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虎穴に入らずんば虎子を得ず。なお、虎児がいるとは思ってない

お楽しみ頂けると幸いです。

誤字報告頂きました。いつもありがとうございます。

さっきまでは曇らせるくらいだったのが、次第に雨が降り始める。本当なら傘が欲しいくらいだけど、結界のおかげで傘要らず。ここが傘の進化終着地点か。

少し雰囲気を持たせるために傘っぽく錐体状にしようかな。…できた。まあ結局横殴りの雨を防ぐために周囲を囲むようにしてあるけどな。


『雷嵐』は魔法だけど無効化されないように、実際の雨を降らす通りに操作するところからイメージして発動した。消えたところ水が溜まらないくらいだから別に構わないし。

結果はどうだろうか?照準を合わせて撃っているようだけどさすがに豪雨レベルだからどうしようもないのかな。


では追撃を。


「『落雷』」


一撃だけのつもりだったが、一つをきっかけにガンガン降り注いでいく。


「あ、待て待て。狙いは、砲台だ!!」


何とか軌道修正ができないか気合を入れて念じると途中から何とかなった。それまでに数発落ちてしまっているので、それは事故だと諦めてほしい。

明らかに最初から目立っていた砲台には粗方落としたことで使用不能になったことだと思われる。火災になるかと一瞬覚悟したが、特に火の気が上がっている気配は無い。

要塞を上空から一周ぐるっと見てみたから間違いないだろう。目的は引き揚げさせて二度と来ないようにさせるためだ。手出しイコール死くらいの認識を持たせたい。


じゃあ、一旦雨は止めよう。


そう言えば火属性の魔物が多くいるだろう所にこんな大規模な雨を降らせて大丈夫だっただろうか。それはあとで朱雀に聞けば良いかな。

じゃあ次はどう出るかな。最初の車両ではなくて、先日のアーマースーツを着た人たちが多く出てきた。一緒にエリート部隊って言われていた人たちも出てきてるな。


空中に浮いている俺にどう対処する気なんだ?


『敵対中の方に申し出がある。わが軍の兵士たちには万が一の防御のためにアーマースーツは着せているが武装を施してはいない!一度話し合いを持ちたいと思うがいかがか!』


信じてもいいような、絶対嘘だって思ってしまうような。判断が早いところは良いと思うけど。外に出てきた人たちも手を上に上げて土下座姿勢になってる。泥だらけになってるように思うんだが。そこまでなってるならまあ1回くらいは話を聞こうか。

完全に雨を止めて雲を散らす。夜明けはまだ先みたいだな。機械類は魔力の高まりみたいなものが無くても一気に攻撃態勢に入ることが出来るから厄介だよな。


『返事だけでも頂きたい!』


何も言わずにこちらの行動をしていたら返答をせっつかれた。俺がまだどこにいるか掴めてないのかな。雨降らせるの止めたのに。

火球を1つ暴発させると一気に注目がこちらに集まる。集まったところで何かされるわけでもなかったので一安心。そのまま火球を3つほど周りに滞空させた状態で地上に着陸する。


「話をするってなったら誰に何を話せばいいのかな」

「内部へと伝達して参ります!」


入り口近くに立っていた人が要塞内部へと入っていく。集音機能とかないんだね。変なところだけリアルな作りだな。

しばらくお互いに距離を取った状態でしばらく時間が経過する。その間に何人か中に入って行ったり、外に出てきてコソコソ話していたりしたけど俺には特に何も無し。

ここにいる人たちはほとんどがそこまで強いわけでもないみたいだ。完全に怯えてるし、何かの武術系スキルを身に付けているわけでもないような気がする。

『鑑定』では相手の詳細な情報は出て来ないんだよ。装備品や道具なら分かるんだけどね。そういう意味で言うと今なら装置の解体はいくらでも出来るな。


たっぷり15分は待っただろうか。少しだけ明るくなってきたかなという時間くらいでようやく中に入るように案内された。


「中で危害を加えられそうになったら暴れるけど大丈夫?」

「問題ありません!まかり間違ってもそういったことは行いませんので!」

「わかった」


事前に確認取ったし大丈夫だと思っておこう。中に入ったらそこはアニメの世界で見るような通路が続いていた。世界観が違うな~。

さすがに珍しいものを見ているので、色々と見ながら案内されるがままついて行く。歩いている最中に何か要塞が全体で少し揺れているような感じがする。


「何か揺れてるけど、動いてるの?」

「はい。既に修理に動こうとしております。損傷の大きかった部分を太陽の光に当たる方向へと少々動かしております」

「ふ~ん」


回転しているような感じは受けないんだけどな。まあそういうことだね。どうしようかな。朱雀に伝えておきたいんだけど。


≪何かあったかしら≫


いきなり頭の中に朱雀の声が聞こえる。でも声に出したら周りからヤバい奴扱いされるよな。どうしろと?


≪口を動かしたら唇を読むわよ≫


それでも目立つような気がするんだけどな。まあいいや。


(微妙な口の動きでも大丈夫か?)


≪十分。分かるわよ≫


(助かる。中に招き入れられたんだけど外の状況はどんな感じになってる?)


≪ものすごく大きな、砲台っていうのが出てきてるわね。方角としては火口にあった私が閉じ込められていた装置のところを狙いにつけているみたいだわ≫


(アウトだな~。暴れてしまおうか。発射されたら危ないよね)


≪威力がどんなものかは分からないけど、封じるということでないなら本気を出せば大丈夫よ。手段は色々あるのだから≫


(今聞くことじゃないかもしれないけど、なんで封印かまされてたの?)


