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さあ、ここからがいそがしい

お楽しみ頂けると幸いです。

「これが主な流れだな」

「そうなんだ」

「本当は途中で加わる仲間とのやり取りとか、途中の町で起こる人助けとか色々を話すことはあるにはあるが、そこは省略してある」

「なんとなく、そのあたりも聞きたいんだけど?」


妙な迫力と共に要求をしてくるリセルだが断固拒否した。実際にサブイベントは面白い話もあれば、割と感動できるような話もあるので話してもいいのだが。たぶんリセルが聞きたいのはそこではない。

疑似体験とはいえ、どこの世界に自分が体験せざるを得なかった架空の恋愛話を今の彼女候補に話すというんだ。生まれてからの時間と独り身の時間が全く同じ人間にそんな高度に思えることは出来ない。


「登場人物が多くなってくると覚えきれないだろう。これ以上一気に話すのは俺も疲れたし、ここでおしまいだ。それに向こうもさすがに動きがあったぞ」

「必ず聞くからね!どんな感じ?」

「消火活動が終わったと思ったら、要塞内で戦闘が始まってるな。同士討ちだな」


消火自体はすぐに治まった。元々燃えるようなものが少ないこともあるし、消火設備もしっかりしていたようだし。問題は戦闘についてだ。時々爆発音が聞こえる。悲鳴が聞こえないのは何よりだ。聞こえないに越したことは無い。


おそらく俺たちが攻撃を無効化したことで、帰還派が爆発したんだろう。彼らからすればこれ以上ここに留まるのは自分たちが死ぬことと同義だと考えたんだろうな。実際はそんなことしないけど。


「でもさ、帰らせていいの?」


リセルが心配そうな顔で聞いてくる。さっきの話を聞くと彼らに対して良い印象を持てないのも当然だろうな。だが、


「いいんだ。むしろ帰ってもらわないと困る」

「だって、そのまま放っておくわけにもいかないんでしょ?」

「理由はもちろんちゃんとある。まだ近づくのは危険そうだし、理由について考えてもらおうか。リセルに質問だ。俺のアイテムボックス無しで今からここで料理なり調合をしてくれって俺がおねがいしたとしたらどうする?」

「それは、難しいかな」

「なぜだ?」


俺の質問の意図は分からなくても内容についてはほぼ即答で返してくれる。意地悪かもしれないが、俺の性分のようなものだ。しっかりと考えてくれ。


「だって材料が何も無いもの。調合ならこの辺りでも使えそうなものはあるかもしれないけど、食料は何が手に入るか分からないよ。どちらにしてもまずは探すところからだね」

「そういうことだ。だから本編が始まる前に過去に生きた皇帝が勢力を整えまくっていたことがおかしいとは思わないか?材料が無ければ何も出来ないってのは機械でも料理でも同じだ」

「ということは、彼らが皇帝を支援してたってこと?」

「恐らくはな。もしくは奪い取っていた可能性すらある。本編で語られてはいなかったけど知識や技術を持った人手って面から考えても今から60年くらい先には何かあるのは間違いないと思う」


さっきの熱線が発射されるところなんて途中で挟まれたムービーで空中要塞から発射されてたのとかなり似てたからな。


「最初は俺も全滅させることに少しためらっていたよ。けど、しっかりと対応しておいた方がいいと分かったからには一度帰ってもらう」

「だから、帰って更に研究を進めて帰ってきたら大変じゃないかってことだよ?」

「甘いなぁ、リセル。俺が生きてきた世界にはあいつらの比じゃないくらいエグイことを考えつく人間は山ほどいたんだ。もちろん、帰る前に彼らにはこれをプレゼントするんだ」

「それって、金属で出来た『思い出の楔』だよね?それをどうするの?」

「簡単な話だ。あの要塞に打ち込んで、これごと彼らの本拠地に持ち帰ってもらう」

「それで乗り込むってこと?出来るの?」

「実験済みだ」


以前に作った『思い出の楔』をその辺りにいたフレンドビーたち数匹に持って遠くまで持ち運んでもらった。接続しながら景色も見れたし、移動も出来た。

これを機に小型化や改良を検討する。これって上手く使えば監視システムみたいになりそうだしな。今のところ俺にしか使えないけど、どうにかする方法が見つかれば現代社会レベルの防犯システムの完成だ。録画って出来るかな。それも要研究だ。


