49話 藤野 玄人、帰宅しました。
「お前ら、随分遅かったな」
集合場所に着くと、なんだか不機嫌そうなジャックが歩いてきた。
「俺、一人で暇してたんだからな」
「はは、ごめんごめん……って、一人?」
校長先生やフェルンもどこかへ行っていたのだろうか。今は目の前にいるけど。
「ああ、あの人らは喫茶でゆっくりしてた」
「ん?ジャックは行かなかったのか」
「ああ、ちょっと話があってな……」
そう答えたのは、少し後ろにいた校長先生だった。
「うむ……それでは、そろそろ帰ろうか。以前見ていた世界と違うから道がわかりにくいだろうし、ゆっくり覚えながら帰ろう」
「あれ」
学校について最初に気づいたのは、寮と校舎の外観は変わっていなかった事。
「なんで学校はそのままなんです?」
「ああ、この校舎は随分前に造られたものでな、イメージに合っていそうだしカモフラージュする必要はないだろう、という結論に至ったんだ」
俺が校長先生に聞くと、彼女はそう答えた。
「つまり、手抜き……」
「そ、そんな事ないよ?」
俺のつぶやきに対して、女神様が慌てて否定した。図星なんだろうな。
「ほ、ほら、見てみろ」
その直後、フェルンが強引に話を変えようと、突然指差した。
「ん?」
その方には、寮。こっちも、変わったところはない。
「これもな、藤野 玄人が困らんように変えずにおいたんだ。内装も以前の通りだぞ?」
「いや、これも手抜き……」
「ち、違うわっ!」
まあ、本人達がそういうなら……そうなのか?
「で、ではな、今日はもう休むといい。明日からは特別メニューを用いて訓練を行うから、しっかり身体を休めておくように」
「え?訓練?」
……あぁ、戦うもんね、そうだね。
「わかりました」
「うむ」
校長先生がそう返事をすると、フェルンや校長先生、ダークネスウルフは校舎の方へと歩いていった。
「じゃ、俺も帰るわ」
「私も」
二人がそう言ったので、俺も帰ろうと思ったんだが。
「あ、そうだ。ジャックの部屋ってどこだ?」
「あれ?言ってなかったか?」
「いや……うーん……すまん、覚えてない」
「じゃあ、多分言ってなかったんだろうな。えーっと、俺の部屋は二階の左から二番目だな」
えーっと……あ、あそこか。
「オッケーありがと」
「じゃ、今度こそ」
「おう、じゃあな」
「おやすみなさい」
「ふぃー」
風呂から出て、ボフッとベッドに飛び込んだ。
「そういえば、お祈り……する必要ってあるのか?」
「あるよあるよ!」
「ゔぇっ!?」
ベッドの横に光の渦が現れ、その中から女神様が出てきた。
「な、なにが……って、女神様ですか」
「な、なによー!なんでそんなにがっかりするのー!」
「いや、なんでも……で、なんでお祈りが必要なんですか?」
彼女は床に座ると、「んーと」と言って話し始めた。
「まず、私達神族は魔力を使わないのよ……というより、使えないのよ」
「それは、なぜ?」
「だって、考えてみて?『神』が『魔』の力なんて使ったら矛盾もいいところだもの」
あー、そう言われれば確かにそうだな。
「で、私達が使うのは神力っていう、魔力とは別の力」
なんとなくわかってきた。
「つまり、神力を使うのに信仰心が必要、と」
「そそ、そういう事!」
「で、女神様はその力で主になにをしているんですか?」
すると、女神様の背筋がピンと伸び、俺から目を逸らした。
「え、えぇっと……その、お菓子出したり、してます……」
「なーるほど……で、他には?」
「……ゲームの充電、とか……」
「とか?」
「ティッシュ、出したり……」
「たり?」
「ごめんなさい許してください」
正直に謝ったから、許してやらんこともない。
「で、でもね?みんなを助けられる分の力は常に残ってるから!」
「じゃあ、お祈りいらないじゃないですか」
「いるっ!いるのっ!」
「はぁ〜……」
流石ポンコツ……
「うう、ポンコツ思うなぁ!」
「……で、何の用事ですか?」
「そうだった、なにもせずに帰るところだった……」
やっぱりポンコツだった。
「……はい、これ」
ジト目で見られた後に渡されたのは、箱だった。ただし、真っ白。
「中身を見たらびっくりするよ!」
なら、開けてみ……びっくり箱じゃないよな?
「大丈夫!おかしなものじゃないから!」
恐る恐る開けてみると……
「うおおおお!やったー!スマホだー!」
こうして、俺は約一ヶ月ぶりにスマホを手にしたのだった。
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