先に要塞を動けなくする
お楽しみ頂けると幸いです。
間接的にというなら、いつも通りに球だろうか。水の球をとりあえず準備してみる。上空へと飛ばす。頭の大きさくらいではすぐにはバレないだろう。
1つだけだと確認中に邪魔されてしまうか。残り人数分を用意すると急いで飛ばす。上空から一気に落として頭に被せる。あ~、やっぱり10秒くらいで解除されてしまうか。
すごく探されている。休憩できたしもう確認はいいか。
「多連氷槍」
地上にいた全員を沈黙させたのと同時に、要塞から追加の兵士がワラワラと出てきてしまった。
呑気に休憩しすぎた、いや速攻で戦闘を終わらせなかった代償か。
「じゃあ倒しに行くか。ん?」
余計に何か別のものが出てきた。今までとは武装のレベルが違う、今までのが一般兵ならエリート部隊ってところか。攻撃力が上がっていても攻略は同じかな。
あれ?こっちに銃口を向けてるな。居場所がバレて…る?。正に発射前だったので、取得しておいたスキル『縮地』で急いで避ける。
10メートルだけ瞬間移動のように動くことが出来る。移動スキルだがそのうち攻撃にも使えるようにしたい。
回避の数瞬後にいた場所が熱線で溶かされる。お~、結界も張って強化していたはずなのにドロドロに溶けて溶岩だ。…熱いからもっと離れよう。
一応まだ身を潜めて確認していると、先に俺を仕留めたかの確認作業に入るらしい。ということは居場所を完全に特定できているわけでも、今の俺の動きは捕捉されてないのか。
出てきた兵士は警戒範囲を決めて防御態勢、その間に救助と回収を行っていく。ん~。一人ずつを相手するのは無理だな。リセルの方には、一応結界も気休めで置いてあるけど特に問題無しか。
ただ、さっきの司令官を落とし穴に落としただけでは納得できない。報いは必ず受けさせるとして手を2つ打たせてもらうとしよう。
水球を2つに火球を1つ飛ばす。なるべく早くで飛ばしたので狙い通りに飛んでいった。最初に指示してきた偉そうなやつには火球を、その取り巻きのやつには水球をかぶせる。
わ~、苦しんでるな~。これは死んだか?おっと、さすがに対応が早い。10秒と持たずに解除されてしまった。
じゃあ、もう少し時間あるな。もう1つの作業といきますか。
見つからないように『縮地』をくり返す。見つからないように一旦離れる方向へと移動して、その後で方向転換して要塞の正面から左側面へと回り込んだ。
監視カメラみたいなものがついていてもおかしくないので、姿だけは隠しておく。単身で要塞に戦いを挑むってすごいことをしていると改めて思うが、だからこそ手を抜いてはいられない。普段使わないようなスキルをドンドン使っていこう。
「要塞全体に重力魔法は不可能だけど、工夫次第で動けなくするくらいは簡単なんだよね。『大地魔法』」
土魔法を強力にした上位互換だ。嵐魔法と同じで規模が大きい魔法になってしまう分、使う場面は限られてくる。単独でない限りはあまり使えないね。これを使って要塞が乗っている地面の下を空洞にしていく。
これで俺が今いる側の大地はもろくなっている。要塞みたいな重いものが乗っていればどうなるかは自明の理だ。ただ、1つだけ難点があって。
はやく逃げないと俺も潰されてしまうってこと!
