起きたところで災難去らず
少しキャラ崩壊しているような…?それでもお楽しみ頂けると幸いです。
「はっ!」
「起きた!ごめんよ~~!」
目を覚ますと涙目になったリセルが目の前にいた。起きた瞬間を見逃さないようにと構えていたようだ。目が合ったことを確認されると抱きしめられた。
どうやらリセルの一撃を受けてまた気絶していたようだ。時間はそれほど経過していないようだし、場所も移動したわけでは無い。俺がぶつかったせいで散らかっているが。イイ感じに顔面に入ったからな。しかし、今までと違う感触に少し居心地の悪さを感じる。
「待て待て。離れろ。もう大丈夫だから」
「怒ってない?」
「ないない。そもそも怒ってたのはリセルの方だろ?」
「そうだけど!だってスーちゃんの話を聞いてるとすごく無茶苦茶なことしてるから、どれだけ心配してたかいい加減にしろと思って。でもこうなるとさすがに…」
まあ無茶苦茶やったのは自覚あるから殴られるのは気にしないけど。意図せずに気絶させるほどの威力で殴ってしまうと、驚いて怒りも持続しないよな。
「ただ、あの腕が燃えてたのはなんだ?ヤケドしてないのか?」
「あれはね。火ちゃんがパワーアップしたのを制御しきれてなくて」
「パワーアップ?朱雀が原因か」
≪人を犯人扱いするなんてやめてよ≫
いつの間にか部屋の中に朱雀がいた。乱れるのかしらないが羽根を嘴で整えている。これで大丈夫、とか言ってるが知らんわ。
「そうだな。あんたなら犯鳥だな。実際のところは?」
≪私よ≫
「間違ってないじゃねぇか!」
「私がきちんと制御できてなかったことが原因だから!スーちゃんは悪くないの!」
なぜここまで庇うかな。同じ神獣系のよしみか。ため息しか出ない。
「で、色々聞きたいことがあるんだけど。腹減ったから飯食いながら聞いてもいい?」
「分かった!作ってあるから来てよ!」
手を引っ張られて連れ出された。まあ普通に持ち上げるくらいの力はあるもんな。
外には土で作られたテーブルがあり、椅子も同じだがクッション代わりに葉が被せられていた。俺もそうだけど色々な精霊の力が借りられるとすごく便利だ。精霊と仲良くしているリセルだから出来ることだとは思うが。
用意してあったのはスープだった。
「いきなり食べるなら消化に良いものの方がいいと思って」
「それはそうだな。じゃあ早速いただきます」
手を合わせて食べる。あ、このスプーンも木を削りだして作ってあるんだな。芸が細かい。一口食べると色々な野菜の甘さを感じる。塩気も感じるが、胡椒でピリッと引き締まった感じもする。唯一は食べずにじっと見てくる視線があることだ。仕方ないかもしれないけど、感想をまずは伝えておこう。
「うまい」
「本当!?よかった~」
「優しい味がするよ。ありがとうな」
いやいや、その反応はなんだ。両手で顔を隠しているが、顔が赤くなってるところまでは隠しきれてない。こっちが恥ずかしいわ!
今までそんな反応してなかったじゃないか!俺まで恥ずかしくなってくるじゃないか。
≪リセルちゃんは体が大きくなったことで情緒面でも少し成長したのよ。大人しく受け入れなさい。そのうち慣れるわ≫
リセルが反応してないから俺にだけ聞こえるように言ってやがる。変に俺が反応するわけにもいかない。とにかく食べよう。
「さ、冷めないうちに食べようぜ。リセルもパンが欲しいなら出すけど?」
「ふわっ!?いいい、イイヨ。大丈夫!」
大丈夫じゃない感じもしたが、本人の意思を尊重しよう。話も聞きたいし。
「じゃあ、2日間の間に起こったことを教えてくれ」
「えっとまずね。火の大精霊は起きたよ。今はもうスーちゃんにお返ししたよ」
≪えぇ。しっかりと癒してもらったわ。あとは少しずつ私が何とかしていくから大丈夫よ。そのお礼にリセルちゃんについていた精霊を昇格させたわ≫
「そうなの!火ちゃんが昇格して大精霊になったよ!」
「そんな簡単に増えるものなの?」
≪私の大精霊を助けてくれたお礼、もしくは私が認めたことへのお祝いみたいなものね≫
「要するにこれから神獣の元に行って同じように認められて来いと?」
≪口実みたいなものよ。偏屈でもない限りは行けば認めてくれるでしょうし。そのあたりは実際に行ってみなさい≫
水・風・土はいいけど、氷や雷なんかもいるのか?どこに会いに行けば良いのか分からないな。まあ付き合うと決めたし、そう簡単に出来る経験でもないしな。色々と探してみよう。
「で、あとは―」
「その前に火ちゃんの新しい名前を決めたいの!」
思いっきりぶった切られた。
「後じゃダメなのか?」
「出来れば今が良いな。だって存在そのものが変化したから火ちゃんじゃないもん。イレブンの知恵を貸してほしい。なんか火の大精霊っぽい名前無い?」
「そう言われてもな。俺が知ってるところで言うなら、サラマンダーとかがよくある名前だったかな」
イフリートもよく使われていた名前だけど、場合によっては炎の魔人だからな。素直に精霊というならこっちの方が適してるかな。他に何かあったかな。
「じゃあサーちゃんで!」
「即断即決がすぎないか?」
「いいよ。決めたし、ほら喜んでるよ。かわいい!」
「いや、見えな――――見えてる?」
リセルの肩に乗る赤いトカゲのような生き物が見える。なぜに?
