機殻の中の魂:1
二つの機械音が暗い屋敷の玄関で響く。
シオンとの二度目の対峙の最中、ゲールは確信を持った。
この人形は、自身と同類である。
人体を模して作られた機械に宿る、誰とも知れぬ死者の魂。
「……話す事は出来るか?」
シオンは答えない、会話が出来るかは定かではないが、反応すら返さず屋敷を進む。
「悪いが、そこから先はダメだ」
ゲールがシオンの進路を塞ぐ。
人形は屋敷の階段、アレクトの居る二階に向かおうとしていた。
階段上に立ちはだかったゲールを前に、シオンの歯車が苛立ちを表すように響き始める。
「お前は死霊と変わらないのか?」
シオンは答えない、代わりとでも言うようにゲールに向かって腕を突き出してきた。
「……結局、こうなるのか!」
重い鉄の腕を、機械仕掛けの腕が受け止める。
強い力で殴られる、久しく体感していなかった重みがゲールの躰を揺らす。
「く……!」
対するゲールも重い拳を振り上げ応戦した。
黒い外套に包まれた腕が、シオンの躰にぶつかる。
シオンを通そうとしないゲールは攻撃の手を緩めない。続け様新品の自動人形に打撃を続ける。
(…………なんだ?)
しかしゲールが感じたのは、底冷えするような感触。
寒いという感覚を忘れていた彼が感じた。恐怖ともよく似た感覚。
(冷たい……しかしこの感覚……いつか……)
ゲールの脳裏に記憶が蘇る。
(確か……私がここに来る前……)
手足と身体が冷たくなっていった、『あの時』の感覚。
悪寒を感じたゲールはシオンから離れようとした。
だが、銀の人形の手がゲールの腕を捕らえていた。
「……!お前は……!」
シオンの機械の腕、ゲールの物とは違う白銀の腕の腕は青白い光を放っている。
それは、死霊が放つ光と酷似していた。
「く……!」
寒さと共に、ゲールの腕から力が抜ける。
身動きの取れなくなったゲールを、シオンは階段から投げ落とした。
(まずい!)
暗い屋敷の中に、鉄の音が響く。
「ま……待てシオン!」
その後のシオンはゲールに気を留める様子もなく階段を登って行った。
「待て……」
ゲールに痛みはない、ただ躰に力が入らない。
感覚の曖昧な腕で起きあがろうとするも脚の歯車が一部歪んだか、半身を上げることが出来ない。
シオンが屋敷を進むのを、ゲールはただ見るしかなかった。