ピシピシといった不吉な音が聞こえてきたので、魔法の行使は終了させて急いでその場を離れる。理想では斜め45度に傾かせた状態で空洞にはめるイメージだがその通りに行くかどうかは知らない。
やがて要塞の下が崩れていき地割れに飲み込まれて要塞が傾いていく。俺がもう少し離れるまで待っていてほしい。あとは正面で探していた奴らの様子も見に行きたい。
全体像が見えていないので分からないが、斜めに落ちかけているけどなんとか落ちずに引っかかっている状態になったようだ。成功である。誰かとハイタッチしたい。
本来なら地震や地割れを起こす魔法なのだからこれくらいは出来て当たり前だ。地震なら出身国の関係上、あまり大きくないものなら慌てずに受け入れられる。が、ここではどうだろうか。地震って外国人もかなり驚くらしいからね。
あんまりやりたくない手ではあるが、こんなものが簡単に移動できるような状況は見過ごせないし、要塞からの援軍もごめんだ。
そう考えたら引っかかってるくらいで止めたらすぐに動けてしまいそうだな。もっと埋めるか。少し距離はあるが、再度同じ要領で仕掛けていく。何度か繰り返すことで完全に45度の状況を作り出すことに成功する。
これではまともに動かすことは出来ないだろう。ここまでくると楽しくなってきた。砂場で棒倒しをやっていて、特別ルールで倒したら勝ちって感じだ。
「どれくらい揺れるのかは知らないけど、やってみないと分からない。いくぞ!『地割れ』!」
最初は加減が分からなかったので少し要塞が揺れたなってくらいだった。でもその感覚は俺だけだったらしい。正面の方から聞こえてくる声から悲鳴がうっすら聞こえた。副産物の地震が怖かったみたいだ。要塞には変化無し。
要塞に被害を出したいので、もう一度今度はさっきよりも強めにMPを込める。要塞が一段ズンと音を立てて沈み込んだ。これで簡単には動けなくなっただろう。
すぐに移動したかったので結界で宙に浮いて正面へと移動した。既に要塞から確認できるはずだったが、砲台から攻撃を受けることなく正面へと回る。
さすがにエリート部隊はしっかりと立ち上がっていたが、一般兵は何とか立ち上がろうとしているところで、顔面火だるまにしたやつは腰が抜けて立てていなかった。
お互いに姿が見えた段階で存在は確認している。
「これで逃げられない状況になったけど。まだやる?」
返事の言葉は無かったが、武装を構え直してきたことが意思の確認となる。この状態でまだ戦闘の意思がくじけないのはすごいと思う。
じゃあ俺も改めてここからは出し惜しみ無しの全力で対応しよう。
エリート部隊はさすがに練度が違う。構えからの射撃が早く狙ってくる。避けたところで掛け声も無く連携してくるので避けるのがかなりきわどい。
当たり前のように弾丸には魔法無効の加工がしてあるようで結界も意味を為さない。服の端を少しずつ削られていく。
その様子を見て喜んだのは腰抜けだった
「結局はそんなものか!我々の技術の前にひれ伏すのだ!ただでは死なさんぞ。屈辱を与えてやるからなぁ。くっくっく」
せめて立てるようになってから言ってもらいたい。
この状況を作ったのが俺だってことが分かっていないのだろうか。影響の大きい魔法は発動には少し時間が必要だから『地割れ』みたいな大きい魔法は使えないけど。
「これくらいは出来るよ」
避ける際に地面に手を置いた時にいくつか指先くらいの小石を拾う。それを避けるついでに投げて銃口に詰める。ある意味実験だったけど、それは成功する。暴発して銃が爆発する。
「お~。ラッキーだね」
思惑通りにいってくれると楽しいとはこういうことだろうね。動揺から手を止めてくれる。その間に足元の岩を砕いて良さそうな大きさの石を拾う。それに手に持っておく必要はない。すぐに投げられるように手の近くに浮かせておくくらいはいくらでも出来る。
こうなると向こう簡単にこっちに銃を構えるわけにはいかなくなる。そうなると次の手段は接近戦で足止めしつつの狙撃かな。
「何をしている!攻撃の手を緩めるな!」
状況が分からないバカが改めて援護してくれた。エリートだろうと感情はあるから苛立ちも戸惑いもする。何人かがバカの方へと目線を切る。ありがたい。
『縮地』で一番近いところに立っていた奴を沈める。装備が良かろうと頭部に一撃与えれば一時的に行動不能にすることくらいは出来る。あとは距離を調節しながら一人につき一発ずつで戦闘不能へと追い込んでいく。痙攣しているから防御性能は一般兵のものよりも良いようだ。
「さて、援護ありがとうね。声を出してくれたおかげで攻撃する隙が出来て助かったよ。じゃあ詳しく教えてくれるかな。俺の相棒に手を出したのはお前か?」
お読みいただきありがとうございました。




