5.5.The Little Sister Was Here!
妹参上\(^o^)/
***
〜レイリ視点〜
気がつくと、教室ではない真っ白な空間に立っていた。
クラスのみんなも驚いて、不安そうにしている。
兄様は──先生の方を見ている?なぜ...?
と、その時さっきまで誰もいなかった場所に人形のような少女が立っている。
神宮くんがその女の子と何言か話した後、
私の周りからクラスメイトたちが消えた。
***
少女は異世界の女神様らしい。
それで、私たちは異世界に勇者として召喚されることになった、と。
「えっ、と、私たち31人が勇者としてアーラスフィア、に召喚されたということですか?」
「ん?ああ、正確には勇者召喚されたのは5人だけだよ」
「5人?」
「うん。君と、あとさっきわたしに質問してきた子と、体の大きい男の子と、君の隣にいた2人の女の子。それで5人」
私と神宮くんと天霧くんとコユキとロウカ、か。でもなんでこの5人...?
戦闘力なら間違いなく兄様やルカが選ばれるはず...
「んー、君...というか君たちには、何か特技があったりとか特徴的な性格をしてるんじゃないの?」
RPGなんかの典型的な勇者パーティを考えると、、、ああ、確かに。
神宮くんのあの正義感は勇者らしいし、ロウカは頭の回転が速くて落ち着いているから魔法使いね。コユキは癒し系だから僧侶...回復職で、天霧くんは拳で戦う戦士、っところか。
でも、私は...?
私の出来ること...槍?
勇者パーティに槍使い、ってあまり無い気がするけど...
「他の26人はどうなるんですか?」
「ああうん、他の26人には私が力を与えてアーラスフィアに送るよ〜。君たちとはバラバラになると思うけど」
まあ、兄様やルカならば問題ないだろう。
それから女神様(名前は無いらしい)は、アーラスフィアについて少し話してくれた。
「わたしは君たちが召喚された理由までは分からないからね、詳しくは向こうで召喚した人間に聞くといいよ」
そういって彼女は腕を差し出すと、私の身体が柔らかい光に包まれる。
「──アーラスフィアへ、いってらっしゃい〜」
***
気がつくと、私は石でできた部屋のようなところに居た。周りには4人──神宮くんと天霧くんとコユキとロウカもいる。
「おお、成功したぞ!」
「勇者様だ!」
私たちの周りを囲んでいた魔法使いや騎士のような恰好をした人たちが騒ぎ出す。
よく見ると私たちの足下には召喚魔法の魔法陣と思われる何かが描かれていた。
と、周りを囲んでいた人たちを押しのけて、1人の女性が私たちの前に出てきた。
赤い髪をした美女。年の頃は私たちより少し上、18歳くらいだろうか。なかなか性格のキツそうな雰囲気だ。
それに妙に煽情的な恰好をしていて、その豊かな双乳が強調されている。
「私はここ、サラザール帝国の第1皇女、アミラ・サラザールと申します。初めまして、勇者様方」
そう言って蠱惑的な笑みを浮かべる。
やはりお姫様だったか。この辺りは最近のネット小説なんかのテンプレ通りだ。
まあ、若い女の子を出すのが一番警戒心を弱める、と思っているのだろう。
硬派な天霧くんは特に反応しなかったが、神宮くんは若干鼻の下を伸ばしていた。
あと、ロウカが結構イライラしていた。
...胸小さいからね、ロウカ。
アミラさんに連れられて皇帝のいる玉座まで案内してもらった。
皇帝を一言で表すのなら、野心家。偉そうなのは偉そうだったのだけれど、それ以上に強い野望というか、支配欲のようなものを感じた。
私たちを召喚した理由は二つあるらしい。
まず一つは、極北にある大陸、魔大陸で復活したと思われる魔王の討伐と、魔人族の殲滅。彼らはこの人間の住む中央大陸を征服しようと試みている、らしい。
二つ目は、世界史でよく聞いたような話。曰く、かつてこの大陸はサラザール帝国の皇族が治めていたにも関わらず、今は他国の蛮族によって土地を奪われてしまった。だからその奪われた土地を取り返したい。
メインの理由は二つ目だろう。明確な悪が分かりやすい一つ目の話を先に持ってきて、二つ目も正当性のある理由に見せようと試みているが、ようは侵略戦争に参加しろ、ということだろう。
