53話 藤野 玄人、特訓します。③
なぁーにがいい感じなんだよ……痛いよ……
「ほらほら、集中……しろっ!」
「ぐっ」
推定秒速三万キロは軽く超えてきそうな拳を(そんなわけないけどな)盾で受け止める。
「おお、よく止めたっ!」
この人……なめてんでしょ……
「む?」
「はぁっ!」
俺は盾の向きを変え、校長先生の拳をずらして背中に肘打ちし、前に飛んだ。
「……やるな。まあ、身体に傷はついていないだろうが。やはり、パワーの弱さも課題だなぁ」
え、俺、割と頑張ったよ?今の。
「よし、そろそろ目も慣れてきたみたいだし……ほら、こい」
校長先生は、手でクイクイッと合図する。それ、好きなのかな。
「分かりました。《形質変化》」
俺は、盾を剣に変えて横に構えながら、突っ込む。
「…………《レフォースΔ》」
《レフォースΔ》によって短くなっていた校長先生までの時間の間で、もう一度《レフォースΔ》を使い、加速する。
「はぁぁっ!」
「うぉぅ」
俺の行動に少し驚いた校長先生だったが、直ぐに後ろに飛んで回避した。
「…………」
俺の目の前に、はらりと髪の毛が落ちた。
「お?」
俺は、驚愕の声をあげた。
「おおおお?」
これは、校長先生だろう。
「お」
「おおお」
「「…………おお」」
あ、声がぴったりあった。
ちょ、ちょっと待って?今、理解できてないんだ。
そんな俺の様子を知ってか知らずか、校長先生は俺の方へ近づいてきた。
「…………いや、こうも早く斬られるとはな」
え?………………あぁっ!?
「お、俺、校長先生の前髪を切りました?」
見ると、前髪ぱっつんになり、ちょっと不満そうな校長先生が。
「ああ、その通りだ。今日は合格だな。ただ、私はなんの強化もかけていないから切れただけだ。戦闘ではそんなことはまず無いだろう」
こ、この人、随分落としてくるじゃないか。
「とはいえ、切ったのは事実だ。よくやったな」
その声を聞き、俺はガクッと膝から崩れ落ち、地面に仰向けに寝転がった。
「あー、疲れた」
「ぐぁぁぁぁぁ…………」
俺はベッドに倒れこんだ。
今日はすこぶる疲れた。これが明日からも続くのか……
「きっついなぁ…………」
校長先生曰く、レベル上げや魔法も覚えないといけないらしく、やらなければならないことは山積みだ。
「どうせ、延長して訓練すんだろうな」
全く、こっちの体調も考えてほしいものだ。
そう考えていると、インターホンが鳴った。
「誰だろ……」
俺はのっそりと起き上がり、モニターへ向かう。
「……ん?」
そこに写っていたのは、シュナさんだった。
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