「つまり持ち帰らせて、乗り込んで、向こうを破壊するってこと?」

「そういうこと。ただ、向こうにも過去に囚われずに生きようって人たちもいるから一方的に破壊まではしないよ。それがロイーグさん達だな。安全に帰すことも出来るし、一度向こうで隠れて別に楔を打ち直せば要塞から出なくて済む。バレるまでは刺しっぱなしにしておくが、向こうにも詳細は分からないだろうから情報は吸い放題だ。はっはっは!」


ただ、兵器工場や好戦的なことを言っている奴らには黙ってもらうことになるかな。正直なところを言うとどういう形で向こうの妨害を行うかは検討中だ。単純に全てを薙ぎ払うには技術がもったいないし、かといってこのまま放置も出来ない。直接間接問わない活動っぽい感じになるわけだな。


直接手をだすなら爆裂系をこそこそと連発する、間接的になら食糧庫の中身を全強奪とか素材になりそうなものを片っ端から盗みまくるとかかな。幸いこっちには機械系に詳しい技術者も出来たことだし。素材はいくらあっても困らない。

なんか俺がすごい犯罪者みたいな感じになるけど、先に国土に手を出してきた上に、実質侵攻して滅ぼす発言してきたのは向こうさんだしな。俺が遠慮する理由にはならないね。


何をやるにしても一人でやるつもりだから言わないけど。

じーっと見てくるリセルに気が付く。人差し指を立てて、一言だけ忠告される。


「勝手な一人行動禁止ね」


考えていることが読まれている気がするけど、誤魔化しきれるかな…。


「おいおい。プライベート無しってことはないだろう。少しくらい自由にしてくれても」

「禁止、ね?」

「後ろにゴーレム控えさせて言うのはひどくないか?圧を感じるくらいには怖いんだぞ」

「返事は?」

「………分かったよ」


はい。無理でした~!これは正直に言ったらついて来るだろうし、言わなかったら後がこわいってやつだな。余計なことを考えるんじゃなかった…。


「言って分からないなら私一人行動で心配させてやらないと分からないだろうね」

「リセルが一人行動するのか?」


街中なら大丈夫だろう。ダンジョンもゴーレムがいれば大体は問題無い。それ以上のところとなると色々と危険地帯があるにはあるか…。まあ大丈夫だろうと分かっていても、心配は心配だが。っていうか根本的な問題としてだな。言ったところで納得しないだろうしな。う~む…。


「要するに、俺が一人行動しているときもそれくらい心配していると言いたいのか?」

「そういうこと。常に一緒に行動するのは無理だと分かってるよ。でもね、万花ちゃんや毎果ちゃんはともかく薙刀ちゃんたちには戦闘を許可してるでしょ?私には許可してくれないのは信用されてないのかなって思うわけ。もちろん心配してくれてるのは分かってるし、私が倒すと経験値がもったいないってのも分かってるけどね」

「経験値うんぬんはそこまで思ってないぞ。別に構わない」


過保護にし過ぎということだな。考えさせたつもりが俺も考えさせられるとはな。もう困難もある程度解決できるだろうから自立させろというわけだ。その上でついて来ると言いたいんだな。仮にもリセルは年上だしな。センスはともかく弱かった時のことがあるし、存在の希少さを考えると心配になるんだが。


「じゃあ私もその楔を持ってればいい?」


思いがけない一言に、天啓が下りてきたかのようなアイディアに身が震える。


「………そうか!その手があったな!よし、本格的に小型化に着手しよう。何かあっても助けられるしな。オッケーオッケー」


そうと決まれば善は急げだ。ここにいる時間がもったいない。さっさと要塞に楔を打ち込んで来よう!



成功!外側の表面に完全に埋め込んできたからよっぽど破壊されない限りはバレることは無いな。定期的に確認することにしよう。

ロイーグさんにも凡そのデータはもらっているが、何せ航海技術などは無い人だからどこから来たのか具体的方角や距離なことは分からないらしいしな。


「よし、リセル。帰って色々とやるぞ!最初はザールさんへの誕生日プレゼントから始まった火山遠征だったのに、ものすごいことに巻き込まれてしまっている!」

「イレブンの変人ってたぶんそういう巻き込まれやすいところも含まれてると思うよ」

「俺も最近そう思ってきた。さあ、色々やるぞ!」


そして、しばらくの間は大きな出来事も無く時間は経過する。

お読みいただきありがとうございました。

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