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23/25

23話

トイレと風呂。確かに要る。

幸いデフォルトの属性なし家具に大きな浴槽とシャワー、個室洋式トイレ、小便器があった。


まずはトイレをぽんぽんと配置する。トイレって家具で良いのか? 某どうぶつのスローライフゲーの余波を感じる。


大浴槽は、まあ銭湯ばりの大浴槽だ。Mサイズの八畳でもちょっと狭い。LLサイズの二十畳をガチャって、あとはシャワーを置いて、排水をなんとかして……


できた。全四階層の風呂トイレ別、300人収容の避難所。床暖房完備。そしてこれとは別にダンジョン層も増築した。


……まあかわりに、DPが1000まで減ったんだけど。維持費、1日200DPなんだけど。


「維持費がやべえ」

「うーん。真野、あのさ、宝物ガチャがあるじゃん? あれ奮発して上のランク回さねえ?それをくれれば俺が1週間泊まってやろう」

「中村ァ!神かお前は!」

「はっはっは。褒めてもDPしか出んぞ」


宝物ガチャ。

★1〜3はゴミしか出ないとして、★3〜5、★5〜7、★7〜10は希望がある。なんたって翻訳首輪が★3だからな。


「うーん。どうする?★3〜5が一回60DP、★5〜★7が一回300DPなんだが」

「★7〜★10は?」

「前言っただろ、1回2000DPだ」

「んじゃ三日後、3/6に4320DP溜まるだろ?そん時に★5〜★7を3000DP、10連回そう」

「おけ」


そういうことになった。

風は強い。予報ではしばらく続く。


----


明けて3月4日。風は強まった。県内全域に注意報だそうだ。しかし社会というのは注意報程度では止まらない。


『まのー、かぜつよい?たいふう?』

「風は強いけど台風じゃないな。季節性のやつだ。ほら、天気予報で言ってるだろ?」


昼、じいさんたちは来なかった。風が強いので見送ったのだろう。DP収入としてはじいさん10人分の中村がいるので、プラスではある。あるが、じいさんたち家で何してるかな、とは気になった。


ポテトとクロと中村と、二人と二匹で遊んだ。避難所フロアを使ってかくれんぼだ。100部屋+トイレ+風呂を探し回って死ぬほど疲れた。

しかしシャルロッテが拗ねた。「私もマスターと遊びたかったです!なんで誰も来ない店番だったんですか!」

すまん。


3月5日。風の勢いが止まらない。これはちょっと異常だ。

幸い警報にはなっていない。なってはいないが……。


昼、郵便で避難所の書類が来た。書留だったので、その場で郵便局員さんと話す。


「風、酷いですね」

「ええ」

「配達大変じゃないですか」

「ははは、まあこれで飯食ってますんで。警報が出ない限り働きますよ」

「お疲れ様です」


その後、店は開けずにかくれんぼリターンズ。シャルロッテが探知魔法とか隠蔽魔法とか使って大人気なかった。疲れた。


----


3月6日。土曜日。DPは4500になった。


「真野ー。そろそろ?」

「うむ。ガチャの時間だ」

「やったぜ」


- ぴろん -

- 10連ガチャのご利用ありがとうございます。ダンジョンストレージに保管されます -


「引いたぞ」

「お前風情というものがねえな」


早速ダンジョンストレージから出す。


★5 尽きない松明(たいまつ)

★6炎のロングソード

★5折れない槍

★6風の外套

★5乾かずの水筒

★5疲れずの靴

★6雷の杖

★5乾かずの水筒


「真野、8個しかねえぞ。バグか?」

「いや、★7が2個ある」


★7魔法のバッグ

効果:なんでも入る、重さを感じない空間収納。生物は入れないであげてください。


★7オリハルコン5kg

効果:固ーい金属。人間に加工できるかな?


