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歪な関係性

*



「……え? ええっ!?」


カナエは、突然のリョウの提案に驚く。いきなりの訓練中止だけでも驚きなのに、その休息にカナエも御一緒に、などと言われたら誰でも驚くだろう。何せ、いつも小競り合いを続けているカナエ姫とリョウだ。一緒に休む、なんて発想がよく出てきたものである。


「……どういう風の吹き回しかしら? 貴方が私を誘って、ろくなことになった記憶は少なくとも無いわよ?」


「……耳が痛いことを言う姫ですねぇ・・・。別に、ここ最近眠れてないので少し横になって休もうかなと思っただけですけど?」


「……そう」


カナエは訝しげな視線を向けながらも取り敢えずは納得する。そもそもこの会話の取っ掛かりは、カナエがリョウの体調を気遣ったところから始まっている。なら付き合うのは最低限の礼儀だろう。


「……いいわ。何処で休むの?」


カナエ自身も眠れていない、所謂不眠症である。そのため、リョウと一緒とはいえ休むのには賛成だ。リョウは暫くうーんと唸って、思い出したように顔を上げる。


「この付近にでっかい木が確かありましたよね?」


「知らない」


「……そこにしましょう」


「ん、分かった」


簡潔なやりとりの後、2人連れたって大木の下へ向かう。その途中、ふとカナエが足をとめる。


「……ねぇ、リョウはどうして私に着いてきてくれたの?」


「……は?」


もちろんこの着いてくるとは、休むことにたいしてではなく、10年前のことである。


「答えて。貴方が優しいって事なんて10年前から知ってる。今日のこの提案だって、私の体調に気づいたからなんでしょう?」


「……買いかぶりすぎですよ。さっきも申し上げたとおり、私自身が疲れてたから────」


「本当に?」


カナエがじっとリョウを見つめる。


「……本当です」


「そっ。分かったわ。……今は、それでもいい」


けど、とそこでカナエは言葉を切って、


「いつか……いつかは話してよね? 貴方がどうして私に着いてきてくれたのか」


「……」


カナエの言葉にリョウは無言で返す。


(……その沈黙は、話す気ないって事ね……)


カナエもリョウもお互いの事は嫌というほど知っている。なにせ、カナエが姫になる前は幼なじみだった程だ。


(……そう言えば、私が無理矢理リョウを引っ張って来たんだっけ)


歩きながらボンヤリとそんな事を考える。


(……リョウは、リョウはどう思ったんだろう? 私の我儘で無理矢理王宮に連れてこられて、幼なじみとはいえ私の補佐官に任命されて……。……いつか、聞いてみたいな……)


そして、ボンヤリと歩いていると、


「……? 姫? そんなにボーっとしてると────」


ゴツン!!


「ふぎゃっ!! 痛ったぁ……」


「……もう着いたのでぶつかりますよ、って遅かったですかね?」


時すでに遅し、大木に正面から衝突したカナエは鼻を抑えながら恨めしげな視線をリョウへ向ける。


「……ま、まぁ俺は一応忠告しましたから・・・」


「遅いわよ!! もぉ……」


「……それじゃ、休みましょうか」


カナエの抗議に苦笑しながらリョウは提案する。


「……そうね」


カナエは短く答えて木の根に腰を降ろす。するとリョウもその隣に腰を降ろした。


「……で? どうしていきなりそんな事を聞いたんです?」


そんな事、というのは先程カナエがリョウに訊ねたことだろう。


「……うん……。でも、その前に私は貴方に話さなければならない事があるの。……聞いてくれる?」


「……構いませんよ。幸い、時間はたっぷりありますから」


「……そう。じゃあ────」


と、カナエはポツリポツリと話し始めた。

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