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魂(コン)からのお願い  作者: 早秋
第2章
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(34)処分の内容

 カイトがセプテン号で精霊機関の勉強を続けていると、ガイルに持たせていた通信用の魔道具から連絡があった。

 ちなみに、その魔道具はもともとセプテン号に備え付けられている物だ。

 その内容は、すぐに海運ギルドに来るようにということだった。

 呼び出しの理由が例の件だということを伝えられたカイトは、公爵からではなく海運ギルドからというのが引っかかって内心で首を傾げた。

 だが、わざわざガイルが呼び出してきたということは、自分たちにも関係しているということは分かる。

 その内容によっては、セイルポートから拠点を移すことにもなるので、勉強中だったカイトは少し急ぎ目で海運ギルドへと向かった。

 

「――よう。来たな」

 カイトとガイル、そして当然のようについてきたメルテが案内された部屋に入ると、レグロが軽い調子で右手を上げながらそう言ってきた。

 案内された場所はいつもの会議用(?)の部屋で、レグロは自分が座っていた椅子の前の席を三人に勧めた。

「例の件で呼び出しということですが、何か問題でも起こりましたか?」

「いんや。問題というよりも、確認だな」

「確認……ですか」

 いまいち意味が分からずに首を傾げるカイトに、レグロは一度頷いてから言った。

「商会の件は、元はといえばお前さんたちが発端になっているからな。きちんと知らせておいた方がいいだろう?」

「順番で言えば、私たちが先というわけではないのですけれどね」

 確かにカイトがクリステルに言伝を頼んだからこそ、公爵も問題に気付けたということはある。

 だが、自分が間に入らなくても、いずれはクリステルが公爵に話をしただろうとカイトは考えている。

 

 そんなカイトに、レグロは首を左右に振った。

「いや、誰が最初にきっちりと報告したかが重要なんだが……まあ、そこは別にいいか。いま重要なのはそこではないからな。――公爵家から商会たちに対する処分の内容が打診されたが、確認してほしい」

「えええ……? それこそ、一オーナーには関係ない話だと思うのですが……」

「何が一オーナーだ。公爵様から直接確認されたほうがいいのか?」

 半ば脅すように言ってきたレグロに、カイトは深いため息を返した。

 それはレグロに対する文句ではなく、実際にありそうだと想像したからこそのため息だった。

 

 公爵から直接確認されるよりは、海運ギルドを通してカイトも確認済みだと伝わった方がまだましだ。

 そう考えたカイトは、改めてレグロを見ながら聞いた。

「それで、どんな内容になっているのですか?」

 カイトの問いに、レグロは一枚の紙を取り出してから差し出してきた。

 

 その紙には、処分の内容が書かれている。

 それをざっと見たカイトは、驚きをもってその内容を確認した。

「――――随分と思い切った処分ですね」

「まあな。俺もそう思うが、どちらかといえば、見せしめも含まれているのだろうな」

「ああ、なるほど」

 一通り確認を終えたカイトは、その紙を右隣に座っていたガイルへと渡した。

 そして、それを見ていたガイルも、カイトと同じように驚いている。

 

 そこに書かれている内容は、以下のようなものだった。

 大手の商会、特に中小の商会に対して買取の制限を主導していた商会に関しては、ヨーク公爵領内では○年間商品の買取は禁止。

 〇の中は、それぞれの商会の罪の重さによって変わって来る。

 特に、今回の件の主導的立場にあったミニッツ商会は、十年間という長い期間が設けられている。

 領内で商売をするのは可能だが、外からの商品の買取を制限された以上、これまでのような活動はほとんどできなくなるのに等しい。

 ミニッツ商会に限らず、交易品の買取を制限していた商会は基本的に大手の商会だったため、この先何年間で領内の商会の勢力図は大きく変わる可能性がある。

 制限されているのはヨーク領内だけとはいえ、そもそもの交易量が多いだけに処分を下される商会のダメージは非常に大きくなることが予想できる。

 

 それらの内容を頭の中で反芻したカイトは、もう一度ため息をつきながら言った。

「思った以上に重い処分だったとは思いますが、本当に大丈夫なのでしょうかね?」

「さて。大丈夫と判断したからこそ、こっちに送ってきたと思いたいがな」

 セイルポートで活動していた大きな商会がこれまでのような活動ができなくなると、領内での商取引が停滞する可能性がある。

 勿論、ミニッツ商会やその他の商会の活動が制限されたのを見計らって、これまでセイルポートへ参入を見送っていた商会が入って来る可能性もあるだろう。

 それでも、これだけ一気に大手の商会の活動が停止すると、セイルポートで大きな混乱が起こるのは免れないはずである。

 処分を免れた中小の商会が大手の商会のパイをすぐに奪うことができればいいのだが、そう簡単にはいかないだろう。

 

 ただ、その程度のことは公爵家でも十分に検討されているはずだ。

 ということは、ヨーク公爵は今回の処分で起こる混乱を、どうにかして収める算段があるということになる。

「…………何か、嫌な予感がするな」

 思わずそう呟いたカイトに、ガイルとレグロが同時に顔を見合わせてから頷いた。

「大丈夫だ。その予想は間違っていないと思うぞ」

「安心するといい。俺も同じことを考えたからな」

「いや、全く安心できないのですが……?」

 ジト目でそう応じたカイトに、ガイルとレグロはどうすることもできないという表情になっていた。

 

 カイトが……というよりも、三人が同時に考えているのは、公爵が今回の件を利用して新たな商会を立ち上げるということである。

 公爵家で直接商会を運営すれば、今回のような件は起こらなかった可能性は高い。

 その上で、さらに新しい商会が参入してくるのを今まで通りに許可をすればいい。

 そうすれば、公爵家で作った商会だけが領内での取引を独占することもなく、他の商会の動きもけん制することができる。

 

 問題があるとすれば、その商会の運営を誰に任せるのかということだ。

 ここで、カイトが感じた嫌な予感が関係してくる。

 神のコンと契約をしているカイトに、その商会のトップになってくれないかと頼んでくるのではないかということだ。

 そして、その考えは残念ながらガイルとレグロも同じだったというわけである。

 

 本気で頭を抱え始めたカイトに、レグロは苦笑を返した。

「多分だが、普通に断っても大丈夫だと思うがな。というよりも、公爵もお前さんが断ることを前提に動いているだろう」

「だと、いいんですがね……」

「一度は公爵の専属になることを断っているお前さんだ。打診はしてくるだろうが、受けるとも考えていないだろう。――いや。もしかしたらそれとは別に、新しい商会を作るように言ってくるかもしれないか」

「ああ、それはあるでしょうね」

 カイトは公爵に、セプテン号で得た交易品を元に、将来的には商会を作る可能性があることを話している。

 それを前倒しにしてくるように勧めてくる可能性は十分にあるだろう。

 

「……いやいや。公爵と話もしていない今からこんな話をしても仕方ないですか」

「まあ、それもそうだな」

 公爵家から送られてきた紙一枚だけでこんな予想を立てても仕方ないと割り切ったカイトに、レグロは肩を竦めて頷いた。

 今まで話をしていたことは、あくまでもいくつかある可能性の一つでしかない。

 勿論、それを予想して対策を立てておくことは重要だが、それだけに囚われてしまうというのも駄目である。

 いずれにしても公爵から直接話を聞くこともあるだろうと、カイトはむやみにおびえる(?)のは止めようと開き直るのであった。

個人ではなく商会全体への罰になりました。

商会に対する業務停止命令は、かなり重い罰です。

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