おかしな反応
王城の門前に辿り着くと、シオンたちは兵士に制止された。
「止まれ。何用だ」
槍を構えた兵士たちの視線が鋭く突き刺さる。
そのうちのひとりが一歩前に出て、事務的な口調で告げた。
「現在、王への謁見は許可されていない。城の重要な宝が賊に盗まれ、王はその対策を練っている最中だ。用がないなら——」
追い払おうとした、その時だった。
「その宝を返しに来たんだが」
フードの人物が静かに前へ出る。
銀色の兜の奥から、兵士たちの視線が一斉に向けられた。訝しむ空気が広がり、彼らは互いに顔を見合わせる。
シオンは無言のまま懐に手を入れ、鉱石を取り出した。
掲げた瞬間——鉱石が、ほんの一瞬だけ光を放つ。
「……!」
兵士たちの表情が変わった。
次の瞬間、彼らはぴしりと姿勢を正す。
「わざわざお届けくださり、感謝いたします」
先ほどまでの警戒が嘘のような、整いすぎた口調だった。
「どうぞ、お通りください」
城門が重々しい音を立てて開く。
「(……なんだ?)」
ジェイクは思わず眉をひそめた。
絶対に一悶着あると踏んでいた。
それなのに、このあまりにもあっさりした態度の変化。
違和感が、胸の奥に引っかかる。
門を開けた兵士たちは、それ以上何も言わなかった。
ただ、その場に直立したまま——まるで人形のように微動だにしない。
シオンもフードの人物も、特に気にした様子は一切なく、当然のように城内へ足を踏み入れた。
「……………」
ジェイクは訝しさを抱えたまま、二人の後を追いかけていった。
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やがて辿り着いた謁見の間。
重厚な扉をくぐり、シオンたちが中へ入ると、広間には多数の兵士が控えていた。
そして、その奥。
玉座に腰掛けた王が、頬杖をついたままこちらを見下ろしている。
「……」
王の眉が、わずかにひそめられた。
フードの人物が一歩進み、静かに頭を下げる。
「謁見は禁止したはずだが」
低い声で王が言う。
フードの人物は顔を上げ、淡々と口を開いた。
「お初にお目に掛かります、王よ。突然の来訪をお許しください。私はカケラ。こちらはシオンとジェイクです」
落ち着き払った声音。
「(……名前、教えてねぇよな?)」
ジェイクは目を丸くした。
その疑問が口に出るより早く——怒号が広間に響く。
「貴様らは!」
兵士の一人が前へ出た。
彼は、以前にガルシアを捕まえようとしていたあの銀鎧の男だった。
鋭い目でシオンたちを睨みつけ、ずかずかと距離を詰めてくる。
しかしカケラは、まるで視界に入っていないかのように王へ向き直った。
「王よ。私たちは盗んだ鉱石を返却しに参りました」
「なに?」
王の眉間の皺が、さらに深くなる。
その横で、シオンが一歩前に出た。
懐から鉱石を取り出し、無言で掲げる。
王の視線が鋭く細められた。
「……ドワーフの少年はどうした」
低い問い。
シオンは一切の感情を乗せず、
「あいつは、こいつを盗んだことを反省していた」
それだけ答えた。
間髪入れず、銀鎧の男が再び怒鳴る。
「奴が反省などするものか!」
男は剣を抜きかける。
だが——
「控えよ」
王の一言で、空気が凍りついた。
銀鎧の男は歯噛みしながらも剣を収め、それ以上は踏み込まない。
王は改めて鉱石へ視線を落とした。
「……その鉱石、本物か?」
カケラが静かに頷く。
「手に取って、ご確認ください」
王の傍らに控えていた白髪の男が前へ出た。
シオンの手から鉱石を受け取り、玉座へ運ぶ。
王がそれを覗き込んだ——その瞬間。
鉱石が、淡く光を放った。
城門前で見たのと同じ光。
それはすぐに収まる。
そして王はゆっくりと顔を上げ、カケラたちを見据えた。
「……なるほど。たしかにこれは本物のようだな」
低く呟く。
その時、王の瞳の奥に薄い青の膜のようなものが揺らめいた。




