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新村長無双

お楽しみ頂けると幸いです。

「で、ロイーグさんとコトシュさんもついて来ると」

「獣人の村の居心地もいいが、リセルの嬢ちゃんのサポートがしたいね」

「私は薙刀さんの部隊の訓練を続けたいわ」

「イレブン、お願い!」

「主、お願いいたします!」


見送りの食事会中に話はあるだろうなと思っていたことだが、3人と1体が一緒にやって来た。知ってるよ。それぞれが仲良くしていたこともね。


「せっかく上官部下の立場無く一緒にいられるようになったのに片方だけついて行くってことになったら嫌じゃないか。キミはそういうことしないだろう?イレブン君!」

「いつもより馴れ馴れしいな!さりげなく肩を組もうとするな!」


左側からロイーグさんが懐柔しようとしてきたところで、右手を誰かに掴まれる。コトシュさんだ。


「頼む。元から軍隊での指導経験が長かっただけに、中途半端に放り出すことは出来ないんだ」

「真剣に言ってますけど、薙刀の部隊は毎日増えていきますからね。そんなこと言ってたら一生離れることなんて出来ませんよ?」

「それでも構わない!私はフレンドビーの強化に一生を費やしても構わないぞ!」


コトシュさんってこんなキャラの人だっけ?最初に出会った時に衰弱状態だったこともあったし、要塞攻略の間に獣人たちや蜂娘たちに任せてたからな。女性の弱ってるところに行く勇気は俺には無い。


「そうですね。コトシュ様も私たちのハチミツを気に入っていただけているようですし」

「一緒に来ていただけるならハチミツの新たな可能性をイレブン様に感じていただけるようになるかもしれませんね」


万花と毎果が俺の後ろでそんな会話をしたのが聞こえる。聞こえるように言ったように聞こえた。振り返ってみるとニコニコと笑っているが、確信犯っぽい。


「だから言ったのに。コトシュさんがハチミツ大好きだってことは言っておいた方がいいよって。マッツの家にもすごく通ってたんだよ」

「あぁ、奥さんが熊の獣人だからハチミツ好きなんだっけ。最近ハチミツを使ったお菓子やら、料理にも少しハチミツが入るようになったのは」


そう言ってコトシュさんの方を見ると顔を見られないように後ろを向いていた。

代わりにロイーグさんの肩を組みに行く。こっちはバレても痛くないから苦笑いしている。


「獣人の村にいても別に問題無いと思うよ?ハチミツだって村の役に立っていてくれたら渡すし」

「俺もイレブンならそう言ってくれると思ったし言ったんだがな。まあ俺もさ、危ないところを助けてくれたお前らにもっと直接役に立ちたいんだよ。獣人の村の助けではなく、さ」


じゃあついてくるって選択肢になるか。実際、連携やら編成などに関しては俺の中途半端な知識よりもコトシュさんの方が詳しいのは確かだしな。

おまけにロイーグさんがついてくるなら途中で何かあったときの運転の交代やらリセルの助手とかも頼むことが出来る。人手は大いに越したことないかな?武力的には十分なところあるし。


「まあ危なくなったらすぐにイレブンが帰してくれるっていうのも大きいからな。それに近くにいる方が何かと便利だろ?」


小声で話しかけてくる。俺とロイーグさんには秘密がある。コトシュさんは勘づいているようだが直接聞いてくるようなことは無い。

他のメンバーにもまだ知られてはいないはずだ。自分がここまでやる人間だとは俺も実際に動くまで思ってもいなかった。


「だね。まだ終わったわけでもないし」

「これ以上に?まだやるのか?」


あれくらいで済ませると思っていたようだ。少し引かれている。


「当たり前だよ。相手が関知しないところに上陸した上に破壊工作して、追い詰められたら戦争を吹っかけようとするなんて頭の悪いことを考えるなんてさ。消されても文句言えないでしょう?」


今の言葉は自分でも思ったよりも冷たい感じの声が出たことが自覚できた。そこまで派手に動いたつもりも無いんだけどな。


「イレブンだけで行っても顔パスくらいには恐れられ…じゃなくて、顔は知られてるけどな。…ストッパーとしてまだ一緒に行った方が良さそうだな」


聞こえないように呟いたのかもしれないけど、聞き逃しが無いようにしたからバッチリ聞こえてるよ。恐れられてるんならもう少し派手に立ち回ってやろうかな。もっと実力行使ししても問題無いのではないだろうか。


「結局、ロイーグさんとコトシュさんは一緒に来ることは許可してくれるの?」


リセルが結論を寄越せと催促してきた。特段ダメだって断る理由は無いんだよな。来てくれた方が何かと相談しやすいし。


「構わないよ。俺も助かるし」

「良かった~!よろしくね!」

「感謝する」

「断られなくて良かったよ。いや、ずっと一緒にいる方が心労が絶えないのか…?」


コトシュさんは凛々しい感じの表情に戻っているが、まだ恥ずかしかったのか目線は少し外されている。ロイーグさんはホッとしているような少し後悔しているような感じだ。

リセルや蜂娘たちも喜んでいる。毎果の表情だけは全く変わってないけど、万花と薙刀に巻き込まれて嬉しそうな感じがするから大丈夫だろう。


「しかし、一番年下の俺に全員気を使いすぎじゃないかな。俺だって周りに気を使うくらいするぞ?」


その発言で周囲の動きがピタッと止まる。今はなしていたメンバーだけではなく、話を聞いていたであろう村の皆さんもだ。


「あれ?俺変なこと言った?」


瞬間背後から殺気にも似た強い感情の気配がぶつけられてきたことを感じる。慌てて振り返るとそこにいたのは、、、ミケンダ?


