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第3話 殴り倒す


 俺は路地裏に連れていかれて、男たちに囲まれていた。

 前には話しかけてきた大男、そして後ろにも逃げられないように二人ほど回り込まれている。



「よう。さっきの見てたぜ。ギルドに登録したばかりだよなお前」


「ああ」


 ガタイのいい男、おそらくリーダー格の男が俺に話しかけてくる。


「新人ならいいことを教えてやるよ。冒険者ってのにはルールがあってな。新人は先輩に金を貢ぐ必要があるんだよ」


「そんなルールはギルドでは受けなかったな」


「暗黙のルールってやつだ。冒険者たちの間だけの、な」



 ニヤニヤと男たちは下卑た笑いを浮かべている。

 

 馬鹿でもわかる。

 そんなルールあるわけない。

 仮にあったとしても従うつもりはないけどな。


「あいにくだが、俺は金を持ってないよ。比喩でも誇張でもなんでもなく、文字通り一文無しだ。このままだと飢え死にしてしまうくらいな」


「依頼を受けてたろ? それを達成したら金をよこせ」


「あっはは。おいお前、兄貴の言うことを聞いといた方がいいよ」


「兄貴マジで強いから。剛腕っていうCランクスキルを持ってるんだぜ。マジパねえ」


「これまで逆らう奴らは何人もいたけど、そいつら全員兄貴にボコされちまった」


 俺を囲む取り巻き達がそうはやし立てる。


「ふははは。おいおい、お前らそんなにビビらすなよ。こいつ可哀そうに震えてるぜ!」


 兄貴と言われたリーダー格のその言葉に、ドッと全員が笑う。


「とにかくそれやったら金もってこいよ? 明日の朝にギルドに来て金よこせ。しなかったらぶっ殺す」


「断る」


 俺のきっぱりとした否定の言葉に、リーダー格が眉を顰める。


「てめえ今なんつった? ああ?」


「断ると言った。金を持ってくるつもりはない。用件はそれで終わりか? 俺はこれから依頼があるんでな。失礼させてもらう」


 リーダー格を避けて行こうとしたら、肩を掴んで引き留められた。


「待てやコラ。逃げられると思ってんのか?」


「思ってたらなんだ?」


「認識が甘いな。てめえ舐めた口ききやがって。ぶっ殺してやる」


 リーダー格が怒気をにじませる。



「はは、こいつ終わったわ」


「兄貴を怒らせるなんて。死んだろ」


「あ~あ。大人しく金持ってくれば長生きできたのにな~」


 手下どもが笑う。

 三下らしい言葉だ。

 


「おいてめえ。俺のスキルを知ってるか?」


 リーダー格が尋ねてくる。


「いや。知るわけないが。初対面だし」


「知らねえなら教えてといてやる。俺のスキルは『剛腕』。Cランクのスキルだ」


「へえ。すごいの?」


「すげえに決まってるだろうが。ぶっ殺すぞてめえ」



 リーダー格がすごむが、俺は「はあ」とため息をつく。


「あのさあ。いつまでこうして話してるんだ? 俺は急いでるんだ。殺すだのなんだの粋がってないで、やるんなら早くかかってこいよ」



「死ね!!!」



 リーダー格は怒りに身を任せて殴りかかってくる。

 しかし――。



「遅いな」



 俺はその拳を簡単に避ける。


 これもスキル『神拳』の恩恵なんだろう。

 相手の動きがよくわかるし、どう避ければいいのかも簡単にわかる。

 体の動かし方も理解できる。


 『神拳』の恩恵はこれだけではない。

 身体能力の向上も、その恩恵の一つだった。

 

「ふっ――」



 拳をよけた後、俺はリーダー格の顔面に向かって自分の拳を突き出す。


 ただのパンチだ。

 だが『神拳』のおかげで身体能力が高まった体から発せられるそのパンチは、通常とは比べ物にならない威力を発揮する。

 


「ぶぎょっ」


 

 俺に殴られたリーダー格はそんな声を上げながら、路地裏からぶっ飛んで民家の壁にぶつかった。

 

 道端に落ちて、そのまま動かない。


「死んではない。ただ気絶してるだけだよ」


 これも『神拳』の恩恵か、俺は相手の体を見ただけで筋肉の動き方が分かった。

 そして、筋肉の動きを見れば死んでるかそうでないのかがわかる。

 リーダー格は俺に殴られて気絶しているだけだ。死んではいない。

 


「ひ、ひいいいい! 兄貴がやられたぁ!」

「兄貴はCランクだぞ。そんな馬鹿な!」

「なんだよこいつ、雑魚じゃねえのかよ」



 取り巻き達は口々にそう言い、自分たちのリーダーを瞬殺した俺を恐れて震えている。


「おいお前ら。俺はもう行くから、そいつ連れて帰れよ。このまま道端に寝てるのは迷惑だ。あと二度とカツアゲすんじゃねえ。やったらどうなるか、わかってるよな?」


 そう言い、拳を握って取り巻き達に圧をかける。



「「「はい! わかりました! もうしません!」」」




「わかればいいさ」

 

 これで脅しは十分だろう。

 ふるえる取り巻き達と、道端で気絶しているリーダー格を残して、俺はギルドの初仕事へと向かった。





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