公平を掲げる銀行
異世界転生した俺は、前世の職業でもあり、この世界には存在しない職業――金融屋になることを決めた。
この世界でこそ、俺は成功してやる。
俺は商会から借りたお金で物件を購入することにしたが......
この世界にはビルのような建物がない。なかなか条件に合う物件が見つからない。
「この世界には闇金って言葉も、それを取り締まる法律もない。なら隠れる必要はないのか?」
俺はこの世界の法律について考えを巡らせた。
「いや、法律がないなら人が入りやすいように目立つ方がいいのか?」
考え事をしながら歩いていると、とある建物が目に入った。
その建物は、冒険者ギルドをひと回り小さくしたような造りだった。
石造りの二階建てで、正面には頑丈そうな木製の扉が構えている。
中へ入ると広いホールが広がり、受付を置くには十分な広さがあった。
奥には応接室として使えそうな部屋がいくつかあり、二階には執務室や倉庫として利用できそうな部屋が並んでいる。
「悪くないな……」
俺は建物を見渡しながら小さく笑う。
金を貸す以上、店構えも商売道具の一つだ。
ホールの奥にある事務室へ足を踏み入れる。
部屋の中央には長机がいくつも並び、書類仕事ができるよう椅子も十分に用意されていた。
奥には一回り大きな机が一つ置かれているが、壁で区切られているわけではない。
社長も従業員も同じ空間で仕事をする造りらしい。
「ちょうどいいな。」
俺は事務室を見渡し、小さく頷く。
変に社長室なんて作るより、従業員と同じ場所で仕事をした方が全体の様子も把握しやすい。
「ここにするか」
俺はその場で、この物件の購入を決めた。
「こちらが売買契約書になります」
店主が差し出した契約書に署名をすると、紙が淡く光り、契約が成立したことを知らせる。
「……こっちでも契約書は魔法付きか。」
これで俺は、異世界で初めての事務所兼拠点を手に入れた。
ここからは、貸付用のRKを残したまま机や帳簿、事務用品を揃えなければならない。
だが、その前に必要なものがある。
「名前だな。」
この店の顔になる名前が必要だ。
名前が決まれば、この店もようやく形になる。
……残念ながら、俺にはネーミングセンスがない。
「さて、どうしたものか……」
自分の名前を使うのもありだが……
「久我金融……か。」
口に出してみる。
悪くはない。
だが、異世界の人間に"金融"なんて言葉が伝わるのか?
「……いや、ダメか。」
もっとわかりやすくシンプルな名前……
公平……平等……秤……
「……天秤。」
その言葉が、ふと頭に残った。
「銀行……いや、この世界じゃ伝わらないか。」
「だったら、新しい言葉として広めればいい。」
「……バンク。」
「天秤バンク、か。」
声に出してみる。
「悪くない。」
天秤は公平さを表す。
バンクは、俺の世界で金を預け、貸し借りをする場所の呼び名だ。
この世界にはまだ存在しない。
だからこそ、この店が最初になればいい。
「よし、店の名前は――『天秤バンク』だ。」
「名前が決まったなら、次は看板だ。」
「看板は職人に依頼するとして……」
俺は事務所の中を見渡す。
「あとは内装か。」
机や椅子、帳簿を置く棚。
客が安心して話せる応接室。
この商売で一番大事なのは、金じゃない。信用だ。
その信用を得るためなら、この店には一切妥協しない。
「やることは山積みだな。」
何をするにしても準備が八割だ。焦る必要はない。土台さえ作れば、金は後からついてくる。
とうとう、久我玲司の店の名前が決まりました!
次回はいよいよ、天秤バンクに初めてのお客さんがやって来る……かもしれません。
これから異世界での金融屋が本格的に始動していきます!
応援やコメントをいただけると、とても励みになります。
これからもよろしくお願いします!




