三十七話・ガールズトーク
「なるほど、そういう事か...」
「相変わらずのHさんですね、ライお兄さんは!」
「だって、しょうがないじゃんか!俺の目の前に新品と言う名の宝が
あったんだぞ!それを欲するのは...自然の流れだろ?」
俺は拳をギュッと握りしめ、情熱が燃えている瞳でロザリー達を
凝視しながら、この思いを高らかに伝える。
「イヤ...女のウチにそんな事を力説されても、反応に困るんだけど...」
ロザリーは少し蔑んだ表情で頬に汗を掻き、ライの言葉にニガ笑いを
している。
「でも、いくら新品オッパイだと言っても...所詮はババアのオッパイですよ?」
モカはモカで、見も蓋もない事をあっさりと口にする。
「誰がババアですか!」
「アイタァッ!?」
モカが非情な言葉を発した直後、その頭に重たい拳骨が落ちてきた。
「全く、あなた達は...口を開けばババア、ババアと...失敬にも程が
ありますよ!」
「それにロザリーさん!あなたと私の年の差は、たった5歳しか変わらない
じゃありませんかっ!」
「ふ...あまいですねメイド長...。女性にとってその5歳の差は、とてつもない
大きな壁なんですよ!」
「う...!」
ロザリーの言葉が図星だったのか、メイリの言葉が詰まる。
「だよね~私と3歳も年の差があるロザリーおばさん!」
「誰がおばさんだぁぁ―――っ!!」
自分の事は棚にあげたロザリーが、モカに対し目を見開いて叫声を上げる。
「あ、あの、みなさん...ちょっとお聞きするけど、何で当たり前の様に
俺の部屋でガールズトークをなさっているのでしょうか?」
あまりにも普通に接してくるので特に気にならず会話をしていたが、ロザリー達が
何の躊躇もなくガールズトークを楽しんでいる姿を見て、俺はふと我に返る。
「それに、どうしてメイリもここにいるのかな?」
「え...いちゃ駄目...ですか?」
ライの言葉にメイリがショックを受け、瞳をウルウルとさせている。
「嗚呼!ライってば、ヒドイ!何でメイド長がここにいちゃ駄目なのさ!」
「イヤ...そういう事を言っているワケじゃ...っていうか、ロザリーさん...?
さっきまでメイリとケンカしていたとは思えない援護っぷりだね...!」
「あれはあれ、これはこれよ!それにここでメイド長を追い出そうものなら、
ウチらも巻き添え食って追い出されるのは必至だし!」
ロザリーは悟りを開いた様な表情でライにそう語る。
「まあ...そういう事、だからライお兄さん!もう諦めて観念しなさい!」
そしてモカがライの肩をポンポンと叩き、哀れみを含んだ顔を横に振りながら
そう述べてくる。
「でも俺だってな、部屋で一人になりたい時もあるんだぞ!」
「へえ...どんな時に?」
「そ、それは、本をゆっくりと読みたい時とか...!」
「Hな本を読みたいの間違いじゃないの?」
「う...そ、そんな事は...ない...」
モカに正論を言われ、思わずドキッとなり言葉が尻窄みになってしまうが
俺は負けずに口を開き、言葉を続ける......
「そ、それにですね、体が怠らない様に運動もしたいし...!」
「運動?運動くらい、別にウチらがいてもできるじゃない?」
「うう...それは...できないと言うか...その...」
「嗚呼!あれですか、自家発――――」
「あああああっ!何を言ってるのか聞こえないなぁぁっ!」
「だから、自家――――」
「あああああっ!聞こえない、聞こえないぃぃぃ―――っ!!」
俺の何かを察したメイリが、その事を躊躇もなく発表しようとするので、
聞こえないアピールをして必死に阻止する。
「ねぇ、メイリさん...その自家...何とやらって何ですか?」
「ん、それはねモカさん、自――」
「おい!そこ!!いい加減にだまらっしゃいっ!
そうしないと、この部屋に入るのを永久出禁にするぞぉぉっ!!」
「え、永久出禁っ!す、スイマセン、もう言いませんから!」
ライの永久出禁発言にメイリは流石に空気を読んだのか、素直に
反省の色を見せた。
「もう...そう、カリカリしないの!」
「はうっ!?」
俺が激おこしている中、ロザリーが突然と後ろから抱き締め、
ギュッとしてくる。
「はにゃ~」
抱きつかれる事によって、背中に当たる二つの柔らかい感触が
全身に伝わると、俺の怒りは一瞬で幸福に切り替わった。
「嗚呼!抜け駆けはズルいですよ、ロザリーお姉さん!」
そう言うとモカはジャンピングして、ライに飛び付いた。
「エヘヘ...ライお兄さん、暖かいです♪」
「お、おう...それは良かった!」
ほう...絶壁胸もこれだけ密着していると十分に柔らかい感触を
味わわせてくれますな...。
前後から感じる四つの柔らかい感触に、俺は心から至福に満ちていた。
「うう...ズルいですわね、二人とも...。あの揺るぎない行動力...
これ若さの特権ってやつですか...」
自分も抱き付きたいメイリであったが、二十代という壁が邪魔をして
十代の二人を羨み顔で見てしまう。
「あれ~メイド長、どうしたんですか?そんな所でボーッとして、
こっちに来ないんですか?」
「え...イヤ、私は流石に...そこまで積極的には行けないというか...」
モカの言葉にメイリは頬を紅に染めながら、しどろもどろになり
後退りする。
「ロザリーお姉さん、メイド長には無理ですよ!だって...メイド長は
もう...枯れてしまったのだから...!」
「枯れた...?モカさん...私の何が一体、枯れたと言うのですか...?」
「そりゃ~おん――――ッ!?」
その言葉を言い終わる前に、メイリの踵落としがモカの脳天に直撃する。
「ふん......何が枯れたですか、まったく!」
「いたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたっ!!」
メイリが憤怒している中、モカはあまりの痛さにベットの周りをグルグルと
のたうち回っている。