これぐらいしても罰は当たらない…よね?
お楽しみ頂けると幸いです。
切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静切る治す焼く鎮静…。
既に何回行ったか分からない。ある程度溜まったら持ち上げて横に置いておくことも必要だ。朱雀に出力の訓練をさせられたのがここでも役に立っていると言えた。やっぱり毎日の努力は重要なんだな。ただ身に付けたスキルが多すぎて全部のスキルを毎日練習していられないのが悩みどころだ。
はやく思うがままの生活を送れるようにしたい。常に何かに首を突っ込んだり巻き込まれたりしているのが原因だけども。
ひとまず処置が済んだので最後に伝言しておく。
「じゃあ一旦離れるからこの辺りの処理をお願いね。キミたちなら処置を任せるくらいには信用するから」
真っ青な顔をしてひたすらに首を縦に振っていた。その人たちには何もしていない。男女で違うけど似たような制服を着ている。使用人の立場だったのかな。政治的な立場ではなく、雑用をするために雇われていたみたいだからだ。
嘘を吐きそうな様子も無かったし、政治的な悪人でもないしそこまで処しておくのはやめておいた。文明と社会的なバランスがイマイチだったけど制服を着ていたおかげで気づくことが出来た。無かったら危なかったな。
「あ、一応この状況だから嘘を吐かないと思うけど、地面に転がるべき人は君たちの中に紛れて残ってないよね?」
ビクッと反応した後に、周囲にいる人間たちと顔を見合わせて確認していく。やがて使用人しかいないことを確認した。怪しい様子を見せる人もいなかった。
嘘はついていないようで良かった。じゃあ任せると伝えて先程『探知』で見つけたところへと向かう。と言ってもそこまで離れているわけでもない。すぐに目視で見つけることが出来た。
逃げられないようにと囲ったからね。いきなりで驚いただろうな。この街中で妙に高さのある土壁だからね。目立つに決まってる。地上付近では数十人が寝転がるくらいの広さがあるが、一番上には大人一人が何とか入れるくらいの細さしかない。
途中に空気穴と採光の穴は開けてあるが、中で光る何かを用意してあるようで中から何かをしてあるわけでもなさそうだった。何とか出ようともがいたりはしたみたいだけども。
上に立ってみると下から声が聞こえた気がするが、強化無しの通常状態では何を言っているのか聞こえない。聞きたくも無いのでそのまま土壁を上から崩して中へと土を落としていく。
さすがに土が落として空間が広がると、逆に声も聞こえるようになってくる。ついでに光が入ることで中の様子も確認できた。目当てがいたようで良かったよ。
「なんだ!?光が!」
「上から何か落ちて……!」
「痛い!」
「ペッ!ペッ!これは、土だ!」
「壁際に下がってください!」
「お静かに!落ち着いてください!」
何か色々と聞こえた。痛いのは高さ10メートル付近から落ちた土ならさすがに痛いだろうからね。にしても政治家たちは肝心な時はうるさいだけだな。
冷静に努めようとしているのは警護役の軍人さんかな。まともに話せる人もたまにはいるんだな。一人だけ壁になろうと烏合の衆を後ろに背負って前へと出てきている。とりあえずはバラバラではなく一か所に集まってくれたことはありがたい。
戦争を起こす国の軍人だから善人は出世できないと思っていた。国家元首の警護できるくらいまでに認められているなんてすごい人ではなかろうか。
「さて、お察しの通りこの状況と、今この国、…えっとなんで名前でしたっけ。まあ何でもいいや。軍事工場を潰して色々と扇動していたのは私です。覚える必要は無いですけど、よろしく」
「貴様!何が目的だ!」
「え?あんた達には言いませんよ。国家元首の近くにいるってことはアスゲラのクソ野郎の考えに賛同しているんでしょ?」
この一言がまずかった。我らが先祖に何たる侮辱と震えてみたり、英霊を呼び捨てにするなとか叫んでみたり、国家元首に逆らうなど極刑に値するとかをチラチラと一人の人物を見てこっちに叫んでいたみたいだ。
みたいってのは風の壁を作って声をこちらに聞こえなくしていたからだ。たぶんこういうことを言っているだろうなという推測だけだ。
状況としては壁の途切れたところは3メートルくらいの高さがあるのでよほどがんばらないと彼らには届かないし、脱出できたとして軍人さんだけだ。何より俺がいる前でそんな隙を見せられないと考えているようだ。
だが、こっちにとっては一番を押さえたことで少し作戦を練りたい。『探知』で状況確認して、何をしていくのが良いのか考え直す。
ちょっと喉が渇いたので目の前で堂々と水分補給をした辺りでうるさい人たちの癪に障ったらしい。さっきの勇敢な警護役とは別の人間に指示して攻撃を指示したみたいだ。
まあ確かに現れてからの俺は挨拶と煽りだけ入れた後はゆらゆら揺れながら指を動かして水分補給をしただけに見えるだろう。あ、水分補給はもちろんストローを使ってるよ!
