表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

123/335

安心してください!反射しますよ!

お楽しみ頂けると幸いです。

「あ~。これは新しく接続し直してるんだな」

「どういうこと?」

「聞いた話だが、何でも入れられる上に中に入れた物の重さを感じないで済むっていう魔法のカバンがあるんだ。イレブンも似たようなのを使ってただろう?」

「うん。それがあるってこと?」


ロイーグが頷くことで答える。

俺はやる気がないだけならがんばれると体に言い聞かせて一度要塞の近くまで移動し、楔を打って来た。まだ数はあるが量産はそのうちしておこうと思う。

移動はしないが、向こうに悟られずに様子を見ることが出来るのでその様子をロイーグに見せて話を聞いている。


「物資を担当するやつに一度回収させて、イレブンが詰めたっている土と砲身を分離させたんだろう。その設置を今はせっせとしているってところだな」


なるほどな~。アイテムボックスの中で解体作業的なものをしているわけか。その発想は無かった。俺も後でできるか試してみよう。


「でもこの作業をしてるってことはまだ戦う気満々ってことだよね」

「そういうことで間違いないな」


あれだけやってもめげないのか。軍人って何を考えてるのかもう分からないや。


「これってどうやったら話が治まると思う?」

「う~ん…」

「あ~、いいや。ごめん。こっちで考えるわ」


さすがに数日前まで偽の関係とはいえ一緒にいた仲間をどうするかの判断を彼自身の口から言わせるのは酷だった。一旦映像を切って彼はまた獣人の村に返す。ついでに俺が持っていても仕方ないので持って来た機械をリクエストされた分を渡しておく。


残ったのは俺とリセルと朱雀。サーちゃんもいるが、この件に関しては意見が出ないだろうから保留だ。


さて、どうしようかな…。


≪何をしたところで攻めきれないと思い知らせば良いんだから話は早いんじゃないの?≫


「そうだけど…。そうなると一番の攻撃手段だと思っているものが通用しないとなれば良いかな」

「分かった!じゃあたくさん練習しておく!」

「そうなるよな」


≪心配なら試してみなさい≫


「向こうの砲台からの一撃がどれほどの威力か分からないけど、試さないよりはマシか。やってみるか。俺のが反射できないようじゃ話にならないもんな」

「じゃあやってみる?そう簡単には負けないからね」


というわけで今まであまり試してこなかったリセルの『反射』の実験をやることになった。


「何からやってみても良いよ」


本気でやるならリセル自身にかけるのが一番だが、代わりのものにかけても効果は落ちるが効果はある。よってそのあたりの岩を崩して1つのものに仕上げて『反射』のスキル対象にする。

なにせ威力は相当のものがあるはずだから試験担当は俺だ。秘奥義までは無理だが、普通に出来る範囲でやらせてもらおう。


「『着火』」


作り出した指先程の火の玉はまっすぐ飛んで岩に当たるが、ボールがバウンドするように跳ね返ってくる。


「おっと、『水壁』」


ジュッと音をたてて消える。結構考えてやらないといけないことだけは理解した。


「この実験って凄く危なくないか?」

「イレブンの威力が強いのが原因だよ。私自身がこれを利用しても少し拡散するから威力は低くなるの。でもイレブンは魔力が強すぎて拡散しにくいからそのまま返ってきてるんだよ。私にはどうしようもないからね」

「仕方ない。俺も結界を全力で張ってみよう」


『氷矢』『氷槍』『氷槍多連』『氷嵐』最後に『落雷』と威力を上げつつ、まだ防御が比較的容易そうなもので行った。特に問題無く跳ね返した。

おまけにと一時的な威力だけでなく、持続性検証のために『氷槍多連』を連側で10回ほど放ってみた、こちらも全く問題無かった。攻撃を加えつつ受ける結界にはMPを追加で注いだし、サーちゃんが火で守ってくれたので大事には至らなかった。


「これ以上となると爆裂系を使うしかないけど」

「ふふん!大丈夫だと思うよ」


その自信はどこからくるんだ。いや、困ったことというか、素晴らしいことにというか、しっかりと反射している。言葉に偽り無しだ。

全てを反射するというなら間違いなくスーパーチートだ。1つの物にしかかけられないようだが、何にかけているのかは分からないため見誤って渾身の一撃を返されると危険だ。

いつの間にこんなことになっているのか。使い方次第ではどんな相手にも一矢報いることが出来るな。少し安心した。


「爆裂系は地形変わるからこの辺りではやりたくないな。一旦離れたところでやってみるか」


またしても移動。そして実験。まあ問題も無く終了だ。しかも最初の岩で問題無くクリアした。


「問題は?」

「ありません」

「心配ないでしょ?」

「それはどこまでいってもある」

「もう!イレブンは心配性が過ぎる!」


≪自分はどうにでもなるけど、周りの人間の安全には異常に気を使うタイプね。守られてばかりだと成長しないものよ?≫


そう言われても一度守る対象と見てしまうと簡単に表に出すのは怖く感じてしまうんだよな。年上だろうとリセルは女の子だし、危険が無いならそれが一番だと思うのは間違いだろうか。


