41話 藤野 玄人、戦いますよ。③
「下がれ!インフェルノウルフ!」
召喚士が指示を飛ばす。
「う、うむ」
インフェルノウルフは俺たちの隣までひとっ飛びで退がる。
「出でるは我、応ずは志。心は心を持ちて、体は魔を持ちて封ず、解く!顕現魔法!《召喚》!ジェネラルゴブリン!」
「「「グルォォォォォォ!!」」」
正面に魔法陣が現れ、そこから三体のジェネラルゴブリンが出現した。ちなみに、全て緑だ。
「グルッ」
そして三体がダークネスウルフに近づこうとした瞬間、その体を闇が貫いた。
「なっ……」
その攻撃に、俺と召喚士は驚愕した。
「グルルルルル……グルァッ!」
ダークネスウルフは間髪入れずに俺たちに向けて二撃目を放ってきた。
「グルッ!」
それを、インフェルノウルフが焼き払う。
「ぐっ……はぁ……はぁ……」
だが、今の魔法で疲れ切ってしまったのか、ぐったりと座り込んでしまう。
「グルルルルル!!」
それを好機と見たのか、ダークネスウルフがこっちに向かって走って来た。
「来るぞ!」
「ああ、知ってる」
召喚士の焦りが混じった声に、俺は冷静に返す。
「お前、何か『召喚』以外に使える魔法は無いか?」
「い、いや……無い。すまない」
俺は《冷蔵庫》を顕現し、アーク・グリアー・エスピリットを取り出す。
「そうか、なら下がっていてくれ。インフェルノウルフ、お前も」
「あ、ああ、分かった」
「すまない」
「《形質変化》!」
俺は杖を盾に変え、正面に立てる。
「グルァァァァァァァ!!」
「ぐっ!」
ガン!!
ぶつかると同時に、腕に電流が走る。
「《形質変化》!《アイス・ヴァルエ》ッ!」
俺は盾を杖に変化させる。その時に、ダークネスウルフのツノを杖で固定し、横からムチのようなもので拘束した。《アイス・ヴァルエ》で確実に切る作戦だ。
「グゥッ?」
俺と奴の間にあるのは、杖一本だけだ。だから、《アイス・ヴァルエ》を発動すればすぐに切れるはずなんだが、こいつはまだピンピンしている。その上、上目遣いで首をかしげやがった。
俺が頭の中で少しイラっとしていると、後ろから怒声が響いた。
「おい!周りを見ろっ!」
そう言われ、辺りを見ると小さいダークネスウルフが四匹、俺を囲んでいた。
「「「「クルッ!」」」」「グルァッ!」
「くっ!」
四匹が同時に俺の方は飛び込んでくる。それに合わせ、大きいダークネスウルフもツノで押してきた。
「「アイス・ヴァルエ》!」
そこで俺は、再び最大出力で《アイス・ヴァルエ》を発動する。さっき効かなかったし、最大出力となると消費する魔力も多いだろう。でも、これしか手がないから、仕方がない。
「「きゃうん!」」
すると、五体の中でも近かった二匹が真っ二つになり、消えていった。
残りの三体は空中で停滞し、一瞬だけ体を闇で包んだ。見ると、俺の使ったスキルは闇に触れると消えていった。さっき効かなかったのは、闇が原因か。
「グルルルルル……」「「くるるるる……」」
三匹は後ろに下がり、俺を見ながら唸っている。
「なら、隙を見て放てば……」
どうやって隙を作ろうか。なにか、派手なものがあれば……
「俺、前にドラゴンを取り込んだよな……」
確か、あの時は魔力をバカみたいに食ったから……
「一発で決めなきゃいけないか」
「グルルルルル……」
やってみるか。
俺は三匹に向かって走る。
「《冷蔵庫》ッ!––––さあ、いけ。ドラゴン」
––––その鱗は、赤く黒い。その光沢は、青色。
––––その体は、長く強固。赤黒いながらも、氷に包まれている。
––––そして、その存在は––––
「控えめに言って、格が違う、か?」
俺はダークネスウルフの目が語っている事を口に出す。
「ぐ、グルル……」
「そうだな、信じられんよな。でも、なぁ……」
《冷蔵庫》に入れる前はもうちょっと小ちゃかったし、別に青くもなかったんだよなぁ……
「ま、いいか。ほら、突っ込め」
ドラゴンは、俺の指示を忠実に実行した。
「ウォォォォォォォォォォォ!!」
「グルッ!」「「クルルッ」」
三匹を二つに分断するように突っ込むドラゴンに続いて、俺も突っ込む。まだ《レフォースΔ》の効果が残っているから、一瞬もかからない。
俺は三匹の中心に潜り込んだ。
「終わりだ。《アイス・ヴァルエ》」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
久しぶりに一日2本でございます。
二章が完結したら1話から改稿しようと思っておりますので、更新頻度が低くなるかもです。ご容赦ください。