銃を構えたことを確認して風の壁は消去する。両手にはそれぞれ昨日作った中でも良く出来た剣を2本、それぞれの手で持つ。彼らにはどこから出てきたのか分からないだろうな。
発砲と同時に動いて剣の腹で銃弾の軌道をずらす。動かしたのは腕だけで一切体幹はずらしていない。うむ。結構上出来ではなかろうか。そして撃たれた十八発分の代わりに十八歩詰めるとしよう。
目の前の光景が信じられなかったみたいだが、俺が歩き始めるとさすがに恐怖からもう一度叫び出す。
「奴を近づかせるな!!!」
「撃て!!撃て!!」
他にも言っていたみたいだけど概ねこんな意見だ。そして放たれる攻撃だが、特に苦労することなく近づくことが出来るくらいには対処が容易だ。段々と絶望した表情になってきたが、これではいけないだろう。
誰も殺していないだろうからと戦争を始めた人間に罪が無いとでも?その取り巻きが許されるとでも?一方的な絶望で簡単に足を止めないでほしい。希望があると思わせることも必要だな。
俺の初期位置が中央だったので進むと横と後ろにスペースが出来ることになる。俺が何かしているか予想は出来てもなぜ出来ているかは理解できず、理解できずとも自分たちの結末は分かったみたいで既にうずくまっている。おっさんが泣かないでくれるかな。
「わかったよ。じゃあこうしよう」
片手になって問題なさそうだが、一応安全に両手を使っておこう。代わりに右足でガンと地面を蹴る。
と、同時に俺の後ろの壁の一部がざっと崩れ落ちる。分かりやすい出口を作った。当然『ただの』出口ではない。
銃撃の中であったとしても『大声』のスキルのせいできちんと全員に声は届いている。
「あそこを通って逃げきれたやつは1人だけ無傷にしてあげるよ。制限時間は5分で先着順ね。スタートを宣言したら制限時間までは俺は決して入り口の方を振り向かないと約束するから。俺の横を通り抜ければ良いんだ」
そうなるとまず兵士は命がけで足止めを命じられる。あとは誰が無傷かだけど忖度するのかどうかには興味が無い。どうせどんな譲り合いをしても意味が無いから。
うるさくなってきそうだったので、もう始めることにする。
「は~い、すた~と~」
一瞬なんのことか分からなかったみたいだけど。俺が時間表示を作ってカウントダウンのデジタル時計を出現させると一目散に左右に分かれて走り出した。国家元首さんはひとまず様子見でその場に残っている。慎重派なんだね。
同時に兵士たちの数人が腰の袋に手を入れて何かを取り出す。やっぱり持ってるよね。
「ボムだ!!」
「くらえ!」
既に自由に動けるくらいには攻撃は受けているので、少し早く動くくらいは良いだろう。俺に当たりそうな物から拾って打ち返していく。
「え??」
「まっ!」
誰かの声が聞こえた気がしたが、全員の心の中でも同じことが呟かれていただろう。そんな表情をしているから。
俺は発砲が止まった時間で耐閃光用に確保していた装備品のサングラスもどきを装着する。一応そんなものも作られてはいたらしい。
そして爆発が起こる。
爆音と衝撃が広がった。
当然ながら結界で俺に被害は無い。ついでに言うなら閉じ込めていたやつらにもケガはない。当たり前だ。一瞬で死ぬなんて許されるわけが無い。戦争をしかける国の兵士であることが罪だ。これからは戦力ではなくお荷物になってもらわなくてはいけない。
彼らも地面に伏せた状態で少しでも難を逃れようとしていたが、俺が撃ち返したボムは全て彼らの後ろの壁の上部を吹き飛ばすだけに留まっている。未だに乗り越えられる高さでは無いので、逃げ道は変わらず1つしかない。
ただ、俺としては呆然とされては困るので場を動かそうと思う。最初に目を付けた兵士以外はこの場で他の人たちと同じ処置をしておこう。
すなわち、切る治す焼く。
後ろを振りむくことが出来ないので、立ち位置に気を付けながら一人一人処置していく。鎮静を使わなかったのは足を止めてほしくないからだ。
兵士であったとしても片手片足を失い、傷口が塞がったかと思えば、体中が火に包まれてそのまま耐え難い熱にさらされると厳しいらしい。状況に頭が追いつかないのか、熱された空気を吸い込んだ反射なのかまでは俺は関知しない。
悲鳴から逃れる方法は見えたところまで逃げるしかない。このときになるとさすがに国家元首も走り出していた。俺から見て左側に大きく回っている。
ならば兵士は一人だけ残してまずは向かって右側へと移動する。当然振り返らずとも『探知』があるので行動への支障は全く出ない。
先程の反省を活かして、喉を潰すのは後にする。ひとまずは切る治す焼く、だけに留める。
ここまででまだ時間は1分半しか経過していない。時間切れになったところで俺が振り返るだけなので生きるためには出口を目指すしかない。走れ走れ。
お読みいただきありがとうございました。