「いつでも戻って来ていいとは言うつもりだったんすけど、ここまでズレたことを言うからには少し説教しておいた方が良さそうっすねぇ」


肩をいからせてミケンダが近づいてくる。オーラか?闘志か?体から何かが立ち昇って見えるぞ!?


「ミケンダ?落ち着けって。な?」


とりあえず心当たりがあるような気はしなくも無いが、とにかく今のミケンダを刺激することが危険だと色んなスキルが告げてくる。

表情が消えた顔を見るだけで危険なのは理解できるんだけどね…?言ってる場合ではない。


「オイラはザールさんみたいな超人でも仕事中毒でも無いんすよぉ。それなのに向こうのペースに合わせて色々とやらないといけなくなったっす。そんな状況にオイラを追い込んでおいて自覚が足りないようっすねぇぇ」

「ご、ごめんな?」

「その結果、帰ってきたらばったりと倒れるように寝るだけなのよ」

「意識を保つのですらギリギリっすよ」


ミケンダの後ろからついてきたメラノさんは少し控えめな笑顔でやってきた。


「あ~、そういうことか。ごめんね。メラノ、ミケンダ」

「仕方ないのよ。これでザールさんが上手くやってくれたら王国内に獣人の村が正式に認められるって言っていたのよ。協力はするのよ」

「いつのまにかオイラが村の代表みたいな立場になってるし。なんなんっすかねぇぇ」


村の人事に関しては俺が関係するところではない気がするのだが、それを言ったところで止まってくれそうな気配はない。

察するに俺がやらかしすぎたせいで村の価値が相当に上がった結果らしい。そうなると必然的に隠しきれなくなり、ミケンダの仕事が増えたせいでかなり大変なことになっているんだな。俺だけのせいかな?


「分かった!じゃあミケンダの負担軽減になるような魔道具を作るところから始めようか!ね!ロイーグさん!」

「ここまで匿ってもらったお礼に色々と準備するよ。待っててくれな」


いい笑顔で告げる二人だが、ミケンダの表情を見て少しだけ悲鳴をあげて後ずさりする。表情が抜け落ちるってこういうことかな?


「負担の一番のきっかけはイレブンの思い付きっすけど、あんたたちの発明とやらがその次に大変なんっすよぉ?本当にオイラが言うのも変っすけど猫の手も借りたいってやつっすよぉ」


良かった!共犯の奴らがいた!しかし俺よりも謝り慣れているのかロイーグさんが素早く正座をして頭を下げる。土下座はこれ以上やらかしたとき用に取っておく気か!


「すまなかった。すぐに負担を軽減するようなものを考えてみるよ」

「任せて!最近はそっちの方向で色々と考えているから。村長と町の暮らしの両方を知ってるからさ。私にも色々とアイディアはあるんだよね!」


天然の気配察知か、俺が動く前にリセルがロイーグさんの横に正座している。背筋はきちんと伸ばして目を見て訴えている。動き速っ!俺が見逃すほどのスピードだと!?

硬直していたことに気が付いたので俺もすぐに2人に並んで正座をする。


「移動に関しては俺がいなくても楔を有効活用できないか考えているのでそれを実装できるように考えてみるよ。他にも装飾品だけはそろそろ作成に入るつもりだから期待しててくれ」


ふ~~~~と深く息を吐く音が聞こえると、重かった場の空気が和らぐ。


「はぁ…。反省してくれたらいいっすよ。ただ、あんたたちが何かすると大きく影響があることはよ~く覚えておくっす」


「「「わかりました」」」


こういうところで声が揃うあたり、結構息が揃っているらしい。


「そうなると監督役は私がするべきか?気にしておくようにしよう」

「がんばってなのよ?大変だと思うけど」

「役割が増えるということは私は基本的に望むところだ。このコトシュに任せてほしい!」


ハチミツに釣られている人だからな。結構ポンコツな気はするんだが、今はそっちに行けない。これはもうなるべく自粛を心がけよう。


「あんたたちが自粛なんて出来ないことをオイラは信じてるっすよ」


ミケンダが笑いながら告げてくる。いつのまにかそのあたりの信頼は消え果ていたらしい。


あと、今日のこれって見送りの会じゃなかった?明日見送られる人間の4人のうち3人が正座しているけど?

お読みいただきありがとうございました。

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