第11話 朝食
「昨晩は大変失礼いたしました。奴隷である身にもかかわらず、ご主人様に対してぶしつけなお願いをしたばかりか、ご主人様を癒すこともせずに寝入ってしまうなど、言語道断。大変申し訳ございません。ぜひ今からでも、ご奉仕の機会を頂ければ……!」
俺がアイナを買って呪いを解いた翌日の朝。
彼女は宿の部屋にて床に頭をこすりつけて謝罪していた。
「謝る必要はないよ。とりあえず頭を上げてくれ。アイナと一緒に寝たことで、俺も十分に癒された。だから昨晩はあれでいい。気持ちのいい目覚めだったよ。誰かと一緒に寝るってのはいいことだな。うん。君は俺を癒していたんだから、謝罪の必要はない」
「ですが、それでもご主人様へご奉仕を……!」
この子、なんでこんなにご奉仕にこだわるの?
まあやる気なのはいいことだと思うけど。
「ご奉仕は今夜ね。今日はやることがあるから、朝からそういうことはしないよ」
「かしこまりました……」
「この宿はお金を払えばご飯を食べることもできる。一緒に食べよう」
「一緒に……? 私は奴隷の身。ご主人様と食事を共にしてもよいのでしょうか?」
「俺は気にしない。アイナが俺とご飯を食べることに、他の奴が気にするっていうならこんな宿はでていくよ。それともこの国は、奴隷を主が一緒にご飯を食べちゃいけないルールでもあるのかな?」
「いえ、そのようなルールはありませんが。しかし一般的には奴隷と主人が食事を共にすることはありません」
「一般的に、か。その程度なら別に破ってもかまわないな。うん。じゃ、さっそく行こうか。ご飯は一緒に食べた方が美味しいでしょ」
「かしこまりました。ご主人様」
この宿では、入り口から入ったところに何個かテーブルと椅子が用意されている。
何人かは、そこで朝食を食べていた。
店の主人に朝食を頼む。
「昨晩のお詫びとして、本日の朝食はこちらのサービスとさせていただきます」
「そう? ありがとう」
ま、別にお金にこまっているわけではないから支払ってもいいんだが。
向こうが無料でいいと言っているものを、無理に払う必要もないだろう。
俺はテーブルの方へと行き、椅子に座る。
アイナが後から来て床に座った。
「なにしてるの?」
「はい。床に座っております」
「なぜ床に? 椅子があるからそこに座れば?」
テーブルの近くには何個かの椅子がある。
そこに座ればいいんじゃないかな?
「ですが、奴隷である私がご主人様と同じ席につくなど……」
「俺がいいと言っているの。ご飯は同じ席で、同じテーブルで一緒に食べる。どうしても床で食べたいっていうなら、俺も床に座って食べよう」
椅子から腰を上げると、アイナは慌ててそれを制した。
「い、いえ! ご主人様にそのようなことをさせるわけにはいきません。かしこまりました。椅子に座ります」
アイナは立ち上がり、椅子の上に座った。
「奴隷である私にも、平等に接してくれるなんて。ご主人様はなんてお優しい方なのでしょう……!」
感動に打ち震え、手を組んで俺を尊敬のまなざしで見るアイナ。
「大袈裟だな。これくらい別に普通だよ」
「お優しいだけでなく、さらに謙虚であられるなんて……! 感激いたしました。この身を一生、ご主人様に捧げます」
「いや捧げるも何も。君はもう既に俺のものなんだが」
彼女は奴隷で、俺はその主だ。
最初からアイナは俺のもの。
日本人的な感覚では奴隷は忌避すべきものなんだろうが、ここは異世界。
郷に入っては郷に従え。
俺は郷に従い、この国の価値観に従う。
つまりは購入したアイナを奴隷として使役し続けるということ。
解放?
そんなのしないよ。
いきなり解放されてもアイナも困るとは思うが、それだけでなく俺のエゴで彼女は解放するつもりはない。
女性として魅力的な彼女を解放する理由はない。
俺は別に聖人君子じゃないのだ。
『聖人』のスキルは持っているけどね。
「そ、そうですよね。私なに言っているんでしょう。私はもうレースケ様のものなのに。この身も、心も、ぜんぶレースケ様のもの。えへへ……」
赤く染まった頬に両手を当てて、こちらを見るアイナ。
「どうした? 急に」
「いえ、なんでもありません。ただ少し、わが身の幸福を感じ入っていたのです」
「そう? よくわからんけど、幸せならよかった」
朝から感激したり、喜んだり。
忙しい子だな。
そのタイミングでちょうどご飯が来たから、それを頂く。
異世界に召喚されてから約10日。
異世界に来て初めて誰かと一緒に食べるご飯は、美味しかった。
月曜日からは12時30分と18時30分に投稿します




