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冷静になるために時間をおけと言われた

気が付くと少し長くなりましたが、切りが悪いのでそのまま投稿します。

お楽しみ頂けると幸いです。

女、女性、女の子。俺とは違う性別。


「く」「ノ」「一」という字で書かれることから女性の忍のことをそのまま「くのいち」と呼んでいたこともある。忍術って素敵だよね。

そうっぽく見せる技術も出来るし、特技などを作ることもできるから色々とロールプレイがはかどっていたことが懐かしい。


重騎士の装備で固めた人は普段の言動から騎士っぽい話し方をしていたし、タンクを引き受けるのは当たり前だったな。

弓に可能性を見出した人は狩人っぽい装備で固めて常に草を加えていた。この場合の草には特に何かの効果は無い。気合が入った人はギターを背負っていた。何か勘違いしていたと言わざるを得ない。

クリア後に錬金で遊んでいた人は装備だけではなく、黒の塗料を目の周りに塗って寝不足を演出していた。常に眠たげであることを装いたかったそうだ。


俺はそこまではしたことは無かったけど。あまり目立つことの無いようにしていたつもりだったけど声をかけただけでなぜかマウントを取られ、あれよあれよという間に決闘騒ぎになったことがあった。

あのときは闘技場に装備を整えて登場した時に俺だと気が付かれた。そのときには当時でナンバー1だと呼ばれていたからね。ものすごく驚愕した顔をされてしまったな。

街中でイチャモンつけた相手が闘技場の無敗王者なんだから恐ろしいと感じてしまうだろうな。


決闘前に降参など出来ないから始まったと同時に降参しようとしたみたい。でも速攻で仕留めてしまった。

だって明らかに店の営業妨害だったからね。ああいうのを運営は何とかしてもらいたいんだけど、限界もあったんだろうな。

自分が有名人だという自覚はなかったけど、少しは顔を出した方が良いんだなと思ったものだ。それが現在ランクを上げようという決心に繋がっているわけだが。


ロールプレイって話に戻るけど忍者がかっこいいってのは確かだよね。少し参考にしてみようかな。属性魔法は色々と揃ってるから何とでも出来るような気がする。

特技作成って機能が解放されてないからすぐには無理かな。あれも一応クリア後の機能ではあるから無い物ねだりかな。それも少し何とかできないかを探っていきたいところだ。


あ~~~~~。


いつまでも過去を見てばかりではダメだ。もうそろそろちゃんと現実と向き合うことにしよう。


リセルは女の子だった。


しかも見た感じ20歳という年齢よりも少し若いくらいになったっぽい。背が小さかったからそう判断したけど。


およそリセルにやってしまったことを思い出せる限り先に挙げておこう。


・今まで男だと思っていた

・気づかずに肩車をしてしまった

・同じ部屋で寝泊まりをしていた


風呂上がりを覗いたりはしていないはずだ。着替えを一緒にしたこともない、はずだ。今思えばリセルがこっそりと気を使ってくれていたように思う。あとは何だ。


・たぶん気が付かずに失礼な言動をしていたように思う。


これでは言い方があやふや過ぎるかな。


・気軽に相棒呼び

・人口呼吸


この2つは女性の尊厳を踏みにじってないだろうか。後者は助けるためと言ってギリギリ理解を得られるかもしれないけど、相棒呼びは精神的に暴力だったりしないだろうか。

こればっかりはリセルに直接裁いてもらうしかない。厳正に判断をしてもらうしかないよな。本当にやらかしてしまった。どんな顔をして接すればいいんだ。頭が痛い…。


「イレブン!!」

「はい!」

「もう何回も呼んでるんだよ!」

「ご、ごめん!ちょっと考え事をしてた」


考えに集中してしまっているとスキルがあっても気が付かないのか。スキルは便利だと思っていたけど、それだけとは言えないんだな。


「もう着替え終わったから、土壁を解除してくれて大丈夫だよ」

「わ、わかった」


言われた通りに土壁を解除する。現れたのは服装は今までと変わらないが、今までよりも身長は伸びているし体つきも丸みを帯びている。

これ以上は見ていられないし、表現を考えることは俺には出来ない。思わずリセルから目を逸らす。ただ、すごく気まずい。


