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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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おかしな反応





 王城の門前に辿り着くと、シオンたちは兵士に制止された。


「止まれ。何用だ」


 槍を構えた兵士たちの視線が鋭く突き刺さる。

 そのうちのひとりが一歩前に出て、事務的な口調で告げた。


「現在、王への謁見は許可されていない。城の重要な宝が賊に盗まれ、王はその対策を練っている最中だ。用がないなら——」


 追い払おうとした、その時だった。


「その宝を返しに来たんだが」


 フードの人物が静かに前へ出る。


 銀色の兜の奥から、兵士たちの視線が一斉に向けられた。訝しむ空気が広がり、彼らは互いに顔を見合わせる。


 シオンは無言のまま懐に手を入れ、鉱石を取り出した。

 掲げた瞬間——鉱石が、ほんの一瞬だけ光を放つ。


「……!」


 兵士たちの表情が変わった。

 次の瞬間、彼らはぴしりと姿勢を正す。


「わざわざお届けくださり、感謝いたします」


 先ほどまでの警戒が嘘のような、整いすぎた口調だった。


「どうぞ、お通りください」


 城門が重々しい音を立てて開く。


「(……なんだ?)」


 ジェイクは思わず眉をひそめた。

 絶対に一悶着あると踏んでいた。

 それなのに、このあまりにもあっさりした態度の変化。


 違和感が、胸の奥に引っかかる。


 門を開けた兵士たちは、それ以上何も言わなかった。

 ただ、その場に直立したまま——まるで人形のように微動だにしない。


 シオンもフードの人物も、特に気にした様子は一切なく、当然のように城内へ足を踏み入れた。


「……………」


 ジェイクは訝しさを抱えたまま、二人の後を追いかけていった。



+


 やがて辿り着いた謁見の間。


 重厚な扉をくぐり、シオンたちが中へ入ると、広間には多数の兵士が控えていた。

 そして、その奥。

 玉座に腰掛けた王が、頬杖をついたままこちらを見下ろしている。


「……」


 王の眉が、わずかにひそめられた。

 フードの人物が一歩進み、静かに頭を下げる。


「謁見は禁止したはずだが」


 低い声で王が言う。

 フードの人物は顔を上げ、淡々と口を開いた。


「お初にお目に掛かります、王よ。突然の来訪をお許しください。私はカケラ。こちらはシオンとジェイクです」


 落ち着き払った声音。


「(……名前、教えてねぇよな?)」


 ジェイクは目を丸くした。

 その疑問が口に出るより早く——怒号が広間に響く。


「貴様らは!」


 兵士の一人が前へ出た。

 彼は、以前にガルシアを捕まえようとしていたあの銀鎧の男だった。


 鋭い目でシオンたちを睨みつけ、ずかずかと距離を詰めてくる。

 しかしカケラは、まるで視界に入っていないかのように王へ向き直った。


「王よ。私たちは盗んだ鉱石を返却しに参りました」

「なに?」


 王の眉間の皺が、さらに深くなる。


 その横で、シオンが一歩前に出た。

 懐から鉱石を取り出し、無言で掲げる。


 王の視線が鋭く細められた。


「……ドワーフの少年はどうした」


 低い問い。

 シオンは一切の感情を乗せず、


「あいつは、こいつを盗んだことを反省していた」


 それだけ答えた。

 間髪入れず、銀鎧の男が再び怒鳴る。


「奴が反省などするものか!」


 男は剣を抜きかける。


 だが——


「控えよ」


 王の一言で、空気が凍りついた。

 銀鎧の男は歯噛みしながらも剣を収め、それ以上は踏み込まない。


 王は改めて鉱石へ視線を落とした。


「……その鉱石、本物か?」


 カケラが静かに頷く。


「手に取って、ご確認ください」


 王の傍らに控えていた白髪の男が前へ出た。

 シオンの手から鉱石を受け取り、玉座へ運ぶ。


 王がそれを覗き込んだ——その瞬間。


 鉱石が、淡く光を放った。

 城門前で見たのと同じ光。


 それはすぐに収まる。

 そして王はゆっくりと顔を上げ、カケラたちを見据えた。


「……なるほど。たしかにこれは本物のようだな」


 低く呟く。


 その時、王の瞳の奥に薄い青の膜のようなものが揺らめいた。



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