そもそも一つ目の話にしても、情報が不確かというか、曖昧で勢いだけな部分が多すぎる。魔王が復活したというのは本当かもしれないが、魔人族がこの地を征服しようとしている、というのはかなり信憑性が低いように感じた。
......皇帝は非常に話をするのが上手く、神宮くんなんかは完全にその気になってしまっていたが。
一通り話をした皇帝が言う。
「それでは、そなたたちのステータスを教えてはくれまいか?」
ステータスについてはみんな女神様から教えられていたようで、じっと念じてみる。
(【ステータス】)
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《名前》Reiri Lindwulm
《年齢》15
《種族》人間族(地球人)
《天職》槍聖
《職業》サラザール帝国所属勇者
《称号》【兄を想いし妹】【異世界からの来訪者】【槍を極めし者】
《レベル》1
《能力値》
生命:118
魔力:180
筋力:96
耐久:89
器用:207
敏捷:152
知能:230
精神:242
知恵:167
魅力:314
《スキル》
【槍術】Lv.5
【棒術】Lv.4
【気配察知】Lv.3
【隠密】Lv.3
【料理】Lv.4
【家事】Lv.3
【威圧】Lv.3
【気品】Lv.3
【縮地】Lv.3
【鑑定】Lv.3
【武器鑑定】Lv.2
《特殊スキル》
【聖槍技:下】【魔槍技:下】【狂槍技:下】【成長補正:中】【限界突破】
《固有スキル》
【悪を穿つ断罪の槍士】
【絶槍】
**
【兄を想いし妹】・・・
いや、確かに私は自他ともに認めるお兄ちゃん子ではあるのだけど、こうして評価されるとさすがに少し恥ずかしい。
**
【兄を想いし妹】
兄に対して非常に深い愛情を持つ証。
兄と行動を共にしている時、筋力値と耐久値と器用値が10%アップ、
していない時は知能値と精神値と知恵値が5%アップ。
【悪を穿つ断罪の槍士】
特殊スキル【聖槍技】【魔槍技】【狂槍技】を取得する。
槍系、近接戦闘系スキルに関する才能(Lv.10まで到達できる)
【絶槍】
槍系、近接戦闘系スキルに関する大幅な成長補正。
ただし、槍系武器(槍斧、投槍含む)以外の武器を装備出来ない。
敏捷値に補正がかかる。
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まあこんなものだろうか。
4人も初めて見る自分のステータスに戸惑ったり驚いたりしている。
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《名前》Rinto Jingu
《年齢》16
《種族》人間族(地球人)
《天職》勇者
《職業》サラザール帝国所属勇者
《称号》【正義漢】【熱血漢】【異世界からの来訪者】【勇者】
《レベル》1
《能力値》
生命:124
魔力:260
筋力:186
耐久:191
器用:141
敏捷:199
知能:207
精神:118
知恵:147
魅力:294
《スキル》
【剣術:両手剣】Lv.3
【気品】Lv.3
【魅了】Lv.3
【鑑定】Lv.3
【信用】Lv.5
【根性】Lv.3
【負けん気】Lv.4
《特殊スキル》
【成長補正:特】【聖剣技:下】【魔剣技:下】【聖属性魔法:下】【限界突破】
《固有スキル》
【秩序と正道と勇気】
【絶対正義】
**
【秩序と正道と勇気】
特殊スキル【聖剣技】【魔剣技】【聖属性魔法】を取得する。
剣系スキル、近接戦闘系スキルに関する才能(Lv.10まで到達できる)
【絶対正義】
剣系、近接戦闘系スキルに関する大幅な成長補正。
ただし、剣系武器以外を装備することが出来ない。
魅力値に補正がかかる。
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《名前》Roka Etuki
《年齢》16
《種族》人間族(地球人)
《天職》魔導王
《職業》サラザール帝国所属勇者
《称号》【絶壁】【異世界からの来訪者】【魔導を極めし者】
《レベル》1
《能力値》
生命:128
魔力:800
筋力:74
耐久:68
器用:121
敏捷:119
