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闇の中に見えた光は…、え?増えるの?

お楽しみ頂けると幸いです。

「イレブン!何か来てるよ!」

「分かってる。危ないから入ってくるなよ~」


同意の声が聞こえないが、俺だってわざわざ視線を逸らすわけにもいかないから返事が無くても気にしない。

洞窟の奥で光って見えているのは多分眼だ。同じタイミングで瞬いているから小型の魔物1匹がこちらを凝視しているのだと考えられる。特徴が小さいことから思い出される対象の魔物はあいつだ。


「カオススクアールだな。動きは速いぞ」

「それって、何?」


リセルからはまだ暗闇の奥にいるやつは見えていないようだ。明るいところならすぐに分かったと思うぞ。割とメジャーな動物だから。


「簡単に言えば、最強クラスのリスだ。言うまでも無く歯で噛まれたら大概のものは噛みちぎられる、らしい」

「らしい?」


あやふやな表現のところにしっかりと食いつかれた。俺だってそんな場面は見たことが無いんだから仕方ない。


「さすがにちぎられるところまでは表現されてなかったからな。そこまで再現すると対象年齢が上がってしまう」


俺はグロい表現の出てくるようなゲームは苦手だ。扉を開けたらゾンビが出てくるようなゲームなんかは特に。思わせぶりなシーンは話を聞くだけで結構です。

分かっているのはきちんと準備を整えない状況で攻撃を受けると回復しないと動かなくなるという表現がされていた。一撃のダメージが大きいんだよな。避けること前提で動かないと危険ということだ。

歯を避けたとしても小さい爪であったとしても、隠しダンジョンに出現する魔物らしくダメージは大きい。だが、小動物らしく見つけにくい上に速い。


「やつを見失うたびに腕か脚の1本を失ってもおかしくないな」

「冷静に言ってる場合か!」

「ちゃんと襲い掛かられないようにこっちも全力でやってるよ」


ダンジョンの入り口は俺の『結界魔法』と違って、壁があるわけでもないのに何かによって隔てられている。視覚的に見える以外は魔力の動きとかも感じない。音を出してくれたら分かるだろうけど望みは薄いな。

だからリセルには俺が何かやっているようには感じていないのだろう。ちゃんと『念動魔法』を使って色々と牽制はしている。何かの現象を起こすのは洞窟の入り口付近では危険と判断して、パッと見には影響が無いものを使うしかなかった。

尻尾を使ったり、少し身動きするだけでうまくいなされている。さすが野生動物だ。本能だけでそこまで出来るんだな。油断したら死ぬとはいえ、レベルの高さを感じて感心する方が先に来てしまう。


「でもまあ1匹なら何とかなるかな。早々に戦ってみようか」

「油断はダメだよ!」

「分かってるって」


近づくつもりは無い。相手は動物型だから近接攻撃しかないはずだ。わざわざ近づいて攻撃するなんて危険を冒す理由が無い。

油断しているつもりも無い。最初から目を逸らしても無いし、今までに見たことのある魔物だし。ただ、魔物なんて基本的には戦闘中だけしか見たことが無いから知らない挙動があることは既に理解している。

だからと言って、意味がある行動はほとんどなかった。こちらの妨害に対しての反応の動きだけだからカオススクアールの動きに意味があるものが含まれているとは思っていなかった。


ただなんとなく、そう、なんとなくそうした方が良いと考えたのか直感だったか、腰を落とした。


何かが通り過ぎたような風圧と音を感じた。一瞬の間を置いてパラパラと髪の毛が落ちてきた。何かが飛んで来て、ほんの少し前まで眉間のあったところを通って行ったんだ。

そのまま後ろにその気配は残っている。入り口から魔物は出られないが、見えない境界線にある壁に触ることは出来る。そこに無理矢理くっついているのだろう。見てはいないから推測だけれど。


最初から見えていた光は変わらずにそのまま残って瞬きをくり返している。つまりは、2匹目を呼んだんだ。


「イレ――――」


恐らく壁に捕まる2匹の目の存在を告げようとしたのか危険を叫ぼうとしたのか。どちらかは後で聞くとして、リセルの声が聞こえたが、それと同時に目の前の光も掻き消える。


暗闇を利用した上に前後を挟んでの同時攻撃!!


