表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/54

29話 藤野 玄人、親交を深めました。

 今、六人で寮の前にいる。シュナさんに《冷蔵庫》を見せるためだ。


「《冷蔵庫》」


 俺はシュナさんと並び、正面に《冷蔵庫》を顕現する。


「こ、これが……」


 シュナさんがまじまじと見つめる。自分が見られてるわけじゃないけど、なんか恥ずかしいな。


「あ、あの!手、入れてみても良いですか!?」


「あ、ああ。多分大丈夫だと思う」


 俺がそう言うと、シュナさんは手をずぼっ、と勢いよく突っ込んだ。


「んー……なるほど……」


 なんか一人で喋ってるけど、何がなるほどなんだろう。


「冷たいです……特に、何も入ってない……」


 へぇ、他の人が手突っ込んでも、何にも触れないのか。


 《冷蔵庫》の中の感覚を、目を閉じて意識してみる。


「……おおー……」


 シュナさんの手がある。俺は試しに、その手に氷を近づけてみる。


「ん?これは……ひゃっ!?」


 どうやら、手で氷を掴んだみたいだ。


「どう?」


「はい……なんか近くにあるなって思ったら、氷でした」


 ちなみに、今シュナさんが手を入れたのは冷凍庫。杖とかも、そこに入っている。というか、他は冷蔵庫に水が入ってるくらいだろうか。




 それから数分間、シュナさんは手を入れたり出したり、中で手をモニョモニョさせていた。


「ねえシュナ。次、僕いいかい?」


 シュナさんに後ろからそう言ったのは、ゲイン。


「あ、うん。ありがとう、藤野君!」


「僕は、杖を見せてもらいたい」


「おっけ」


 俺はそう言うと、《冷蔵庫》から杖を取り出し、ゲインに渡す。


「はい」


「ありがとう……」


 彼も彼で、杖をまじまじと見つめる。


「ほぅ……なるほど……」


 だから、何がなるほどなんだよ。


「藤野君。この杖には、任意発動のスキルがあるよね?それを使ってもらいたい」


「ああ、いいぞ……でも、周りが凍るかもしれないから、出力は弱くていいか?」


「全然構わない」


 俺はゲインから杖を返してもらう。


「《アイス・ヴァルエ》」


 俺を中心に、波紋が広がっていき、五人に薄い氷が張り付く。


「おお……これが……ん?これは、魔力を吸っているのか?」


「多分、そうだと思う。俺の方には、魔力が入ってきてる」


 他の四人の魔力も同じように俺に入っている筈だ。いつつの魔力とか分かるわけないけどな。


「……ありがとう、満足した」


 そう言うと、ゲインは氷を破る。


「そうか、それなら良かった」


「なあ、次は俺いいか?」


 そう言って、クルガが歩いてきた。


「玄人、俺と戦ってくれよ!」


 うん、そんな気がしてた。


「あー、いいけど、明日に影響出るかもしれないから……今度でもいいか?」


「そうか……分かった、今度絶対戦ってくれよ!」


「おう」


 残るは、ミルさんだけか。でも、友達になりたいって何したらいいんだ?いや、日本に友達がいなかったわけじゃないぞ?そういうわけじゃないけどさあ……


「えーっと、最後はミルさんなんだけど……」


「はいはーい!んーと、ミルでいいよ!よろしくね、玄人!」


 ミルさんーーたった今から、ミルと呼ぶことになったーーが、手を差し出してくる。握手だろうか。


 俺は、手を伸ばしてミルの手を、手を……いや、女友達がいなかったわけでもないと思うぞ?多分。


「はい!あくしゅー!よろしくよろしく!」


 ミルは、俺の手をつかむ。


「あ、ああ、よろしく」


 大丈夫だよな?この場合、セクハラにはならないよな?


「あ、私も握手してください!」「ああ、僕も頼むよ」「ずりいぞ!俺も俺も!」


 …………一つだけつっこみたい。


 俺、アイドルちゃうぞ?




 そんなこんなで、今日1日は六人で遊んだ。最初は俺の部屋で質問責めにあい、その後はご飯を食べに街を歩いたりした。


「じゃあ、そろそろ帰ろうか」


 日が暮れてきたので、寮に戻らないと。


「そうだね…………ちょっと、玄人君」


 歩いていこうとすると、ゲインに呼び止められた。


「なんだ?」


「あれ、分かる?」


 その視線の先には、人が数人。


「ああ、分かるけど……人だよな?あれがどうかしたのか?」


「……君は魔力感知ができないのかい?」


「すまん、全く」


「まあいいか。今あそこに見えてる彼ら……【暴化】が付与されているみたいだ」


「…………あー……そっか……」


「どうする?学校に知らせるかい?僕はその方がいいと思うけど」


 そう言われ、俺は振り返って残りの四人を見る。


「……そうだな、女子で呼びに行ってくれるか?俺たちは、一応見張っておこう」


「うん、わかった。いこう、二人とも」


 キャルロットがそう言って、三人は学校へと走っていった。


 ……こういう事件っぽいのに街で巻き込まれるのって、主人公補正なのかな?

ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