どちらからも声を出せずに少し無言の時が流れる。ちらっと見てみるが、リセルはこっちをじっと見つめていた。ふっとまた目を逸らしてしまう。

その俺を見てだろう。ツカツカと歩く音が聞こえる。


「イレ≪提案があるのだけれど≫、なんだよ!被せてこないでくれよ!」


朱雀がリセルの顔の前に飛び出してきて話を中断させようとする。


≪そうは言ってもイレブンがこの調子では話し合いがしっかり出来ないでしょう?≫


「そうだよ!だからイレブン!」


≪ちょっと落ち着きなさいな≫


俺に話しかけようと目の前の朱雀を避けるようにリセルは話しかけてくるが、もう一度朱雀はその顔の前に出る。どんな顔をすれば良いか分からない今の俺にはありがたい。


≪一度あなたたちの生活場所へと行きましょう。私もあの子もついて行けるし、体を休めましょう?その間に私も少し集中してやりたいことがあるから、安全なところに案内してほしいわ≫


今後の方針にもなるでしょうし、私も他の神獣たちが無事が調べたいのよと続いたため、俺もリセルも同意せざるを得ない。

放置したくなかったので装置をアイテムボックスに入るか試すと今回は収納できた。


≪さっきまでその中にいたからね≫


神獣も生物判定なのだろうか。それでも火口付近は目印になるので、楔を打ち込んでおく。初めて作業を見るリセルは横に座ってじっと見ている。


「やりづらいんだけど」

「別に触ってもないし、見てるだけだろ。見るのは初めてだし」

「うん、まあ、そうだろうけど」


特に問題無く作業終了するとすぐに獣人の村へと接続する。さっきは通らなかったが、火の大精霊の作った球体は無くなったし今度は通ることが出来た。


≪では、イレブンさん≫


「はい」


≪あなたは一晩頭を冷やしてきなさい。冷えたなと思ったらしっかりと考えていらっしゃい。明日の昼頃に戻ってくれば私の用事も終わっているでしょうから≫


「え」


≪リセルさんは家の中に案内してもらえる?こちらの家なのかしら?≫


「いや、そうだけど。体が言うこと聞かない?ぼくはイレブンと話が!」


≪仮にも神獣の一角ですもの。油断してる相手を思い通りに動かすくらいはなんてことないわ。それにあっちは今使い物にならないわ。あなたとも話したいことがあるのよ。こっちにいらっしゃい≫


そういえば朱雀が話があると呼び出されたんだったか。その話から始まって装置の解体、兵隊との戦闘、要塞を崩して、神獣の登場と中々に濃い一日だった。一番の衝撃はリセルが女性だったことだけど。


考えている間に扉がパタンと閉まる。


周囲にはフレンドビーたちが飛んでいる。もう日が沈んでいるので彼らも巣の中にいたのだが、俺の声を聴いて出てきてくれたようだ。一応何でもないからお休みと伝えておく。

家の中からは蜂娘たちの声が聞こえる。サイズが合わないから彼女たちは家の中に別で場所を作っているのだ。朱雀が心配でも外に出ないようにと伝えている。わざと聞かせてないかな。


無性に体を動かしたいので、再度空間を繋げて火口付近へと戻る。


「とりあえず頭の中が空っぽになるまで魔物を相手しよう。一晩くらい余裕で戦闘できそうだけど」


火山付近の魔物たちにとっては悪夢の一夜が始まった。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


気が付けば太陽が昇ってきて周囲が明るくなってきていた。


「朝か」


本当に一晩中魔物を相手に戦っていた。常時全力で『挑発』を使っていたので、魔物は寄ってきてくれた。魔物でも昼夜問わずに襲い掛かって来てくれた。

底上げした筋力は3度当てればほとんどの魔物を葬ることが出来るようになり、一桁多くなった魔力のおかげで弱めに放った魔法でもきれいに貫通するほど威力が高くなっていた。


常時回復の魔法をかけておくと疲れ知らずで活動できるようになり、もはや自分が化け物級の強さになっていることを自覚した。


「気を抜けばちゃんと疲れてるし、眠いんだけどな」


周囲に散らばっているドロップはざっくりと『念動魔法』でざっくり拾って収納していく。ゲームセンターのクレーンゲームみたいな感じだ。アームは非常に強いので落とすことは無い。

