35話 藤野 玄人、決勝戦、頑張っています。②
「主の素は理。奔流以て神化成す。命に従い其は隨に。穿つに然る魔の演舞、生じて喰らえーー不和のままに!」
ディアブルが叫ぶように唱える。すると、彼の身体の周りからバチバチと紫色の稲妻が迸る。恐らく、魔力だろう。
「魔導ッ!ーー『ラグマ・エクレイト』」
呟く。空気が揺れる。大きな音をたてて、地面が抉れ、砂埃が上がる。
「な、なんだ……これ……」
俺は多分、状況を飲み込めていない。ただ、この砂埃の向こうには、絶大な力を持つ何かが存在していることだけはわかる。
そして、砂埃が捌ける。
「うん、久しぶりに使ったよ……」
そこには、ディアブルがいる。特に変わりはないように見える。が、内側から漏れる魔力が違う。魔力感知できない俺でもわかるほどの魔力が、流れている。
「それじゃあ、行くよ?」
行くよ、と言った時には、既に俺の前に立っていた。
「ぐはあっ」
デコピンを腹にくらう。ハラピンだ。違う、そんなこと言ってる場合じゃない。
俺は再び、壁の方へ飛ばされる。今度は、背中に強い衝撃。
「ぐっ……は゛ぁ……」
なんとか立ち上がる。
このままではまずい。速さで負けている。なら、どうするか、そりゃ、決まってる。
「《レフォースΔ》バイテン」
俺も真似てみた。
「うんうん!やっぱりそう来なくっちゃね!」
ディアブルがこっちに向かって走り出してくる。ただ、その速度は、さっきと比べて遅い。
「ふっーー」
あの速度なら攻撃されても反応できるので、俺もまた、手に持っている剣を前に構え、ディアブルに向かって駆け出す。
「うんうん、いいねっ!獄火!火魔法『フレイム』!」
彼が唱えると、俺とディアブルの間に大きな火球が現れる。
俺はそれを見て横に飛ぼうとする……が、とあることを思いつく。
……消化できないかな?
「《冷蔵庫》!」
俺は右に《冷蔵庫》を顕現し、水を放つ。が、水は火球に当たった瞬間、ジュウッと音をたてて蒸発してしまった。
やっぱり避けるしかないか。消化できれば、たたみかけれると思ったんだけどな。
俺は諦めて左に飛ぶ。
「『フレイム』!」
俺が着地した瞬間、再び火球が飛んでくる。
俺はまた、左に飛ぶ。が、このままではイタチごっこだろうな……あれ、使ってみるか。
俺が着地すると、3度目の火球が飛んでくる。俺は目の前に《冷蔵庫》を顕現した。
「いけっ!」
俺は《冷蔵庫》から炎を帯びた斬撃を放つ。これは、Aブロック準決勝でデウキスか得たものだ。
数瞬後、火球と斬撃が衝突し、爆煙を上げるーー勝ったのは、俺の斬撃だった。
「ふっ!」
俺は再び火球を放たれる前にディアブルとの距離を詰める。
「うん!やっぱりすごいね!はあっ!」
俺はディアブルに向かって勢いよく剣を振るったが、ディアブルは大きく上に飛んでそれを避けた。そして、空中で静止する。
「剛よ、業よ、顕現せよッ!『マニフェスタ・エピライズ』!」
彼は、握った右手を開いた左手のひらにくっつけ、ゆっくりと離していく。よくみると、その手には剣が握られていた。
その剣身は黒く光っており、鍔から剣身の4分の1ほどまで、二匹の龍が象られている。
「あそこから何が出てくるかわかんないからね!うん!油断できないもんね!」
こっちだって、お前が何すんのか想像もつかねえよ。てか、浮くのはずるいだろ。
「いくよッ!」
ディアブルは、こっちに向かって突っ込んできた。
え?今、空間を蹴ってなかった?何?それ、やっぱりずるくない?
まだ、そんなことを考えられるから余裕はある、筈だ。
「はっ!」
ディアブルの袈裟斬りに対して、俺は剣を水平に構える。
「ぐあっ!」
剣と剣がぶつかった瞬間、俺の足が地面にくいこんだ。
「ねえねえ!頑張ってよ!ねえ!」
ディアブルが一気に力を入れて押してくる。
「ぐあっ」
鍔で押され、地面に叩きつけられながら飛ばされた。
「ぐ、ぅ……」
なんとか立ち上がるが、前を向いた時にはすでにディアブルが立っていた。
「ほらっ!ねえねえ、本気出してよ!」
「ぐっ」
横腹に蹴りをくらうが、飛ばされないように踏ん張って耐え、すぐさま反撃する。
「はあ゛あ゛あ゛!」
「えっ?くぁっ」
何に戸惑ったのか分からないが、ディアブルの反応が一瞬遅れ、俺の攻撃が決まる。
「ぐあぁぁっ」
ディアブルは数メートルほど飛ばされた。
「はぁ…はぁ…」
右腕が熱い。ふと見ると、血がたくさん滴っていた。何が起きたのだろうか。
「す、すごいね……」
そう言いながら、ディアブルが歩いてくる。
「今、《レフォースΔ》を何重にかけたんだい?」
何を言っているのだろうか。
「……やっぱり、無意識だったんだ。本当に、君はすごいや、うん」
「無意識、か。これは、そんなにすごいのか?」
「そりゃもちろんさ。理性的に使う時は、体が壊れないように脳が制限するんだ。でも、無意識だとそれがないから、理性的に使う時よりも大幅に強くなる」
なるほど、制限がなくなったから、これか。
「なら、今も使い続けてる状態なのか?」
「そうなるね、うん」
なら、体が壊そうになる前に決着をつけたい。壊れそうになったらドクターストップがかかるだろうけど。
『……すごいですね』
『ああ。まあ、体が壊れるまでやってくれ、という感じだな』
……なんでだよ。
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