94 暗いダンジョン
ある朝。新らしいダンジョンが発生したと報道された。小規模のスタンピードが起こったようだが、軍が迅速に対処したようだ。今は落ち着いているらしく、ダンジョンとして開放されている。
「長野のダンジョン。奈落の底ね」
フランが言う。
「もう行ったの?」
「行ってない。当分は行かないかな」
「なんで?」
「新しいダンジョンは初心者でも新しい事を発見出来るから色々と人が多いのよ。面倒なのも、ね」
ライラもシオリもそれに同意していた。
「なるほど……」
「興味があったら行ってみたら? 今、人が多いから上の階層の魔物は少ないはず。キョウのLVなら二……一階層付近でどんなものか体験するのもありよ」
(過保護だな……っと思ったけど、俺LV4って事になってるんだった)
新しいダンジョンに興味があるのでこそっと行ってみることにした。現場に到着するといつも雰囲気とは違っていた。大きなカメラを持つ者が沢山いた。
「え~。それではこのダンジョンの攻略法を解説していきたいと思います」
このような感じで撮影しており、多くの人は動画を上げているようだ。他にも耳を傾けるとパーティー募集が多い。
「パーティーメンバー募集でーす!! LV10以上の前衛の方~」
「メンバー募集!! LV15以上のタンクはいませんか!!」
「このダンジョンの注意点はぁー」
「お嬢さん。俺LV13なんだけど一緒にトゥギャザーしようぜ? なに、女が消えた……俺はなにを見ていたんだ……」
「7階層に行きます!! 自分が最強だと思う人募集中!!」
「ソーーース!! カメラに一々反応すんな!! はよ行くぞ!!」
「この中にヒーラー!! ヒーラーの方はいらっしゃいませんかァ!!」
重傷を負っている人がいたのでコソっと治療する。その後、ダンジョンの中へと入る。暗闇が広がる。壁には新しい蝋燭が一定の間隔で付いていた。動きのある人工的な光が所々に見える。かなりの人数が潜っているようだ。
(魔物がいない……)
浅い階層はかなり狩りつくされているらしい。人気がある時期に起こる現象だろう。しかしこれでは攻略動画を作る意味があるのか疑問になる。
「ぎぃあああぅあああ!!」
遠くから男の声が聞こえた。数人の人が集まっていた。
「罠だァ……ッ。魔物が罠を仕掛けてるぅ!!」
暗闇で見えにくいが俺は普通に見えている。割れた床にはさまってるだけだ。
「そんな。ここの魔物は狡猾だァ!! ギルドに報告しないとッ」
(おいおい……)
「あの。ただ割れ目に挟まってるだけでは?」
「黙れ!! 俺がそんなミスするかよ!! LV17だぞ俺は。こんな低層で」
「素人なんでしょう。気にせず罠を解除しましょう」
「そうだな」
暗闇でいつもの判断が出来ないようだ。ギルドマスターに後で言っておこう。そんな時、喋りながら進んでいる男がいた。
「おわかりいただけただろうか…………え? 今いた? まじで? どこ? 怖い怖い怖い怖い」
ライブ配信中なのだろう。コメントに返答しているらしい。視聴者と一緒に企画を立ててやっているみたいだ。色々な人がいると感じながら進んでいく。