拾いに行かなくなって楽だ。拾い漏れは鑑定で周囲を見るとアイテムがひっかかるので同じように回収していく。


ここまで完全に荒らしたので、さすがに『挑発』をやめる。あとこのあたりでやっておきたいことはあっただろうか。


「リセルが凍らしていた車両を回収しておくか」


少し移動する。結界の硬度は知らないが、結界の上に乗っての移動速度は上がっている。今まで意識せずに出していた速度が自転車よりも少し速いくらいだったすると、確実に自動車くらいの速度だ。

気合を入れれば高速道路を走るくらいの速度が余裕で出せてしまう。移動が専ら自転車か電車の学生だったから速すぎるのは少々恐怖を感じる。高いのはなんとなく平気だが、速いのは事故を起こしたときのことを考えて少し怖いのだ。


「俺って強くはなってるけど、中身はそうでもないな」


ザールさんや何ならデテゴの方がどっしりと構えていると思えてしまう。実際のところはそうだと言い切れるし。デテゴの呼び捨ては向こうが皇子モードでない限りはやめないけど。


「そうか。他の人たちは知っていたんだろうか。それこそメディさんやサティさんはすごくリセルに良くしてくれていたんだから」


話をしに行ってみよう。どうしたら良いかなんて情けない悩みも聞いてもらえるかもしれない。少なくとも謝りたいという相談くらいは乗ってくれるかもしれない。

しかし夜明けの時間ではまだ起きていないかもしれない。少し時間を潰してからだ。残っていた車両を回収していく。氷が溶けたら入れることが出来た。全部回収したところでかかった時間は10分そこそこ。

まだ人を訪ねて行って良い時間ではない。


「要塞の様子も見に行くか」


行く前に色々と通用するかを試しておきたい。アイテムボックスからアーマースーツと下に来ていた絶縁スーツとやらを取り出す。木材を雑につなぎ合わせて人の体部分に似せた作りを作って装着させていく。

スキルでそこそこ出来るようになったはずだが不格好感が否めない。


「俺にはどうせ不器用ですよ」


数値は上げられるが根本的な部分のセンス、才能といった何かは変えられないらしい。戦闘で役に立つならそれでいいと心の中で負け惜しみをすると、思い付きで余った木材も同じように並べていく。


「『雷鎖』」


試しに使ってみただけなので、手元に出現したのは青白く光る雷属性の球が1つだ。肩幅と同じくらいの大きさで両手の間に収まっている。


「いけ!」


掛け声とともに、幾筋かの雷光が一筋が目標に向かって走って行く。さすがに雷光はまぶしく目を少し細める。

ほぼ同時にバヂンッという音が複数起こる。


「おし、予想通り」


発動は簡単に一言で済むが、この魔法のエグイところは目の前を見れば明らかである。捕らえた木人形だけでは足りぬと雷光は他の獲物にも手を伸ばす。

雷光一筋だけを玉から放出したが、木人形から他の4つの木材まで焼き尽くしている。


一撃目の命中なら絶縁スーツも貫通できるようだ。どちらかというと熱ダメージだろうか。10秒ほどで魔法の効果が薄れるといってもこれだけ熱が残ればダメージとしては良いだろう。


「早合点せずに最初から使っておいても良かったかもしれないな」


生物相手なら雷の継続ダメージや麻痺の状態異常も入るはずだ。しかも出せる雷球は1つだけでは済まないし、1連鎖だけで済ませたのは設置した目標代わりの木材が少なかったからだ。連鎖して雷が敵対象を追尾することが分かればそれでいい。


「もしかしたら既にやり過ぎるくらいのステータスになったのかな。他にもまだまだ上げるものは残ってるんだけどな…」


やり返す気が無くなるくらいに強くなれば無謀な企みはやめるだろうと思うので、抑止力として存在するのも良いかと思う。戦う相手がいなくなったら精霊や神獣に相手してもらうことを考えることにしよう。

人の世からはじき出されるならどこか人の来ないところで過ごすのも良いかな。趣味は無かったが、色々と今なら材料集めからやれそうだ。


「早くも老後の過ごし方についてまとまって来たよ。まずは目の前の課題だろうよ」


後片付けを済ませると要塞の方へと飛ぶ。朝ごはんのパンは味がしなかった。

お読みいただきありがとうございました。

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