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食事会と質問

2人が呼ばれた理由は食事だった。どうやらユリア女王は城の人達を呼んで千博とラッセルを歓迎する食事会を開いてくれたようだ。

「それでは我らが2人の恩人に感謝をこめて、乾杯!」

ユリア女王の音頭で夕食会が始まる。長いテーブルの正面に腰掛けるのはユリア女王、その隣に千博とラッセルが向かいあって座り、千博の隣にはフェリス、ラッセルの隣にはバルトさんが座った。出てきた料理は当然ながらコース料理で今までナイフとフォークなどファミレスくらいでしか使わなかった千博には難敵だった。隣でフェリスに教えてもらえたのが救いで、ラッセルもバルトさんに教わっていた。今メインまで来たところだ。

「ところでチヒロ殿、貴殿のいた国はニッポンと言うそうだがどこにある国なのだ?」

ユリア女王に質問されて一度ステーキを切っていた手をとめる。

「チヒロ、ナイフとフォークをそうやって置くと皿が下げられてしまうぞ?」

すかさずフェリスに注意された。危なかった。ステーキを切っただけでメインが終わるところだった。安堵しながら千博は女王の質問に答える。

「えっと……そのことなんですけど、この世界の地図を書庫で見たんですが俺の国がのってないんです。」

「何?見間違いではないのか?書庫のあの地図はまだ新しい物だぞ。記し残しはないはずだが……」

「もう一つ、俺のいた世界では魔法は存在しません。それに騎士がいたりとか、王国っていうもの自体あまり無いんです。」

「ふむ、先程から聞いているとまるでこの世界とは別の世界から来た様に聞こえるが?」

「恐らくですが。……こんな事あり得ないし、確信があるわけではないんですけど。」

ユリア女王は何やら黙り込んで考え初めてしまった。やっぱり信憑性も無いし話すべきじゃなかったかな。軽く後悔しながら再びステーキに手をつけ始める千博。焼き加減が程よく、脂ものっていて美味しい。

「チヒロ殿、一つ聞いてもいいかな?」

「はい?」

ステーキを口に運ぼうとしていた手をとめて返事をする。

「何故チヒロ殿はそんな状況でこうも落ち着いていられるのだ?もとの世界へ帰りたいと思わないのか?」

もっともな質問をされる。これを聞くのは当然だろう。恐らく皆が心に思っていたことの一つだ。フェリスも食事の手をとめて千博の答えに耳を傾けている。一つ目の質問の答えは簡単だ。それは俺がもとの世界に嫌気がさすほどうんざりしていたから。心の中で望んでいたことだから驚きはあったが言葉も通じたしなにも焦ることはなかった。だけど二つ目は……

「……それは…………」

何でだ?今まで帰ることなんて全く考えなかった。この状況を楽しみたい気持ちが強いから?だがそれだけで忘れられることか?家族は?友達は?俺はいつからこんなに寂しい人間になったんだ……?

「……何でだろう。自分でもよく分からない。」

「分からない?不思議な事を言うんだな、貴殿は。まあ良い、今は食事を楽しもうか。」

「あ………はい。」

もやもやが残ったが確かに女王様の言う通りだ。考えても今はわかりそうにない。なら今は食事を楽しもう。そう思って再び手を動かし始める。フェリスは納得いかなそうな顔をしていたがそれ以上は何も聞いてはこなかった。




食事が終わって皆が解散し始めた頃、千博とラッセルはユリア女王に呼びとめられた。

「2人とも、すまない。君たちの住居のことだがもう少し時間がかかりそうだ。それまでは今使っている部屋で過ごしてもらえないか?」

「分かりました。何から何まで本当にありがとうございます。」

「いやー、ほんと助かりましたよ。ありがとうございます。」

「礼はいらんよ。もしかしたら君たちは今後我が国民になるかもしれぬしな。」

千博とラッセルがそう答えるとユリア女王は笑いながら言った。

「え⁈ いいんですか⁈ 」

ラッセルは嬉しい提案に驚いているが千博は素直に喜んでいいのかわからなかった。この国の国民になると言うことはこの世界で生きていくことを曲がりなりにも認めることになるからだ。

「あ………その…」

「ふふ、それは自分で決める事だからな。別に強制ではないのだ。帰りたくなればそうしてくれて構わないよ。ゆっくり決めてくれ。ただ、決まるまでは私達が用意する家で過ごしてもらうがな。」

「……本当にありがとうございます。」

「ふふ、気にしないでくれ。…おっと、そろそろ行かねば。ではな。」

「あ、はい。」

それだけ言うとユリア女王は向こうへ行ってしまった。残った2人は今日の出来事を軽く語り合うと互いに部屋へ戻り、千博はメイドさんに教えてもらっていた簡単な浴室でシャワーを浴びてすぐに眠りについた。


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