「……どう思う、中村」

「俺冒険者やめて運送業やるわ」

「ずるくね?」

「いやこれだけで150万の価値あるだろ」

「オリハルコンはどうする?」

「県に売るわ」


買うのかな。


「ていうか2000DPで出る最低限が★7だよな」

「うん」

「★7でこれだろ? 日本どうなっちゃうかな」

「まあしばらくは回さないよ」

「ロマンのねえやつー」


ロマンで飯は食えねえんだ、中村。

でもこいつ探索者で飯食ってるな。ほなロマンで飯食えるか……。


「ところで、水筒ダブったが、真野いるか?」

「うーん。飲み水として使えんのかな」

「水筒だぞ? 使えなかったら詐欺だろ」

「じゃあ貰う。居住スペースで使うわ」

「もう得体の知れない急須から茶出してるじゃねえか」

「それはそれ、これはこれ」


急須メルカリで売ったらいくら付くかな。売らないけど。

世界が壊れそう。


「んじゃー9個俺が貰うってことで」

「おう。あと4日頼むぞ」


天気予報をつけると、昼には風が弱まるとのことだった。

じいさんたち来るかな。


----


「よお真野くん。2日会わんうちに顔が変わったな」

「柳瀬さん。そんなに変わりました?」

「うそじゃ」


この野郎。


「ちょっと役所に書類を提出してきます。寛いでてください」

「ほいよ。シャルロッテちゃんとお喋りしとるよ」


ぶろろろろ。

市役所の受付に来た。


「すいません、防災課から来た書類を書いて持ってきたのですが」

「防災課ですか……ちょっとお待ちくださいね。 二口(ふたくち)さーん」


二口なる人を呼ぶために受付のお姉さんは内線をかけている。


「お待たせしました、四階までお上がりください」

「あ、はい」


一階は通常の申請窓口しかないからな。

庁舎を上がると他の課の人がいるって訳だ。


とてとてと階段を上がり、四階についた。えーと、防災課はどこかな。

壁の案内図を見ると、南側に防災・資産管理課がある、と書いてある。そっちか。


「すいませーん。避難所認定の書類を持ってきまして〜」

「ああすみません真野さん、こちらです、私が二口です」


二口さんはガタイのいい男性だった。身長は勝ってる、えっへん。


「どうもどうも真野です。これ、書類です」

「わざわざお持ちいただいてありがとうございます、郵送でも良かったのに」

「いやあ、ここ数日風が強かったですからね。郵送で郵便局の人に負担かけるのも良くないかなと思って」

「ああ、変な風でしたよね。だいたいこの季節の風なら一日強く吹くだけのはずなのに」

「ねえ」


他愛無い世間話。


「……おっと、書類ですが、不備はないようですのでこれでお預かりします。避難所として開けて欲しいときは電話で一報しますので」

「はあい、よろしくお願いします」

「いえいえとんでもない、こちらこそ受けていただいて感謝しております。三百人の受け入れ態勢、なかなかない社会貢献ですよ」

「そう言っていただけて何よりです」


さて。書類提出したし、帰るか。


ぶろろろろ。店は柳瀬さんしかいないし、ちょっと中村と一緒にポテトかまうか。


「ただいまー」

「おかえりー」

『まのー。おみせは?』

「んー。シャルロッテに任せてる」

『なるほどー』


ポテトがすりすりしてくる。なんか今日は甘えてくるな。


「どしたー」

『かぜつよいの、やだ』

「弱まってるぞ?」

『……うん』

「ポテトは心配性だなあ」


中村がポテトをからかう。


『なかむらは、かんじない?』

「ん? 何が?」

『あさって、いやなかぜ、くる』


嫌な風、か。


「ポテトはどうしてわかるんだ?」

『んー。ふんいき』

「ふんいきかー」


なでまわす。硬い表情がほぐれる。


『まのー。ひなんじょ、でばんくる』

「そうかあ。準備しとくかなあ」


具体的には300人分の布団を出す。

ホログラムメニューをぽちぽちやっていると、中村が話しかけてくる。


「真野、信じるのか?」

「ポテトが言うんだから信じてみてもいいだろ」

『ぼく、うそはついてない』

「ほらな」

「うーん。ダンジョンマスターの勘ってやつなのかね」


夜、夢を見た。

避難所エリアに人を誘導する夢だ。

いやにはっきりしている。


途中、目が覚める。スマホの時計は午前2時。


止むはずだった風は、びゅおうびゅおうと音を立てている。


そうか。

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