。これは30個の地雷が連鎖で爆発が起こったこともあるな。爆発が大きくなるように酸素濃度上げたりしたことも関係あるかな。
俺はちゃんと距離取って、念のための結界を張っておいたので無事です。今のは街からも見えたんじゃないだろうか。自分たちの近くで爆発が起これば少しは自分たちの国の馬鹿さ加減と戦争に使う武器の凄まじさが分かるかな?
爆炎が治まるのを待とうと見ていると大型人型戦車がまだ微かに動いているのが見える。自動で動くわけも無いし中の人員も無事らしい。
それよりも気になったのはまだ原型を保っていることだ。中の人員が無事なのもそうだけど、普通はもう少し壊れるものではないだろうか。そこまで頑丈なのか?
疑問が浮かんでくるが、直後に答えが感じ取れた。
「これは魔力?……なるほど。魔力で防御性能を高めていたのか。魔石でも使ったのかな」
魔石をエネルギー源として装甲を作り、その上から吸収することの無いように魔法無効化金属のコーティングなりして、魔力無効化金属で包んでおけば魔力を気取られることも無いようだ。これは頑丈さとしては相当なものだな。手入れが面倒な感じがするので一応相談するけど、個人的には不採用で。リセルに持たせるかは応相談です。
苦労はあるのだろうけど出来上がるのは見かけの数倍は丈夫な防御装甲の完成ということか。理屈が分かる前に殴ってたら固いどころでは済まなかっただろうな。
しかし、1ヵ月やそこらでよくここまで実装レベルのものに仕上げられたものだ。感心するとともにため息も出てくる。
「もう少し技術を平和方面で使えばいいのに…」
タネさえ分かれば問題無い。それに中の人が生きているかどうかなんて俺にはもはや関係ない。やつらは味方なのに平気で虐殺した殺人者だ。
このまま上空から攻撃を加えても構わないのだが、最後は正面突破で行うとしよう。
相手がどう捉えるかは知らないが正面に着地する。
さすがに俺が威力を少し高めた地雷30個の衝撃は大きかったようで、小規模な火花が散っている。
「空から降りてきた…?」
「あいつに照準を合わせろ!!」
「くそっ!攻撃目標照準!全砲撃準備!」
またスピーカーがオンになってるよ!上空では聞こえなかったけど、正面だと割と音がクリアに聞こえた。それはともかくまだ攻撃意思があるらしい。ここまでしてもまだくじけないなら仕方ない!
「やはり最後は正面からの勝負だな!」
先程収納していた巨大鎚を取り出して、一応振り回して具合を確認する。さっきも使ったのだから問題があるわけも無いが。
立ち尽くしていても攻撃されてしまうので大型人型戦車へと向かって爆走を開始する。
「おぉぉぉらららららららあぁぁぁ!!!!!」
大型の砲身も動いたが射線が通らなかったのか動きが途中で止まり、その代わりにもう少し小回りの利く機銃が盛大に撃たれ始めたが、手に持った大型鎚を盾にしつつ、結界も補助として使用しながら構わず前進する。
何とか大型砲台の熱線も使用したいようで、可能な範囲で後退していく。徐々にスピードが上がると進むスピードよりも少し遅いくらいになった。これ以上速くも進むことは出来るが、このままいこう。
結界はすぐに割れてしまったので何枚も作り出す必要はあったけれど。機銃の威力は魔法対策の名に恥じない威力ではあったと思う。ただ、金属の特性に任せて使われているだけだ。魔法無効化も無限ではないと理解すれば怖くない。
近づけば近づくほど結界がすぐに割られてしまうため、意識を切り替えて大型鎚2つを振り回しながら進む。こうなるとほぼ無策の突進だ。幸いだったのがステータスごり押しで途中で少し治癒すれば死にはしない。急所は重点的に守っていればいける!
だが、ある地点を超えると機銃も当たらなくなる。向こうは後退しながら攻撃をしているが、俺の追いつくスピードの方が速いから機銃でも当たらない距離か角度に踏み込んだのだろう。
攻撃可能範囲の内側に近づかれることまでは想定していなかったようだ。ぱったりと攻撃の手がやむ。
「お互いに笑うしかないね」
向こうの笑顔は引き攣っているだろうけど。こっちの笑顔は黒いぞ。手が触れるところまで近づくと大型鎚の1つを収納して、残した方を両手で思い切り振りかぶる。
お読みいただきありがとうございました。




