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最終章「断酒決戦」

魔王サイズが死んだ。

魔王とは思えぬ呆気ない最後だ。


魔王サイズの肉体は塵となり、風に運ばれて消えた。


つまり、人間と魔人の戦いは終わったということだろうか?


いや違う、俺の周りを取り囲んでいる復讐を誓った無数の魔人達の敵意がまだ残っている。


数千人はいるだろう。


まるで海原のようにひしめく大群の彼らを、全滅させなければこの戦いは終わらない。


次々に襲いかかってくる魔人は、レベル8〜20とさまざまだが、俺は剣を振り回して強引にそれらを対処していく。


型などはないが、酒を断ち無心となった刃は、感情を持って振るう刃よりも必然的に速く到達する。


50人くらい魔人を斬り伏せた俺だったが、南の方から近づいてくる、巻き起こる強風と、陰鬱な闇を五感で感じ取った。


只者ではない。


しかもその2つは、魔人を薙ぎ倒しながらこちらに向かっているようだ。


そして、風の方は闇よりも縦横無尽に高速で動き回っていて、すぐにこちらに接触してきた。


風のベールを脱いだソイツは、髪の毛をツンツンに立たせた平凡な少年のみたいだった。


しかし、右手には翠緑の美しい剣を携えている。


タン 勇者レベル28


「アンタ只者ではないな。俺は風の勇者タン。ここに魔王の研究施設があると聞いたんだが、知らないか?俺達は実験台にされている人間を助けにきたんだ」


「悪いが溶けた」


俺の返答が理解できなかったのか、タンは唖然としていた。


しかし俺にはタンの感情など、どうでもいいことだ。


「勇者よ。ガキは寝る時間だ。早く家に帰れ」


「何を言っている!?アンタ人間だろ?この数千の魔人が相手となるとアンタ1人では厳しいはずだ」

タンは両側から襲いかかる魔人を高速で両断しながら言った。


確かに本来なら共闘すべきところだろう。


だが俺が皇帝になるためには、独力でことを収めなければならない。

タンの手を借りてしまったら、王は2人となり、また世界は2つに分離するだろう。


勇者すらも俺の敵なのだ。


俺は3センチメートルの間隔まで、タンに顔を近づけて怒鳴った。

「帰れッ!」


大気を揺るがすほどの俺の叱責が、風に伝わる前に音速を超えてタンは全てを理解した。


そして、タンは絶対的な劣等感を感じたのか、全身の肌を粟立たせ、風に乗り無様に遁走した。


ちなみに俺はその間も魔人を薙ぐ手を止めない。


タンが去ると、俺の感じていた闇のイメージが急に大きくなった。


「ガキ相手に何をムキになってやがる・・・」

聞き覚えのある粘い声が背後から聞こえた。


振り向くと漆黒の沼が湧き立っており、そこから見覚えのある奴が這い出してくる。


「タモツッ!」


「久しぶりだな、トシ坊」

確かにそれはタモツだが、露出部には痛々しい無数の傷と垂れ下がった右手には漆黒の剣が握られている。


タモツ 勇者レベル36


「お前のおかげで少々苦労したぜ。だが、最後まで運は俺を見放さなかった」


「世界を統べるのは俺だ。邪魔をするなら再び地獄を見ることになるぞ」


「地獄ならかまわねえ!お前を倒し、俺こそがこの世界の皇帝になってやるぜ!」

タモツはそう言いながら周囲の魔人を円を描くように斬り倒し、そのまま俺に向かって切り込んできた。


俺も同じように刃を滑らせ魔人を薙いで、タモツ目掛けて切り込んだ。


お互いの剣が衝突し鍔迫り合いとなる。


その風圧の凄まじさは、周囲の魔人にとって堪えがたいものだったらしく、次々に宙に投げ出されていった。


「俺は1週間もやめている。お互い、勝利した後の酒は美味そうだな!ええッ?トシミツよ!」


「悪いが俺はもう飲む気はない。酒と、いや、俺の弱さとの戦いを終わらせる気はない」


「ハハッ!連れねえなあッ!」


これは、俺の無心とタモツの渇望の戦いでもあった。


〜勇秘奥・アイアムハングリー〜


鍔迫り合いの状態のまま、漆黒の剣が全てを喰らい尽くすかのように辺りを破壊し尽くす。


さすがの俺もそのチカラに飲み込まれそうになるが、後一歩のところで踏みとどまる。


トミジイ!チカラをくれ!


これが!禁欲修行者の意地だあああああああ!


なぜか光に包まれる。


俺達は光速で移動しているのか?


この世界のエラーか何かかもしれない。


強い光と衝撃波で明滅しているように映るタモツの顔。


もう誰も俺達の戦いについてこれない。


俺達はこれからどこに向かうのだろう?


やがて感情を殺して戦っていた俺も、少し自分の気持ちと向き合う余裕ができた。


もしかしたらこの戦いに勝利して、俺は元の世界に帰りたいのかもしれない。


タモツは何を考えているのだろう。


もし、元の世界に戻って飲みの場で、タモツにこの話をしたら笑ってくれるだろうか。


長い時間、お付き合い頂きありがとうございました。

「シラフが耐えられない・・・(異世界転生)」はこれにて完結とさせていただきます。


僭越ながら、正直な評価ポイント、そして思うところがあれば感想を書いてくださると、私も嬉しいです。


現在、次作の「異世界転移で防御型弓使いを選ぶぜ」を公開中ですので、そちらもぜひ読んでいただきたく思います。


また、過去作も是非読んでいただきたいです。

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