ナシの旅立ち
この頃ナシが溜息を吐く様になった。何か、物思いに更けているようだ。そろそろ、此処から出て行くのだろう。やっと静かになりそうだ。
自分の好きな道を歩むのもいいだろう。私も好きに生きているのだから留めはしない
別れも出会いも何時も突然やって来る物だ、望もうと、望まなくても。今度は、うるさくないペットでも飼って見るのもいいだろう。
「ナイ、俺は旅に出る。」
「そうか、さよならだな。これを持って行け!」
「こんな大金!要らない!」
「旅に出るナシには必要な物だ。遠慮する事はない」
「しかし、俺は貰う資格はない。」
「その辺でまた野垂れ死にしないためだ。」
「…ナイ、ありがとう。」
今日ナシが旅に出た、一年間一緒の生活をした割には淋しくはない様だ。つくづく嫌な性格らしい、でもいいのだ生きているのだから。違う道に行こうとも二度と会えなくとも、自分の選んだ事だ後悔はない。
唯ナシの行く道が平坦であることぐらいは祈ろう、それ位は、面倒くさがりな私でも出来るだろう。
ナシ、悲しい出来事の記憶は無くならない。唯薄れ行くだけ、心の奥に眠らせるのだ
いつか、その記憶を抱きしめる様に愛する事が出来ることを願うよ。人は生まれ死ぬ逃れられない想いを抱いて。
どんなに望んでも時は止まる事なく過ぎて行く。全ての思惑さえ呑み込んで。気持ちさえも置き去りにして。