自分がダメージを負うことも気にせずに全力で『重力魔法』を自分の周囲に下向きに放つ。奴らが経験したことの無い変化のはずだから警戒するはずだ。急所を狙ってくるだろうことは先程の襲撃で何となく分かる。

少しでも攻撃のポイントがズレればそれで良い。一瞬遅れて自分にかかる重力をキャンセルする。そのときに足元に何かが落ちてきた音がしたが、体が軽くなったので移動を優先して壁際へと移動する。背中を取られるよりも移動がしにくい方が少しはマシだ。

『重力魔法』は不意打ち気味で発動したこともあって狙い通りに効果があって良かった。地面に落ちているのは予想通りのカオススクアールだったが、どう考えても3匹目だった。


前後だけでなく頭上にももう1匹いたようだ。全く気が付いていなかった…!何の音もなく頭上に3匹目がいたなんて…。これが下手に前後だけを対処するものだったら頭上からの奇襲で何かしらの大ダメージを負っていてもおかしくなかった。

状況的には背筋が寒いとか、顔色が悪いとかを言っていられない。1匹で様子見をしようと考えていたところで、いきなり3匹だ。きちんと諸々の装備や連携できる仲間がいれば初回でも問題無く倒せるだろうが、何も無い状態での3匹は控えめに言って危険すぎる。


仕方ない。使おう。


「『覚醒』、秘奥義――」


どうせだったら秘奥義は使おうと考えていたのだ。ここで手札を切ったところで問題はない。入り口で3匹の魔物に見せたところで仕留めてしまえばいい。


ここで問題になるのはどの秘奥義を使うのかだ。


一撃で確殺できるダメージの『一拳』ではない。相手は3匹だ。一応秘奥義を使うと覚醒が終わる。2回目の発動まではクールタイムの経過に待っていられない。

同じ理由で『四色螺旋光』でもない。位置取りが悪い。地面に3匹押し込んでいるとはいえ、俺の目の前に3匹目がいて、奥から少しこちらに進んだところに1匹目、入り口から少し踏み込んだところに2匹目がいる。

3匹まとめて片付けるには入り口か奥に移動しなくてはいけないが、それまでに移動される可能性が高い。そこまでの重力魔法を維持しながら秘奥義を放てるほど器用ではない。


そういった理由で、こちらの世界に来てから初めて使う秘奥義だ。このために色々な武術スキルを上げていたのだ。複数の敵相手に立ち回るには最適だ。

アイテムボックスから武器を取り出す。片手剣、大剣、刺突剣、槍、刀、斧、鎚、盾だ。片手剣と槍以外はユーフラシアで買ったものだから強度的には弱い。これには『結界』で補強をしておく。

俺が本来両手に持つことを想定していたのは片手剣だ。本当はもう少し短いサイズの剣にして取り回ししやすいものにするつもりだったが。納得できるものが出来ていない。

刀はそもそも作成が難しすぎて挑戦すらしていない。何でもそうだが一度くらいはその道の達人が実際に作っているところを見学した方が良さそうだ。


それはさておいて、この状況の打破をしなくてはならない。秘奥義の発動と共に、『重力魔法』は解除することになる。重力50倍から解放されたら魔物も体が軽くなった全能感を感じるんだろうか。

迎え撃つ準備は完了した。ここからは根競べだ。


「『オクトブラキオナス』!!」


直訳して八本腕だ。武術スキルが一定以上の基準で習得していれば使用できるように作製した秘奥義だ。名前に関しては全部感じだと面白くなかったので少し違う言語を使用した。

空中にうっすらと輪郭が見えるくらいの8本の腕が浮かぶ。1本の腕がそれぞれ1つずつ武器を掴む。自分の腕と合計して10本だが、自前のものは操作に使うので武器は持たない。念じるだけよりも指なり手で指示するとその方が少しだけ操作しやすい気がする。

ちなみに操作する武器は俺の武術スキルや扱いに対する習熟度で扱いやすさや威力が変わる。あと、習熟度とか言っているがこれは数字化されているわけではない。普段から扱いに慣れておく方が良いのは確かだ。


不思議なものでそれぞれの腕は俺の思うとおりに動く。ただ、試しに使ってみてのところだと使用可能なのは30秒くらいだ。倒れこそしないものの、頭が割れるように痛くなる。ゲームの時はある程度まとまって動くようにプログラムできたが、慣れの問題かはたまた別の問題か。秘奥義の扱いに練習が必要だった。

本来は2本の腕だけのところを余計に8本増やすのだから制御するには相当に負担がくる。限界を超えると頭が割れるくらいに痛くなる。それなりにリスクのある秘奥義だと分かった。無双感のある秘奥義だったのにポンコツな秘奥義になってしまったのが残念である。


さて、最低でもこれで2匹、可能ならば3匹とも一気に仕留めてしまいたい。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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