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要塞への攻撃と逃げる意志

お楽しみ頂けると幸いです。

要塞に到着したよ。


向こうが動き出す前に動いたから当然警戒もされているわけもなく、ちょうど今から偵察隊が動こうとしているようだ。こういうのって作戦開始直前に動くものなのか。遅くない?

もっと早くに展開して対象をしっかりと観測しておくものじゃないのか?お粗末にも程がある気がするのは俺だけか?知らんけど。


このまま放っておくと朱雀の手を煩わせることになるから手を出しておくことにしよう。


奴らには魔法は効かないんじゃない。効きにくいだけだ。確かに魔法攻撃を軽減する効果の装備品はあったが一番効果が高いものでも大幅軽減なだけで全く効かないわけでは無い。しかも見かけは小回りの利く小盾だ。実際に当てなくても効果があるのがゲームの優しいところだ。当然クリア後に手に入る。まあ必須装備品だな。

それまでにも似たような効果の金属は手に入る。結構苦労するけどな。こいつらはそれをどうにか純度を高めるだとか何かしら効果を高める方法を見つけ出して大量生産したんだろうな。


ってことは思いっきり攻撃すれば効果はある。朱雀や火の大精霊が一方的にやられたのは他に原因があるんだろうな。直接は攻撃できないとか?そんなとんでもない弱点があるわけないか。それはまた今度考えることにしよう。今考えるべきは


「やつらの妨害だな」


ヒントは圧力。この展開を見越していたんだったら朱雀は凄いな。火は色々と危険だから、風にでもしておこうか。


結界を準備することなくぎゅんぎゅんと圧力をかけて空気を固める。


「火は『爆裂火炎』にするつもりだから、風だったら『爆裂暴風』かな。それでは、いってらっしゃ~い」


エンジンがあるのかは知らないが、今まさに動き出そうとしているところのようだ。俺はすぐに穴を掘って結界で蓋をした上で耳を塞ぐ。

すぐに結構な爆音が響く。ただの空気弾だけど、今の俺が強めに使った風魔法と嵐魔法の合成を重力魔法で押し固めたものを一気に解放する。放った場所が適当でも被害は結構なものになってるだろう。


「さて、どうなったかな?」


見える場所に移動して覗いてみる。


「あら~??」


動き出そうとしていた車両群はひっくり返るかその辺りの岩山にぶつかっている。それだけの暴風が吹き荒れたのか。調節も難しいけど使う機会があまり無さそうなのも確かだ。


「まあなんだ。無差別で攻撃して良くて、周囲に味方が散らばってない時にのみ使えるかな。他の拡散する性質の魔法もまた折を見てやっておくことにしようかな」


これは向こうが火口付近に近づかせないようにすることと俺が再度近づいて来たことを知らせることが目的だ。しばらくは動きがあることを待ってみる。

要塞の中が騒がしくなってくる。近場で偵察隊が全部ひっくり返されたから、救助にも手を割かないといけないし、やることが大変だよ~。


そしてさっきの『爆裂暴風』で少し要塞が穴からはまっていたのが少しずれていたので、もう少しだけ穴から脱出しやすくなるように穴を埋めて水平に近くなるように動かしてやる。

まだ斜めではあるが、さっきまでに比べると通常通りに動かすことは出来るのではないだろうか。


そのまま2分待っていると外側についていたライトが周囲を照らして視認できる範囲での索敵が始まったようだ。一気に要塞の温度が上昇したように感じる。攻勢をかけてくるみたいだ。


なぜ、わざわざ相手に塩を送るような前をするのか?


答えは単純、相手が得意だと思っている土俵で勝負して完膚なきまで負けたら立ち上がれなくなる、とやろうと思っただけだ。相手はまず何をやってくるかな。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


【???視点】


『緊急配備!!敵襲!敵襲!』


「全員起床だ!今すぐに戦時配置に付け!」


夜間待機の隊員が予定よりもはやい起床を促しに走り回っているが、そんなものは聞くまでも無く全員が起床している。何せさっきまで斜めに傾いていた部屋が少しマシになっているのだ。


「本当に戦闘するのかよ。このグランドバイソンが攻撃されるなんてありえないんじゃなかったのかよ!」

「そんなこと言ってる場合か!さっきの衝撃でわかっただろ!本当に死ぬかもしれないんだ!自分の配置につくしかないだろう!」

「ここから逃げればまだ」

「祖国から離れた場所で生きていけるってんならそうしろよ!ただ、帰れると思うなよ!」

「くそっ!」


諦めの言葉を吐き捨てるとバタバタと走って行く。後ろ姿を見る限り服装だけは整えていったようだ。


「はあ、俺も行くか」


撤退を上申していた上司が営巣にぶち込まれたのは昨日の昼のことだ。俺も特別会議とやらで階級をむしり取られた。ただ、立場が変わったばかりで何をすべきかという配置が決まっていない。こんな状況にも関わらず何もすることが無いのだ。

こんなときにどこに行くのかって。元上司のところ以外に無い。どうせ国に戻ったところで敵地で攪乱したとか難癖を付けられて責任を負わされることになるに決まっている。さっきのやつらではないけど、逃げ出した方が良さそうな気がする。