「また何か考えてると思うんだけど、スーちゃんはどう思う?」


≪父親かって過保護なことだと思うわよ。でも愛されてるわね≫


「そういうことを聞きたいんじゃないってば!」


俺をだしにして2人でじゃれている。別に構わないけど。


「じゃあ奥の手も含めてどうやって防ぐかをしっかりと考えようか」

「了解!」


≪私は引き続き監視をしておくわね≫


「頼んだ。じゃあリセルやるぞ。基本的には『反射は』―――――」

「それでいいと思うけど、心配なら―――」

「それも出来るか試してみるか。――――だめだ」

「順番じゃないかな。先にイレブンが―――」

「出来た!」

「これで安心して納得できる?」


一定以上の納得は出来た。ただ最後に問題点が1つ。


「サーちゃんたちの出番が無いぞ?」

「1回くらいでは何も言わないよね?」


大丈夫らしい。まあ精霊も消耗はするから変に攻撃の矢面に立たせたくない。熱線がどれくらいの威力か分からないもんな。


「熱線?」

「どうかした?ロイーグさんにも確認したんだし、間違いないんじゃない?」

「サーちゃんよ。仕事があったぞ。サーちゃんにしかできない仕事が」

「その顔はあまり見せられる顔じゃないなぁ」


悪人顔だからな。一発は許そう。しかし、その一発で終わりだ。もはや攻撃をしようなどと思わせない。サーちゃんが火の大精霊で良かった。

一度情けもかけているし、表に出てくるのは攻撃派だけで帰還派は表には出てこないだろう。多少不便な思いはするが、それは主導権を取られた彼らにも責任を負ってもらおう。


「まあ完膚なきまでにやってしまおうか。あと一応確認しておくけど、サーちゃんは人の生死に関わることは気にすることは気にするか?」

「今までに関係してきたこともあるし、考え方は人と違うから大丈夫だよ。私だって魔物と人間の違いはあるけど気にしないから大丈夫だよ」

「そうか…。なら大丈夫だ。じゃあ、たっぷりと後悔してもらおう」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


そして翌日のまだギリギリ朝とも呼べる時間に俺は要塞の近くに立っていた。朱雀から聞いていたように、一番大きな砲台は使えるようになっている。見かけは以前のものに近くなるようにわざと傷をつける作業が行われていたことは俺も見ていた。何としても初撃は外したくないらしい。


修理されていることはもちろん、要塞の中で何が起こっていたのかまで把握しているから相手のごまかしを見ていると苦笑が出てしまう。まさにご苦労様と言ってあげたいとはこのことだ。


「お~い。約束の3日目だけど、どうなったのさ?帰らないのか~」


以前はこれで通じたとも思うし、ここまで接近されて誰も出て来ないのも不自然な気がするけれども。唐突にブツッと音がしてどこかにあるスピーカーから誰かの呼吸が聞こえる。


「我らの邪魔するものにはやはり鉄槌を下すことが我らの使命だと考える!ここでお前に引き下がることは我が国の威信をかけても到底出来ることではない!手始めにこの火山の加工に衝撃を与えて宣戦布告とする!既にこの国の文明は我らよりも数百年どころではないほど遅れていることは掴んでいる。お前さえ排除すれば一方的に占領できるのだ!」


前半は知ってたけど後半は知らなかった。朱雀も言わなかったというよりも、出鼻で挫けば同じだからと言わなかったな。でもいいか。素直な反応を見せることで向こうの口も色々と動くみたいだし。


「悔しいか。そうだ、お前が原因で我らは進軍するのだ。この国、この大陸の者たちが殺され、生きのこったとしても我らの糧となる!その引き金を引かせたのは紛れもないお前だ!悔いて死ぬが良い」


そう言えばこの声は先日あった総司令官殿ではないな。別にこんな考え方の奴がいたんだな。俺の心の中のリストに加えておこう。国に丸ごと報復したところで文句は言わせないぞ。


演出としてはなんとか止めようとして砲口の前に出る方が話として盛り上がりそうで良いだろうな。移動しよう。ただし、事情を考えると少し離れておかないといけない。笑いをこらえているためプルプルしているが、向こうにはそれが違って見えたらしい。


「恐怖か!?しかし、もう遅いぞ!死ぬがいい!発射!!!」


砲口の奥に光が見えた。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
https://ncode.syosetu.com/n8434ia/
婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
https://ncode.syosetu.com/n1262ht/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