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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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鉱石(偽物)を届けに





 夜の出発は、ガルシアの提案によるものだった。

 街から王都までの距離を考えれば、今のうちに動いておけば明日の昼までには到着するだろう。とのこと。


 せっかく合流したっていうのに、また別行動になるのか。

 フィルはあからさまに肩を落として落胆していたが、


「すぐ戻る」


 と、シオンが短く言い残すと、フィルは一瞬だけ唇を尖らせ、肩を竦めた。


「……兄ちゃんたち、気を付けてね!」


 背後から飛んできたガルシアの声を受けながら、シオンとジェイクは振り返ることなく歩き出す。

 夜気はひんやりとして、二人の足音だけが静かな道に響いていた。


 街を離れてからしばらく進んだところで、ジェイクがシオンから鉱石を受け取り、月明かりにかざす。


「しっかし、お前も考えたな。ニセモンを作って渡そうなんて」


 半ば呆れたような声だったが、その声には感心も入っている。

 シオンは前を向いたまま、淡々と答えた。


「あとはそれに、もうひとつ手を加えたら準備は完了だ」

「……あ?」


 ジェイクが眉をひそめた。

 その時、不意にシオンの足が止まる。


 つられてジェイクも立ち止まり、彼の視線の先へと顔を向けると、少し離れた道の上に人影がひとつ立っているのが見えた。


 黒いフードを深く被った、マント姿の人物。

 その人物は、二人の姿を確認すると、ゆっくりと歩み寄ってきた。


「やあ、シオン」


 軽い調子の声。


 自分より頭ひとつ分ほど小柄なその人物を、ジェイクは露骨に訝しむ。


「……知り合いなのか?」


 低く問うと、シオンはわずかに間を置き、曖昧に答えた。


「まあ、そんなところだ」

「それがそうか?」


 フードの人物は、ジェイクの手元にある鉱石へ視線を落とした。


「凄いね。あの少年が持っていたものと、まるで同じだ。これなら——彼らも騙せると思うよ」


 言い方が妙に芝居がかっている。

 ジェイクの眉間の皺は、さらに深くなった。


「頼めるか?」


 シオンが短く言う。

 フードの人物は小さく頷き、鉱石へと手をかざした。


 次の瞬間。

 鉱石が、淡い光を放つ。

 ピキ……ピキピキ、と、内側から軋むような音が鳴った。

 光はほんの数秒で収まり、静寂が戻る。


「これでいい」


 フードの人物は満足げに口元を緩めた。


「……何したんだ?」


 ジェイクが首を傾げる。


「ちょっとした小細工さ」


 軽く笑うだけで、詳しい説明はない。


「……………」


 ジェイクの中で、胡散臭さが増しただけだった。



+


 一夜明け——


 シオンたちは王都へと到着した。

 巨大な城門をくぐった瞬間、空気が一変する。


 行き交う人々の数、飛び交う声、立ち並ぶ露店。

 そこはまさに、大陸の中心にふさわしい活気に満ちていた。


「へぇ……さすが王都。人が多いな」


 ジェイクが周囲を見回しながら感心したように言う。

 すると、すぐ横から声が返った。


「ここは大陸の中心部だからね。大陸中から様々な種族の人物が集まってくるんだ」


 当然のように会話へ入ってきたフードの人物に、ジェイクの動きがぴたりと止まる。


 そして、ゆっくりと顔を向けた。


「……なんでまだお前いるんだ?」


 率直すぎる問いだった。

 フードの人物はまったく気分を害した様子もなく、そのまま喋る。


「私は君たちの行動を見届ける義務がある」


 そして、意味深に続けた。


「それに——ここにいる“彼ら”が、その鉱石に触れてどんな反応を見せるかも、見ておきたい」


 わけがわからない。

 ジェイクの顔には、はっきりとそう書いてあった。


「…………」


 その様子を、シオンは横目で静かに見つめていた。



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