どう考えても朱雀は万能だ。魔法が無効化になると言っても、捕まるなんて事態になるとは思わない。しかも20年前でしょ?


≪ん~。それもまた言いたくないことなのよね。帰ってきてどうしても聞きたかったらね≫


(わかった。これに関してはリセルの奥の手もどこまで耐えるか分からないけど使えると思うから相談してくれ)


≪盾にするだけなら私も使えるから大丈夫よ≫


(万能だな。じゃあ任せた。完全に防げなくて悪い)


≪気にしないでいいわよ。またハチミツお願いね≫


(お安い御用だ。俺に言わなくても万花たちに言えばいくらでも用立ててくれると思うぞ)


「こちらです。どうかされましたか?」

「いや、何でもない」


≪じゃあこちらはこちらでやっておくわね。怪我しないように気を付けなさいよ≫


もう視線がこちらを向いている状況なので返事も出来ないが、頷きだけ返しておいた。さて、どんな嘘をついてくれるのかな。もしくは罠かな。


部屋に入ると応接室のような部屋だった。先程まで斜めになっていたはずなのにある程度片付けが終了している。

ローテーブルに対面に置かれたソファ、奥には執務机と一応の体裁が取られていた。部屋の四隅には先日手に入れた銃とは違うタイプで銃口の下にナイフが付いている銃剣ってやつだ。

その奥の執務机から立ち上がってこちらに近づいてくるカイゼル髭の体格の良いおじさんが一人近づいてくる。


「お待ちしておりました。私はこのグランドバイソンの総司令官を務めておりますフンデック・アンウーと申します」


言い終わるころには俺の前で立ち止まりにこやかに握手を求めてくる。


「あ、どうも。早速ですが、よろしいですか?」

「構いません」


握手はやんわりと断って、質問の許可を得る。既にこちらをだまし討ちしようとしているのだから何かを我慢する必要はない。


「あなたが本当に総司令官だという証明は?初対面ですし、何か身分証のようなものがあるわけでもないです。はっきりと分かるような物を見せてください」


ゲームならネットなどの事前情報があるから初対面でも名前と立場がある程度分かっていることが多いが、現実だとこんなものだろう。明らかに敵対している立場の人間を信じてやる義理は無い。

この人が本物だろうと偽物だろうと目的は恐らく時間稼ぎだ。俺が中にいる状態では砲撃しない。俺が要塞の中で暴れ出して止められる自信があるとも思えない。するなら俺の弱体化させて外に出してからだろう。ここまでが俺の推測です!


「おっと、これは手厳しいですな」

「そうですか?別に俺は今からここで暴れても構わないんですけど」

「それはご勘弁願いたい。証明と言いましてもあるのは私の体格に合わせたこの軍服と勲章に掘られた名前でしょうか。ご確認いただけますか」


うん。無理矢理来ているとは思えないから本人のものなのは確かだ。勲章も『鑑定』して本人のものであることを確認した。ここでは嘘はつかなかったようだ。


「すいません。今でも嘘をつかれているのではないかと勘繰ってしまいました。あなたが総司令官であることは信用することにします」

「いえいえ。敵対関係になってしまったのは先日の部下たちの非礼が原因でしょう。厳しい判断をしておりますので、ご容赦願いたい」

「まあ裁きに関してはこちらで言うことでは無いですし。では別のことを聞いても良いですか?」

「その前にかけませんか?この年齢になりますと体の疲れが中々取れずに大変でして」


ずっと斜めにしてたことに対する嫌味かな。


「部下の躾が出来ていなかったから仕方ないんじゃないですかね。座ってもらって良いですよ。僕は立ってますから」


ソファのどっちに座るとか分からないので着席を勧める。煽りしか話さない俺に違和感は感じているようだが、確信が得られていないようなので自分が言ったように座る。

俺は対面になっているソファの後ろに周る。気が付いてはいたけど案内役をしていた人は総司令官の後ろにそのまま回る。部屋の中は雰囲気的に現代にいたのと近い感じがする。


「珍しいですかな?あまり文化が発展しておられないようなので珍しいかもしれませんな」

「まぁ珍しいですね」

「そうでしょう」


あぁ、一瞬嘲りの表情が浮かんだ。


「要塞みたいに見えるけど誰を招くとも思えない部屋に割れ物の美術品を飾るとか狂気の沙汰だと思います」

「なっ…」

「衝撃を受けることも想定してなかったのにこの状況。お国に帰ってからのご苦労が窺えますね」


当事者の俺が言うなって話だ。俺がきょろきょろしているから田舎者だと思ったみたいだ。なぜそれを!って言わないだけマシかな。

『鑑定』って便利だわ。目に見えるか見えないくらいの細かい破片からでも視界に入ったからか情報を得られる。道具の詳細情報を見れば何があったのかがすぐに分かる。これで俺にとって殺人事件の解決は容易いものになったね。


黙ってソファを持ち上げて振ってみる。何もないことは分かっているけど一応念のため調べてる振りだ。そして横にずらして俺のスペースを作る。

座っている総司令官の前に仁王立ちで立つ。


さて、次はどうしてやろうか。

お読みいただきありがとうございました。

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