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第四班と変わった親娘

兵舎の中に入ると中に居た兵士の人達が一斉にフェリスと千博の方を向いた。

「あいつがフェリスと噂の………」

「間違いない、あいつだ。」

「くそ………よくも俺らの班長をっ………!」

ところどころから声が聞こえてくるけどあんまり歓迎されてない気がする………。周りの視線を交わすようにしながらフェリスについて行くと一人の男がいた。身長は190センチ位だろうか、肩幅が広くて筋肉の塊の様な身体をしている巨漢だった。

「おう!フェリス、こいつが例の新人か?」

「うむ、そうだ。チヒロ、紹介しよう。彼はグスタフ・ダーヴィット。お前が所属する第四班の班長だ。」

やべえ、軽く決心揺らいだよ……。何あれ?何この筋肉?ちょっと近衛兵団に入るの甘く見過ぎてたかもしれない………。

「あ……真中千博(まなかちひろ)です。宜しくお願いします………」

「ん〜?元気が無いな、緊張してるのかな?」

そりゃするでしょ!心の中で千博は突っ込むが顔は多分愛想笑いで引きつったままだと思う。

「心配しなくていいぞ!俺たちは今日から仲間だからな。まあ仲良くしようや、チヒロ。」

「え、あ、ありがとうございます。」

良かった、随分といかついけど悪い人ではなさそうだ。この人の所なら安心できそうだ。

「で、だ。フェリス、本当にこいつは俺たちの班に配属で良いのか?あまり向いてる様には見えんけどなあ。」

「ああ、大丈夫だ。それは一度闘った私が補償する。」

何のことだ?何の向き不向きの事を話してるんだろう。

「あのさ、向いてるって何に?」

気になったのでフェリスに聞いてみた。

「ん?ああ、お前の入った四班は特殊戦闘兵といってな、兵団の中でも破壊力の最も高い兵の集まった班なんだ。」

「え………」

破壊力?攻撃力を飛ばして?千博は心配が込み上げてきた。自分でも今の自分はかなり強くなってると思うけど、こんなマッチョなおじさんが率いる班なら班員もマッチョに決まってる。俺の居場所がない気がするんだけど……。

「あ、フェリスじゃん。何してんの?」

と、そんな事を思っていると一人の女の子がやって来た。

「む、ミーツェか。久しぶりだな。」

フェリスが気さくに声をかける。ミーツェと呼ばれた女の子は身長はフェリスと同じ位だが髪はショートカットだ。

「いやー、最近見かけなかったから心配してたんだよ。何してたの?」

「ああ、ちょっと城の方に行っていてな。」

どうやらフェリスにしか用がないのか、千博とグスタフさんの方には目もくれない。

「そっか、ま、元気そうで何より……って、そいつは?」

ここでフェリスの隣に居た千博が気になったのか、尋ねてきた。

「あ、俺は真中千博。よろしく。」

「マナカ………。へぇ、じゃああんたが……。」

ここの兵舎の人達にはもう既に知らせられているのか、ミーツェも千博のことを知っている様だった。

「何だ、俺の事知って………」

突然だった。瞬間、千博は自分の視線が天井を向いているのに気づくのと同時に自分の足を払われたことを理解した。そのままバランスを崩して尻餅をつく。

「痛っ!何を………」

「何、こいつ。本当にこれでフェリスを倒せたの?隙だらけじゃんか。大したことないね。」

ミーツェは見下した様な目で千博を見下ろした。

「なっ⁈ それは今、油断してたから反応が………」

「そこがダメだって言ってんだよ。そんなんじゃすぐやられるよ?」

言い訳しようとするがミーツェに溜息混じりに遮られる。

「こら、ミーツェ!出会っていきなりそんな事をするやつがあるか!チヒロ、怪我はないか?」

「あ、ああ。別に大丈夫だよ。けど………」

そこで千博は思い出した。これから自分が入る戦場(せかい)がいかに油断ならないかを。

「確かに油断してた俺が悪かったかもしれない。これからは気をつけるよ。」

「ふん、何だそれ。少しは悔しがったらどうなんだ。」

「いや、これから先は命を懸けて戦わなければいけないんだから良い教訓になったよ。ありがとな。」

もしかしたらこの子は俺に気づかせようとしてくれたのかもしれない。そう思うと別に怒りは込み上げてこなかったし、寧ろ感謝したかった。

「ちっ!気に入らないな、なんか。………じゃあもう行くから。」

そう言ってミーツェはどこかへ行ってしまった。

「まったく、ミーツェはしょうがない奴だな。チヒロ、もっと怒って良かったんじゃないか?」

「いや、俺は感心したぞ。チヒロ、その素直さは強くなっていく上では大切な事だ。変な意地は張らないのが一番だ。娘にも見習わせんとな。」

フェリスは少し納得がいかなそうな顔だったが、グスタフ班長がそう褒めてくれる。

「へぇ、グスタフさんには娘さんがいらっしゃるんですか。」

気になったので聞いてみた。

「おう。一人娘で可愛がってきたんだけどな、見た通り今ちょっと反抗期でね……。辛いぜ。あ、あと俺のことはグッさんと呼んでくれていいぞ。みんなそう呼んでくれるからな。」

グッさんて……。まあ呼びやすそうだし本人が良いならそう呼ばしてもらうか。でもおかしいな、見た通りって何だ?俺まだグスタフさんの娘さんになんてあってないけど……。

「あの、えと……グッさん?」

「何だ?チヒロ。」

「俺っていつ娘さんと会いましたっけ?」

「ん?今会っただろ?」

ん?話が噛み合ってないぞ?

「フェリス、グッさんの娘さんってどこに居たっけ?」

隣のフェリスに聞いてみる。

「何だ、気づいてなかったのか。ミーツェだよ。」

「へ?」

ちょっと待てよ?ミーツェってさっきまでいた子だよな。そんな素振り全く無かったと思ったんだけどな。

「グッさん、本当ですか……?」

「うん。反抗期は寂しいもんだよな。」

遠い目でそう返すグッさん。

「いやいや、おかしいでしょ!反抗期とか言うレベルですかあれ⁈ 一言も喋ってないですよね⁈ ていうか視線すらくれてないっていうか……」

「お年頃なんだろうなぁ。しょうがないさ。」

「良いんですかそれで………」

なんだか酷く可哀想に思えてきた。でもまあ本人がいいなら気にしない様にしよう……。そう思う千博だった。

「さて、こんなところでゆっくりしてる暇もないな。そろそろ行くぞ、チヒロ。」

「え?どこにですか?」

「もちろん訓練場に決まってるだろ!さあ、たっぷり稽古をつけてやろう!」

グッさんはもうやる気満々だ。これからは忙しくなりそうだな。まあ、暇なのよりかは全然マシか。

「分かりました。頑張ります!」

「よぉし、その息だ!じゃあな、フェリス先に俺たちは入ってるぞ。」

「うむ、私も少ししたら行こう。ではな、チヒロ。頑張れよ。その、応援してる………」

「おう!頑張るよ!」

こうしてフェリスと一旦別れ、千博はグッさんと訓練場の方へ向かった。



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