襲撃・2
魔獣たちは、なおも途切れることなく襲いかかってきた。
「……っ、囲まれるな!」
シオンの声に応え、ジェイクが前に出た。
「任せろ!」
ジェイクの拳が唸り、突進してきた魔獣を正面から殴り飛ばす。
その隙に、シオンが横から斬り込み、魔獣の胴を両断した。
「――炎よ!」
ルーンの魔法が走り、魔獣の群れを焼き払う。
三人は、言葉を交わさずとも自然と連携していた。
攻める者、受ける者、仕留める者。役割は、いつの間にか出来上がっている。
一方、フィルも盾を構え、必死に耐えていた。
「……っ、この……!」
襲い来る魔獣を盾で弾き返すたびに、手の甲の刻印が灼けるように疼く。
「ぐ……っ!」
痛みは、先ほどよりもはっきりと、深く――
骨にまで響いていた。
「……あ……っ」
必死に喰らいついていたフィルだったが、足がもつれ、その場に膝をつく。
「フィル!」
ルーンが叫ぶ。
その瞬間を、灰髪の女性…シエルは見逃さなかった。
「……今よ」
杖の先が、静かにフィルを指す。
「行きなさい」
彼女が指示すると、魔獣たちが一斉に向きを変え、フィルへと突撃した。
「……っ!」
「させるか!」
シオンが飛び込み、剣で魔獣を斬り伏せる。
「ジェイク!」
「おう!」
ジェイクが身体を張って魔獣の進路を塞ぎ、フィルから引き離す。
「―─風よ!」
ルーンが放った魔法が、魔獣たちをまとめて吹き飛ばした。
フィルの前から、魔獣の姿が消える。
「……っ、はぁ…はぁ…」
フィルは盾に体重を預け、荒い息を吐き続ける。
すると――
「……きゅ…」
ルーンの肩で、ブルーテイルが小さく鳴いた。
そして、ブルーテイルは身をよじり、彼女の肩から落下する。
「……ブルーテイル!」
慌てて手を伸ばした、その瞬間。
――――グォオオオオオッ!!
どこからともなく、今いる魔獣たちとは明らかに違う――低く、重く、空気を震わせるような咆哮が、港全体に響き渡った。
「……っ!」
ルーンはブルーテイルを抱きしめ、はっと顔を上げる。
全身の毛が逆立つような、嫌な予感。
「……この声……」
魔獣たちをすべて倒し、シオンは剣を構え直してシエルへと向き直った。
「斬っ!」
踏み込み、全力で剣を振り抜く。
だが――
「……遅いわ」
シエルは軽く身を翻し、剣をあっさりとかわした。
「……どうやら、今回はここまでのようね」
そう言って、足元に魔法陣を展開する。
「……また来るわ。フィル」
口元を緩ませ、フィルを見る。
「今度は、二人きりで会いましょう」
「……っ、待って…、シエル!」
次の瞬間、彼女の姿は光の中に溶けるように消えた。
――――グォオオオオオッ!!
再び、あの咆哮が響く。
ルーンの掌の中で、ブルーテイルが苦しそうに唸った。
「きゅ…」
「……っ、」
ルーンは眉をひそめ、声のする方角へと顔を向けた。