知能:704
精神:608
知恵:407
魅力:282
《スキル》
【分析】Lv.4
【観察眼】Lv.4
【鑑定】Lv.3
【威圧】Lv.2
《特殊スキル》
【成長補正:中】【特殊詠唱:下】【複合魔法:下】【魔法連立:下】【戦術脳】【限界突破】
《固有スキル》
【全属性使い】
【絶対冷静魔女】
**
【全属性使い】
特殊スキル【特殊詠唱】【複合魔法】【魔法連立】を取得する。
全属性の魔法と、魔法に関するスキルの才能(Lv.10まで到達できる)
【絶対冷静魔女】
特殊スキル【戦術脳】を取得する。
全属性の魔法と、魔法に関するスキルの大幅な成長補正。
ただし、近接武器を装備することが出来なくなる。
知能値、知恵値に補正がかかる。
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《名前》Koyuki Hachinose
《年齢》15
《種族》人間族(地球人)
《天職》聖女
《職業》サラザール帝国所属勇者
《称号》【癒し系】【異世界からの来訪者】【守護と治癒を極めし者】
《レベル》1
《能力値》
生命:106
魔力:740
筋力:69
耐久:63
器用:308
敏捷:119
知能:507
精神:825
知恵:422
魅力:346
《スキル》
【警戒突破】Lv.4
【魅了】Lv.4
【鑑定】Lv.3
【薬品鑑定】Lv.3
《特殊スキル》
【成長補正:中】【聖天魔法:下】【修復魔法:下】【特殊薬品生成:下】【結界魔法:下】【限界突破】
《固有スキル》
【聖なる乙女の誓い】
【絶対結界】
**
【聖なる乙女の誓い】
特殊スキル【聖天魔法】【特殊薬品生成】を取得する。
回復魔法や回復系スキルに関する才能(Lv.10まで到達できる)と大幅な成長補正。
ただしメインの武器を装備することができない。
精神値に補正がかかる。
【絶対結界】
特殊スキル【修復魔法】【結界魔法】を取得する。
物作りに関する才能(Lv.10まで到達できる)と大幅な成長補正。
器用値に補正がかかる。
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《名前》Masayoshi Amagiri
《年齢》16
《種族》人間族(地球人)
《天職》拳聖
《職業》サラザール帝国所属勇者
《称号》【硬派】【脳筋】【異世界からの来訪者】【拳を極めし者】
《レベル》1
《能力値》
生命:207
魔力:80
筋力:354
耐久:381
器用:74
敏捷:158
知能:62
精神:189
知恵:67
魅力:124
《スキル》
【拳闘術】Lv.4
【体術】Lv.4
【見切り】Lv.4
【威圧】Lv.4
【不屈】Lv.3
【鑑定】Lv.3
【気配察知】Lv.3
【根性】Lv.3
《特殊スキル》
【成長補正:中】【聖闘技:下】【魔闘技:下】【超肉体】【狂戦士化】【限界突破】
《固有スキル》
【男ならコブシで】
【絶対腕力】
**
【男ならコブシで】
特殊スキル【聖闘技】【魔闘技】【超肉体】を取得する。
格闘術系スキルの才能(Lv.10まで到達できる)
ただし、ガントレット系武器以外の武器を装備することが出来なくなる。
耐久値に補正がかかる。
【絶対腕力】
特殊スキル【狂戦士化】を取得する。
格闘術系スキルの大幅な成長補正。
筋力値に補正がかかる。
**
私たちのステータスを聞いて場が沸く。
「おおっ、さすがは勇者様方だ!」
「素晴らしい!!」
神宮くんの成長補正が私たちより2段階上だったのは、称号【勇者】によるものらしい。
ロウカが称号の話の時苦い顔をしていたが、私の【兄を想いし妹】のような何か変な称号でもあったのだろうか。
...まあ、私の称号も地味に使えるものだったので、特に問題は無いだろう。
私たちの天職などを聞いて、自分の思惑通りとばかりにニヤニヤする皇帝。
と、そんな皇帝に神宮くんが何かを思い出したように口を開く。
「ああ、そういえば皇帝陛下。実は私たち5人の他に──」
「凜将ッ!」
ロウカが発言を遮る。そして少し焦るように首を横に振る。
...ああ神宮くん、それは確かに話してはダメですよ...