昨日から何も食べていないだろう上司のために食料を余分に持って向かうことにする。案の定見張りはいない。それに先程から水平に戻ってきている気がする。


「これは長距離砲とか使うことになるんじゃないだろうか。完全に敵対行為だよ。相手よりも技術が進んでるからって本当に大丈夫だろうか…」


自分にできるのは一通りの知識と、好きで学んでいた偏った機械いじりの知識くらいだ。少しばかり良い記憶力と周囲とのもめるのがイヤでそこそこに調整する能力のおかげで、重宝がられているうちに一応の立場をもらってしまった。

機械いじりは正式に学んだわけでは無いから上層部にバレなかったおかげで配置されずに済んだ。隠していて良かったと思う、知っているのは酔っぱらって漏らしたことのある元上司くらいなもんだ。


『使用可能な全武器を解放する。総員何が起ころうとも備えておくように!』


「うわ、最悪」


思わず本音が出るが、何に対してだろうか。

全武器を解放するような敵に襲撃されていることか、そんな敵がなぜか最初以外目立った攻撃をしていないことだろうか。最初の一撃だけで終わりということも無いだろうに。

もしくは、隠語を使って通知すべき内容をストレートに伝えてくるほど上層部が慌てていることだろうか。今のを聞くだけでこの戦艦は正に泥船ではないだろうか。今度は沈むのではなく跡形もなく消え去りそうな気がする。

考えているうちに最後に見てから一日も立っていない元上司を発見する。


「お腹空いてますか?」

「第一声がそれか」

「空いてないんなら俺も朝食まだなんでもらっていいですかね?」

「……寄越せ」


素直に言われたので持って来たものから好きそうなものをいくつか渡す。


「ほぼ一日ぶりの食事だ」

「やっぱりそうでしたか。この状況でメシなんて出してくれませんよね」

「状況は?」


え?今話しかけます?俺も食べたいんですけど。口に物入った状態で話すと怒るくせに。急いで飲み込む。


「はぁ。てんやわんやです。ここまで放送聞こえてます?」

「ああ」


『対空、対地砲撃狙いを付けれた砲門は合図とともに一斉掃射!戦闘車の発進急がせろ!』


割としっかり聞こえますね。


「とりあえず15分前に揺れと共に起床、偵察隊の車両は全部ひっくり返されたようです。それからお察しの通り我らが『地牛』さまは穴から這い出ることが出来たようです」

「正式に『グランドバイソン』と呼べ。それから全武器制限解除か。どう思う?」

「どう考えても逃げの一択だと思います。逃げる手段が思いつきませんが。まず外を見てみないとなんとも」


最後の一口を放り込むと一言放たれる。


「逃げるぞ」

「了解しました!」


敵前逃亡とかバレたら銃殺刑だけどまあいいや。元から国外逃亡のために乗ってきたんだし。

必要な改造品はこっそり隠してあるから、それだけ回収すれば良いかな。それまでは逆にここにいた方が安全だけどな。外から爆音しか聞こえないし。


「じゃあ回収行ってきます。鍵はこれです。で、着替えがこれ。10分ほどで戻ってくるんで」


しばらく見つめられたあとに一言頂戴する


「お前が指揮官だったらこんなことにはならなかっただろうな」

「嫌ですよ。めんどくさい」


ダラダラ生きたいんです。俺は。


ものすごく揺れたので急いで戻ることにする。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


【イレブン視点】


俺が朱雀に石を当てられて身に付けたスキルは『気配感知』と『暗視』だ。両方とも名前の通りの効果なので説明は省く。

捕捉だけしておくと、この場合の気配は人の呼吸とかだけでなく動いている無機物も含まれる。暗視の効果も相まって向こうが今から動くところが丸見えなのだ。


まず向こうに見られたのは砲台が動き、俺を見つけ次第打とうという動きだ。

もう一つは前回見たよりも大型の戦闘部隊だ。人型というよりはほとんど戦車だが腕のようなものが武器も持っている。あれが接近戦用か。

遠くからの狙撃できるように戦車のようなものも出てきているから陣形次第では色々と出来るのだろうな。どう見ても対応が遅くて魔物相手向きではないな。

というよりも俺の好みではない。そして何よりも反省しようという気持ちが無いことが悲しい。


さきほどの偵察車両も多少壊したが、ひっくり返っているというのに同じようなものを出しては意味が無いだろう。せめて人型にしておかないとすぐに復帰できないのではないだろうか。

どれくらい考えているのかを確かめるために、もう一度『爆裂暴風』を結界外に生成する。先程と強さは同じだ。今は結界で周囲を囲って空から観察している。


「さて、どんなものかな」


再度巻き起こる爆風は2つのことを教えてくれた。


1つ目は地上にいた部隊は全てひっくり返されるために存在していたこと。

2つ目は出所を探っていたらしい砲台がこちらに向いたこと。


「要するに本丸の要塞が助かるために地上部隊は犠牲にされたのか。じゃあ次だな」


『爆裂暴風』のために中断していた魔法を再度発動する。


「『雷嵐』」

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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