≪あなたも名づけを行ったことに認定されたからね。リセルちゃんとあなたの共同での名づけが行われたことになっているわ。あなたも少しだけ魔力を与えたこともあるし≫
「あ~。そういうことになってるのか…」
確かに名前のアイディアも出したし、魔力も与えたな。そうなると他の精霊たちも同じようなことになるわけか。
≪あなたたち2人で名付けた、もう子どもみたいなものね≫
「朱雀っ!」
「こここここども!?」
≪少し気晴らしに飛んでくるわ~≫
「待て!戻ってこい!」
「えっと、じゃあ水ちゃん風ちゃん土ちゃん氷ちゃんと~。私、既に5人も子持ち!?」
「いや待て、リセル!精霊を人扱いしていいのか!?朱雀!どこかに行くなら言った言葉について状況を回収してからにしろ!」
しかもあいつがいないと次の話が聞けない!少し夢を見に行ったリセルの目を覚まさせるのに時間を使った。
スープが冷めたので再度温めて食べた。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「俺、落ち着いて話を聞きたいだけなんだ」
「ごめんなさい」
≪だから私は正座なんて出来ないわ≫
いつかのときと状況が逆になっている。一体だけは同じだが。
「リセルは反省するしたら正座はやめていい。朱雀はそのままだ。で、あいつらがどうなったかだけ教えてくれ」
≪横暴ね~。怒り過ぎは血圧が上がるわよ≫
「誰のせいだと…」
≪はいはい。ちゃんと言うから怒らないの。そうね。大きくは2つに分かれてそれぞれが行動に移っているわね≫
「2つに分かれる?」
もしかしてもう1回行かないといけないのか?面倒が過ぎる。
≪まず1つ目はあなたの話を素直に聞いて帰る組ね。帰還派と呼んでいるから私もそう呼んでおくわね。あの要塞も動くらしいから足回りの整備をして帰ろうとしてるわ。今日の本当にさっきまではその流れだったんだけど≫
「何かあったってことか」
リセルがスッと立ち上がってどこかに行く。話が聞こえる範囲だから聞いてはいるんだろう。
≪失敗したまま帰ったらどうせ死んでしまうからって、何か足掻いているみたいなのね。そっちは攻撃派と自分たちで呼称しているわね。攻撃派はその名の通り、砲撃を使い物にしようと躍起になっているわ≫
「俺全部潰してこなかった?」
リセルが戻ってきたら果実水を持ってきてくれた。どこから果実を調達してきたのか。それはあとで聞こう。
≪私もずっと見ているわけでは無かったから分からないんだけど、一番大きいのが使えるようになっているのよね。まだ整備にまだ時間がかかっているようね。むしろあなたがあちらに楔を打ってきて、拾ってきた男に見せて確認させてはどう?≫
「面倒な…」
「でも撃ってこられるくらいなら、使おうよ。私の奥の手!」
使う機会がないならそれで良いと思っていたけど使いたかったらしい。目がランランと輝いている。
「本気か?」
「ちゃんと練習もしてたよ。みんなが協力してくれるし!」
≪相手の砲撃の性質が分からないけど、物質を打ち出すか、熱線を撃ち出すかだと思うわ。あなたが保護してきた男の方の話を聞く限りは熱線タイプのようね。そうなると≫
「サーちゃんと私が力を併せれば大丈夫だし、みんなもサポートしてくれるから更に安心だよ!」
「実戦でどこまで使えるかは確認しておきたかったしな。俺も確認したいけど、向こうがいつ終わるかとか分かるもんなの?」
≪まあ明日になればあなたが来るのが分かっているから、それまでに撃ちこんでくるか、直接あなたに照準を合わせて撃ってくるかのどちらかかしらね≫
「分かった。じゃあどうにか気合入れてやる気出すから。それぞれ準備ってことで」
「了解!」
≪何か変な動きがあったら教えるわね≫
休みたい……。この件が終わったら本当に休暇取ろう。生き急ぐってこういうことを言うんだとひしひしと感じるから。
お読みいただきありがとうございました。
評価やブクマして頂いている方がじわっと増えたおかげで少し気持ちを保てております。ありがとうございます。




