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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
1,三人の旅
20/23

南の大陸の港町で





 数日の船旅を経て、シオンたちは南の大陸へと到着した。


 船が港に入り、タラップが下ろされる。桟橋に足を踏み入れ、三人は周囲を見渡した。

 そこは、ラ=パープルと同じく、賑やかで活気に満ちていた。

 港には人の声と荷のぶつかる音が溢れ、商人たちの呼び込みがあちこちから聞こえてくる。


 南の大陸の空気は、どこか熱を帯びていて、動いているだけで力をもらえるようだった。


 歩きながら、彼らはまず何をするかを話し合う。


「まぁ、レッドを探すのはいいとして…どこにあるかわからないままじゃ、どうしようもない」


 シオンが言うと、ルーンが頷く。


「なら、まずは情報を集めないとね。…一番手っ取り早いのは、ギルドかしら?」

「そうだな。ギルドへ行くぞ」


 二人は同時に周囲を見渡し、そして視線を合わせる。

 そんな彼らのあとから、ゆっくりとした足取りでフィルがとぼとぼとついてきた。


 両手をだらりと下げ、顔色もまだ良くない。


「うぅ、…二人とも早いって…」


 ルーンは振り返り、フィルに声をかける。


「……フィル、まだ具合悪い?」


 一瞬だけこちらを見てから、フィルはお腹を押さえた。


「…うん。…まだ、変な感じ……」


 その様子を見て、シオンは腕を組み、息を吐く。


「その前に、宿屋だな」


 フィルの具合も考慮し、三人はまず宿屋へ向かうことにした。



+


 宿屋の扉を開けて中に入ると、カウンターの向こうにいたエルフ族の男性が顔を上げる。


「いらっしゃい」

「部屋は空いてるか?」


 シオンが聞くと、男性は頷いた。


「ええ、ありますよ」


 泊まるわけではないので、とりあえず一部屋だけ借りて鍵を受け取り、三人は階段を上がった。

 部屋に入るなり、フィルはそのままベッドへ倒れ込む。


「……大丈夫か?」


 シオンが声をかけると、くぐもった声が返ってくる。


「……うん。休んでれば、平気……」

「俺たちはこのままギルドへ行く。お前はしばらく寝ていろ」


 そう言うと、フィルは力なく手を上げた。


「……いってらっさい……」

「(……亀みたい)」


 盾を背負ったまま、うつ伏せで倒れているフィルの姿を見て、ルーンは思った。



+


 二人がギルドに向かうと、そこもまた人で溢れていた。

 扉を開けた瞬間、熱気とざわめきが押し寄せる。


「すまないが、大陸の地図を貰えるか?」

「はい。どうぞ」


 カウンターにいた受付の男性に声をかけ、南の大陸の地図をもらうと、二人は奥のテーブルへ向かう。

 テーブルの上に地図を広げると、ルーンの肩からブルーテイルが降りた。


「きゅ」


 小さく鳴いて、地図の上をぴょんと跳ねる。


「レッドがありそうな場所は……」


 シオンとルーンは、相談しながら地図を指でなぞっていく。


「手当たり次第じゃ駄目。レッドの特徴と習性を考えれば、だいたい絞れるはずよ…。…カラーは人気(ひとけ)のない場所を選んで移動するの。だから…」


 ルーンは顎に手を添え、真剣な表情で考え込んだ。


 そのとき──


「……おい」


 声がかかり、ルーンは顔を上げる。


 そこに立っていたのは、青い髪の大柄な男性だった。がっしりした体格に、歴戦の傷が刻まれた腕。

 男性を見て、ルーンはぎょっとした。しかし、男性はルーンではなく、シオンをまじまじと見つめていた。


「……やっぱり。お前、シオンだな」


 口元を緩める。

 ルーンは小さく首を傾げた。


「……知り合い?」

「さあな」


 シオンは男の顔を見ずに答える。


「はっ。そりゃあねぇだろ」


 肩を竦め、男はテーブルに手をついた。


「随分と久しぶりじゃねぇか。こんなとこで、何してるんだ?」


 眉をひそめてルーンが男性を訝しげに見ると、彼はその視線に気づき、今度は彼女を見た。


「……まさか、デートか?」

「違う」


 シオンはきっぱり否定し、ようやく男の方を向いた。


「こんなとこで、何をしてる」


 その言い方からして、やはり知り合いなのかとルーンは思う。


 男性の名はジェイク。

 シオンやフィルと同じ探求者で、年齢はかなり上の特A級のベテラン探求者だ。


「いつも通りさ。魔獣退治しながら、大陸を転々としてる」


 やっと反応を示してくれたシオンに満足そうに言い、男性…ジェイクは笑った。


「きゅ!」


 ブルーテイルが鳴き、地図の上でぴょんと跳ねる。

 それにジェイクが気づかないはずもなく、彼はブルーテイルの方へ顔を向けて首を傾げた。


「……なんだ、この青いの」

「彼女のペットだ」


 シオンが答える。


「ペット…。はぁ。ペット同伴でデートとは、お前も成長したもんだな」

「だから違う。何度も言わせるな」

「気を付けろよ、お嬢ちゃん。こいつは見掛けはこんなだが、中身は結構な野獣だから」

「……問題ないわ」

「…………」


 ジェイクの言葉にシオンは深く息を吐く。

 冗談だということはわかっている。

 ルーンも本気にはしていないようで、彼の顔を見つめながら適当に言葉を返した。


 そのとき――


ドンッ!!


 外で大きな音が鳴り響く。

 建物の中にまで振動が伝わり、近くのガラス窓が震えた。


「……?」


 シオンたちは顔を見合わせる。

 次の瞬間、扉が勢いよく開いた。


「たっ、大変だ!」


 慌てた声とともに、一人の男性が駆け込んでくる。

 受付の男性が近付き、声を掛けた。


「どうかしました?」


 男性は荒い息のまま、外を指差す。


「……ま、まじゅ…っ、魔獣が出た!!」


 その一言で、その場の空気は一変した。




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