並外れた才能を持っていても戦闘能力自体はまだそこまでではない私たちは、しばらくの期間この国の軍に訓練してもらうことになる。
住まいはこの帝宮の客室を使えばいいということで、とりあえずその場は解散になった。
***
侍女の方に部屋まで案内された後、私たちは一旦ロウカの部屋に集まる。
「凜将、あんた少しは頭使いなさい。なぜあの場で残りのクラスメイトの話をするのよ」
「なぜって、だってみんなバラバラになっちゃって心配だろ?」
「はぁーっ。あんたねぇ、私たちの事情を全然理解出来ていないわ。もし仮にあの場でクラスメイトの話をして、誰かしらが見つかったらどうなると思う?」
「?どうって...帝国に保護されて、俺らと合流出来るだろう?」
「それが甘いって言ってんのよ。クラスのみんなも私たち同様まだまともには戦闘能力を有していないのよ?帝国にその子を人質に取られて、私たちに勇者としての役割を強制されることもあり得るわ」
「っ!て、帝国がそんなことする訳が...」
私はここで口を挟む。
「いえ、どうでしょうか。さっきの話も大分怪しかったですし、何よりあの皇帝と第一皇女はかなり胡散臭かったです」
「そうね、それにこの部屋まで案内してくれたメイドもしきりにこちらの様子を伺うような感じだったし、もしかすると私たちが召喚されたのを知っているのはこの国のトップや一部だけなのではないかしら?少なくとも公にはなっていないはずよ」
「そ、そんなこと、」
「それに、普通だったらこの帝宮を好きに見て回っていい、くらいは言うのではないでしょうか。私たちの行動は常に監視されている、くらいは考えた方がいいかと」
「こ、この部屋は大丈夫なの?」
コユキが不安そうな声を出す。
「えぇ、この部屋は多分大丈夫です。見られている気配がしませんし」
そこで、ロウカがぱんッと手を叩く。
「とにかく、この帝国は要注意ってこと。四人とも、あまり不用心なマネはしないように」
私たち4人は頷く。
「それで、これからどうするんだ?いくらなんでもクラスのみんなをこのまま放っておく、って訳にはいかないだろう?」
「もちろんよ。ただ、今私たちが一番重要なことは力をつけることね。とにかく力をつけて、この帝国内での発言力を上げる。それで帝国に多少の影響力をもつようになったら、残りのクラスメイトの捜索について話す。もしかしたらそれまでに私たちの存在が世界中に公になるかもしれないし」
うん、やはりロウカは頼りになる。
「みんな大丈夫かなぁ...」
コユキが心配そうな顔をする。
「きっと大丈夫ですよ。ほら、みんな強かだし」
「そりゃ、レイリちゃんが一番心配な龍ヶ崎は絶対大丈夫でしょぉ...」
まあ、兄様ならば全く問題ないだろう。
「兄様なら、もしかすると私たちがここにいると推測してすぐに来るかもしれませんね」
「あ、あり得る...」
そういってコユキは苦笑いする。
兄様の話題が出て若干顔を歪めている神宮くんは無視しておいた。
窓の外を見やる。
──兄様は、今頃この空の下のどこにいるだろうか。
──いや、きっとまた直ぐに会えるに違いない。
とりあえず、これで最初の章は終わりです。
次回からはランヤの話に戻ります。
他のクラスメイトはおいおい...
3日ほど間を開けて投稿します。